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七夕飾りに想いをのせて 七夕飾りに想いをのせて 美姉妹といっしょ♥~番外編
 
「姉さん~、学校から立派な笹竹を貰って来たよ~~♪ ねぇ、今年はこれで七夕しようよ~♪」

 妹の声に振り返った瞬間、千恵は目が点になった。
 そこには腰まで届くストレートロングヘアをひとつにまとめ、ベージュのブラウスに濃紺のスカート、白のショルダーバッグという学校帰りの服装のまま、高さ三メートル位、枝の張った幅は二メートル位で太さが七~八センチはあろうかという大きな笹竹を肩に担いでいる若菜が嬉しそうな顔をして部屋の入口に立っていたのだ。

「あ、あんた、そ、それ、どうしたの!?」

 千恵は大きな瞳を更に大きく見開き、青々と茂る笹竹を指差す。
 家の裏山で探してもこんなに立派な笹竹はそうそう無い。
 店で買ったら諭吉さんひとりは軽く飛んでいくだろう。

「だからぁ、大学で飾る七夕用の笹竹が一本余ったから~、教授にお願いして貰って来たの~♪」

 若菜は嬉しそうに経緯(いきさつ)を話し始めるが、千恵は何となく雲行きが怪しくなって来たのを直感する。
 双子ゆえのテレパシーだろうか。

「あ、そ、そう? よ、良かったじゃない。今年はわざわざ山に入らなくても済んで」

「そうなのよ~♪ 手間が省けて良かったわ~♪ 裏山で蚊に喰われながら藪の中を歩く位なら、学校から持って来る位、何とも無いもんね~♪」

 若菜は心底ホッとした表情になるが、千恵は逆に顔面が段々引き攣って来る。

(な、何ですと~~? 今、若菜は何と言った? 学校から『持って』来た?)

 美姉妹(しまい)の通う大学は電車で三十分の所にあり、駅から家まで徒歩十五分、大学まではゆっくり歩いても五分の距離なのだ。
 千恵は段々嫌な予感に襲われ、この場から逃げ出したくなった。

(あの娘(こ)、駅からここまでコレを担いだまま商店街を抜けて来たというの!?)

 頭の中で「ここに居てはダメ」という警戒音が鳴り響き、赤ランプが激しく点滅している。

「と、ところで若菜? ソレ、どうやってここまで運んだの? 誰かの車に載せて貰ったのよね!?」

「まさかぁ~、私にアッシー君でもいればそうしたかも知れないけど? 第一、こんな大きなモノ、普通の車には積めないよ~」

 よね、と語尾を強調し、そうであって欲しい、という千恵のささやかな願いを打ち崩すかの様な若菜の脳天気なお言葉。

「そ、それじゃぁ……、ま、まさか……」

 千恵の額に一筋の冷汗が流れ落ちる。
 頭の隅で「聴きたくない、聴いたらダメ」という声が聴こえて来る。
 若菜は姉の葛藤を知る由も無く、期待通りの答えを平然と返した。

「ちゃんと電車で帰って来たんだよ~。いつも通りに♪」

 千恵は開いた口から魂が抜け出てしまい、机に力無く突っ伏した。
 卒論のノートや資料がバラバラと音を立てて崩れ、散らばってゆく。
 余りのお約束に言葉も出無いし、動く気力も無い。
 姉の抜け殻に向けて若菜の嬉々とした言葉がどんどん降り注ぐ。

「流石にあさってが七夕ね~。親子連れはみんな笹竹を片手に持ってたわよ~。電車の中や商店街は葉っぱの擦れる音で満ちてたわ~♪ 日本の夏! って感じね~♪」

 お気楽若菜に千恵のツッコみが炸裂した。

「あんたにゃ『乙女の恥じらい』ってモンが無いんかいっ!!」


     ☆     ☆     ☆


「――という訳なんですよ~。これじゃ我家の恥ですよ~。晶さんからも何とか言って下さい~」

 ミニスカートなのに胡坐を掻き、何杯目かのビールをグイッ、とあおった千恵は隣で横座りしている晶に赤く染めた小顔を近付ける。
 白く、ムッチリとした二本の太股の中心に薄いブルーのショーツが丸見えになり、更にはその中心が薄っすらと縦線に形付いているのだが、酔いも手伝って千恵は気付く素振りも恥じらう素振りも全く見せない。
 千恵は呑むとすぐに顔に表れ、酔いが深くなると理性が怪しくなり、隣にいる人全てに絡んでしまうのだ。

「なるほどね~。昨年度のミスキャンパスである若菜ちゃんが大学(がっこう)から七夕用の笹竹を担いで電車でご帰宅された、と。そりゃ見ものだったわね~♪」

 グラスを傾けた晶が面白そうに澄んだ笑い声を上げる。
 晶は既に数杯、ハイボールを傾けているが顔色はいつものクールで美しいお姉様のままだ。
 ほんの少し、目元がピンク色に染まっている程度で酔いが顔に出る事は無い。
 仕事で飲む機会が多々あるので自然と強くなったのだ。

「……ふふっ♪ 若菜さん、さぞかし注目を集めたんでしょうね♪」

 千恵の正面(晶の隣だ)に正座して静かに刺身を食べている優も微笑を洩らす。
 優も何杯目かの酎ハイを空けてうなじから上がうっすらと桜色に染まっている程度なのだが、ショートヘアと相まって妙に色っぽく見えてくる。
 この美女姉妹(しまい)は酒に強い。
 とても千恵と若菜の美姉妹(しまい)では太刀打出来ない。

「笑い事じゃ無いですよ~。ただでさえあの娘、背が高くて色白美人で目立っているのに、余計目立っちゃったじゃないですか~。あの娘は何とも思って無くても、あたいが恥しい思いをするって事、判ってないのよ!」

 ビシッ、と妹を指差し、やれやれと頭を左右に振ると高い位置で縛ったロングポニーテールがフルフルと力無く揺れる。
 酔いに任せてうっぷんを晴らす千恵に、晶も優も微笑んだままだ。
 千恵の愚痴は形だけで本心では無いという事がとっくに判っているからだ。

「美人双子姉妹、ってだけで何かにつれて引き合いに出されるあたいの身にもなって欲しいわ……」

 自分の事を平然と美人と言ってしまうあたりが千恵の酔いの深さを示している。
 しらふの時は決して自分の事をそんな風に言わない。

「まぁまぁ、変に物怖じしない所が若菜ちゃんの好いトコなんだからさ♪ 良い娘よ、若菜ちゃん♪ 純粋で真っ直ぐだし♪」

 顔に掛かったソフトウェーブの黒髪を背中に流しつつ、晶がウィンクして寄越すと優も小さく頷き、ハッキリとした声で礼を言う。

「……ありがとう、今日誘ってくれて。若菜さんが『お泊り会』に誘ってくれなかったら、また淋しい七夕になってた。若菜さんは何だかんだいっても、ちゃんと気配り出来る女性(ひと)。心配ない」

 千恵と若菜の美姉妹と晶と優の美女姉妹は一昨年(おととし)までの十八年間、宏を加えた五人で七夕(という名の宴会)を愉しんでいた。
 しかし去年は宏が上京していなかった為、初めてみんな別々に七夕を迎えたのだが、好きな男性(ひと)がいないだけで何とも暗く、淋しい雰囲気になってしまった。
 そこで今年の七夕もそうなる事を恐れた若菜が楽しい七夕にしようと、晶と優に若菜の部屋に泊る「お泊り会」を持ち掛けたのだ。
 本当は顔から火が出るほど恥しい思いをひた隠しにし、電車で大きな笹竹を持って来たのもその為だった。
 幸い社会人二年目の晶は明日は休みで、学生組みの美姉妹も朝一での講義やバイトも入って無かったので多少夜更かししても大丈夫だった。

「それはっ……、判ってます。ホントはあたいがもっとしっかりしなきゃいけない、って事も。……若菜のお陰でみんなと楽しく過ごせるのに、文句を言ったらバチが当りますね」

 苦笑した千恵は素直になれない自分に気付かせてくれた晶と優に頭を下げる。
 姉としてただ黙って妹のする事を眺めていた事が恥しくなる。

「いいのよ♪ 気にしないで♪ 今夜は楽しく過ごしましょ♪ ね、千恵ちゃん♥」

 晶がビールをなみなみとジョッキに注ぎ、自分のグラスと軽く合わせる。
 ピキーンと澄んだ音色が部屋に響き、千恵の心を軽くし、憂いを払ってくれる。

「若菜ちゃん、何をお願いしたの? 短冊見せて?」

 晶は呑み干したグラスをちゃぶ台に置くと、窓際に立掛けた笹竹の下で熱心に短冊と向き合っている若菜の元へ近寄る。
 若菜はミニスカート姿もなんのその、正座のまま畳に置いた短冊に顔を近付けて一心不乱にペンを動かしている。
 その後姿は丸い大きなお尻に純白のショーツがピッチリと張り付き、秘裂の縦筋にショーツが深々と食い込んでいるのがモロ見えなのだ。
 千恵といい若菜といい、ここに宏が居たら鼻血ものだろう。
 優も好奇心を刺激され、さり気無く若菜のスカートを整えると窓辺に歩み寄り、書き終えた短冊を覗き込む。

「もちろん、宏ちゃんの事だよ~♪」

 若菜は嬉々として自分で書いた短冊を次々と畳に並べ始める。
 晶は順々に手に取ると若菜の願い事を読んでいく。

「どれどれ……。『宏ちゃんが健康で過ごせますように』、か……。なるほど、無難ね。こっちは……『宏ちゃんと結婚出来ますように♥』か……。これは却下ね」

 最後の台詞は口の中で小さく呟く。

「ヒロと結婚するのはあたしなんだから♪」

 若菜は晶の鋭い視線に臆する事無く、これまで書いた短冊を次々と晶に見せ付ける。

「これは~、『宏ちゃんと一生共に過ごせますように♪』、こっちは……『宏ちゃんが私を選びますように♪』だし~、これなんかは『宏ちゃんに処女を捧げられますように♥』、『宏ちゃんの赤ちゃんが欲しい♥』だよ~♪」

 最後の二枚を両手でかざした若菜は顔を赤らめ、晶は挑発的な短冊に血圧が急上昇し、これまでの酔いが一辺に飛んでしまう。
 若菜と晶の間に見えない火花が散っている一方、笹竹の葉の下で優が何も書かれていない短冊を何枚か手に取るとマジックで何事か綴り始める。
 晶と優は膝下までのフレアスカートなので美姉妹の様に下着はおろかそのラインすら見えない。
 宏が居たら至極残念がるだろう。
 優は酒を呑んでいる時よりも顔が赤くなっている事に全く気付いて無い。

「優さんは何をお願いしたんですか?」

 千恵はにこやかに、しかし激烈にガンを飛ばし合う若菜と晶から敢えて視線を外し、近寄らない様に迂回する。
 触らぬ神に祟り無し、だ。
 巻き添えもゴメンだ。
 酔っ払いは無視するのに限る。
 千恵は優の隣に腰を下ろし、優の手元を覗き込む。
 乙女として、七夕にどんな願いを書いたのか猛烈に興味がそそられたのだ。
 優ははにかみながらも、千恵に書いた短冊を何枚か見せてくれる。

「……何か恥しい。この歳になって七夕様にお願い事なんて。でも、つい、縋(すが)ってしまう」

 薄く笑った優の心に、普段は冷静沈着で何事にも動じず、現実的な優が見せた切ない乙女心に千恵は共感する。
 女はいつまで経っても好きな男性(ひと)の事を夢見る女の子でいたい。
 好きな男性(ひと)を想う心に生まれや年齢は関係無い。
 美女姉妹とは恋のライバル関係だけれども、宏に恋する女として優の「縋る」と言う気持ちが納得出来るのだ。

「あ……、これ……」

 千恵がピンク色の短冊を手に取ると、優は耳まで真っ赤に染めて俯いてしまった。
 そこには『ヒロクンと結婚して、赤ちゃんをたくさん産んで、幸せな家庭が未来永劫続きますように』、と小さい文字だがしっかりと書かれてあった。

「ふふっ♪ みんな、想いは同じなんですね♪」

 千恵は手の中にある短冊と、いまだに電撃を飛ばし合っている若菜と晶を交互に見て微笑む。
 すると優が千恵に向けて短冊を差し出す。

「えっ!? あ、あたいも書くの!? ど、どうしても?」

 優の柔らかい微笑みに逆らう事など出来る筈も無く、千恵は羞恥心に塗(まみ)れながら考えに考え、長い時間を掛けて一枚だけ何とか書き終える。
 真っ赤に染まった額には薄っすらと汗まで掻いている。

「……千恵さん、見せて♪」

 優が表情を変える事無く、ずいっ、と手を伸ばす。
 その笑顔は「千恵さんの短冊を見るまでこの手は引きませんよ」、と言っている。
 優も結構酔っている様だ。
 千恵は何とか抵抗を試みる。

「あ、ほ、ほら、願い事は人に見せたら叶わない、って言うじゃないですかっ。だから、ね、その……」

 優は一向に動じない。
 ふと気付くと、晶はおろか若菜でさえ瞳を輝かせて優と並んで座っているではないか。
 初心で純真純情な千恵が男(宏の事だ)に関してどんな願い事を書いたのか興味津々なのだ。

「あう゛~~~」

 千恵はこんな時だけ一致団結する晶と若菜に苦りきった表情を向けるが、晶も若菜も逆に見つめ返して来る。
 その視線は「早く見せろ~~、見せないと奪い取るぞ~~、奪い取ったらコピーして家中に貼り付けるぞ~~」と語り、全身から好奇心オーラを悶々と放っている。
 千恵は海よりも深い溜息を吐き、下着姿で人前に立つ気分でそっと優の掌に薄いブルーの短冊を載せる。
 すると一斉に三人の顔が一枚の紙切れに集まる。

「どれどれ……。『宏があたいを好きになってくれますように♥』、か。なるほど、千恵ちゃんらしい初々しさね~♪」

 晶が優しく微笑んでそっと、そして丁寧に千恵の掌に短冊を返してくれる。
 今ここにいる四人は宏を巡ってのライバル(恋敵)ではあるものの、その秘めたる想いまでは否定しない。
 相手を否定する事は自分の想いも否定する事になるからだ。
 相手を蹴落としてまで宏と結ばれようとする女はここにはいない。

「晶さん……」

 千恵は晶の心遣いが本当に嬉しく、思わず涙腺が緩んでしまう。
 義理人情に厚い千恵は涙もろいのだ。

「……お姉ちゃんはお願い事書かないの? せっかくなんだから何枚か書けば好い♪」

 優が色とりどりの短冊とマジックを渡すと、晶の顔が初めて赤く色付いた。
 流石に二四才にもなって七夕に願いなんて……、と頭の隅で思っていても、心の中はいつでも十八才!(自称)の晶は心ときめいてしまったのだ。

「そ、そうねっ、せっかくだから何枚か書こうかしら……。言っとくけど、書きたくて書くんじゃ無いからね。みんなが書け、って言うから仕方無く書くんだからねっ!」

 耳まで赤くなった晶が取り繕う様に饒舌になるが、みんなニヤ付くだけで誰も聞いてはいなかった。
 晶はそれでもペンを止まらせる事無く、スラスラと次々に短冊に書き連ねてゆく。
 まるでずっと書く事を考えていたかの様なスピードだ。

「「「なになに……」」」

 三人の目が書き上がった色とりどりの短冊に集まる。

「これは……『ヒロがいつも明るく過ごせるように』で、こっちは……『ヒロがいつまでもヒロのままでいられますように』ね~。ん!? これは……?」

 若菜が数枚ある中で一番下に隠す様に重ねてあった短冊をみんなに見える様にかざすと、千恵と若菜の顔色が一瞬で赤から青に、そして千恵だけは真っ赤にと目まぐるしく変化した。
 酔いが醒めて血の気が引き、続けて羞恥心が沸き起こったのだ。
 優だけは「ああ、やっぱり……」と苦笑する。
 そこには『ヒロの童貞は私のモノ♥ 誰にも渡さないわ♪ 私はヒロの最初で最後の女になり、私はヒロを最初で最後の男にするわ♥』と太マジックででかでかと書かれてあった。

「晶さん……」

「晶姉さん……」

 千恵と若菜のジト目に我関せず、といった表情で晶は堂々と言ってのけた。

「想うだけなら、願うだけなら、誰にも迷惑かけないでしょ♪」

「ずるいわ~。宏ちゃんの初めては私が貰うのよ~」

「それはヒロが決める事だわ♪」

 晶と若菜はジャブの応酬を繰返しつつも部屋に散らばった短冊を皆で丁寧に拾い集めると綺麗に、そして慎重に飾り付けてゆく。
 折り目や汚れを着けない為に。
 それぞれが、それぞれの想いを胸に秘めながら。

「これで全部ね? それじゃ、彦星と織姫を眺めながら飲み直そうか♪」

 アルコールが切れた晶が部屋の明かりを消して窓を全開にすると、目の前の夜空に天の川が煌き、彦星と織姫が今夜ばかりは存在を主張するかの様に光り輝いていた。
 闇夜ではなく、濃紺のベールに幾つもの小さく光り輝く宝石を散りばめた満天の星空。
 ずっと見つめていると光に吸い込まれる様な、そして幻想的に光を放つ幾多の星の煌きに言葉を失う。
 この様にみんなで星空を見上げるなんて何年振りだろうか。

「綺麗ね……」

 誰かが呟く様に言葉を洩らし、誰とも無く頷く。
 どの位眺めていただろうか、若菜のひと言が静寂を破った。

「織姫と彦星、か……。まるで今の私達みたいね……」

 若菜が淋しそうに笹の葉を撫ぜながら呟く。
 その切れ長の瞳には光るもので潤んでいる。
 やはり好きな男性(ひと)が傍にいない事が堪えているのだ。

「そうね……。ここから東京は遠いわね……」

 千恵がしみじみと言い、ビールジョッキをあおる。
 飲んで宏との距離が詰まるのならば、あたいは死んでも飲み続けてみせる。
 彦星を映した大きな瞳がそう語っている。

「この二つの星は動けないけど、あたし達には自由に動ける二本の足がある。電話で声も聴けるし、パソコンでチャットも出来る。だからあたしは淋しく無いわ♪」

 晶が二人を励ます様に声を掛け、ウィンクしながらパナシェ(ビールをソーダ水で割った物)の入ったグラスを掲げて軽く振って見せる。
 くよくよしなさんな、という事らしい。

「でも、やっぱり逢いたい……、声が聴きたい……」

 若菜が喉の奥から震える声で訴える。
 この願いに、即座に応えられる人物はここにはいない。
 千恵はどうしたものかと妹の泣き顔を眺めつつ、自分も泣きたい気分になる。

「……若菜さん」

 優が晶と千恵に視線を送り、三人でどうやって若菜を慰め様かと思案に暮れかけたその時。
 若菜の携帯電話が着信を告げるメロディーを奏でる。
 その瞬間、弾ける様に若菜が携帯に跳び付いた。

「この着信メロディー、宏からだわ……」

 千恵が余りのタイミングの好さに驚く。
 若菜は宏からの電話は専用の着信音にセットしてあるので、鳴った瞬間に宏からだと判るのだ。

「もっ、もしもしっ!? 宏ちゃん! ふ、ふぇ~~~ん……」

 逢いたい、声を聴きたいと願っていた男性(ひと)からの電話に嬉しさ、切なさという感情が溢れ出し、電話口で泣きべそを掻いて話も出来ない若菜に代わって晶が苦笑しながら電話に出る。

「もしもし、電話代わりました。晶です」

 晶は電話の向うで慌てふためく宏に思わず軽やかな声を上げて笑ってしまう。
 電話を掛けた途端に幼馴染に泣かれては誰だって慌て、驚き、混乱するだろう。

「――そう、そういう訳なの。貴方のせいじゃ無いわ。いや、少しはあるかも♪ いいえ、大ありだわ♪ ちゃんと責任取ってね♥ 千恵ちゃんに代わるわ♪」

 晶は悪戯っぽい声で意味深に話を〆ると、落ち着かずにそわそわしている千恵に電話を渡す。
 正に「噂をすれば影」を実証した宏に、千恵は一瞬何をどう話せば良いのか判らなくなってしまう。
 と同時に、自分達の暗い雰囲気を打ち払う電話をくれた宏が天帝(てんてい)に思えて来た。
 いつしか千恵は時間(とき)を忘れ、愛しい男性(ひと)の声と会話を胸に刻み込んだ。

「――うん♪ ありがとう♪ 宏も身体に気を付けてね♥ 優さんに代わるわ」

 名残惜しそうに、後ろ髪を引かれる思いで千恵は電話を優の掌へ回す。
 そっと受取った優はいつも通り静かに、でも熱く宏と語り始める。

「……うん、その通りだと思う♪ 流石、ヒロクンみんなの事判ってる♪ うん、それじゃ、おやすみ♪ よい夢を♥」

 優は静かに電話を切ると、胸の中に溜め込んだ熱い吐息を大きく洩らす。
 美女姉妹は表立って宏に好意を見せていない分、宏との電話の後はいつも切なくなってしまうのだ。
 三人が天空に煌く彦星と織姫を眺めながら宏との会話の余韻に浸っていると、突然若菜の絶叫が部屋に響いた。

「あ~~~っ!! 私、宏ちゃんと話、してないっ! いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「……あ、ごめん。つい、回すの忘れてた」

 優がバツが悪そうに首を竦めるが、若菜は聞いちゃいない。
 自分の携帯を速攻で開き、宏へのダイレクトコールボタンを押した瞬間、無常にも電池切れのアラームが鳴り出した。
 晶と優、千恵はその音は我々に対する緊急非常警戒音だと瞬時に捉え、若菜が暴れる寸前にそれぞれの携帯電話を差し出して部屋や家具、備品が破壊されるのを未然に防いだ。

「もしもし、あ、宏ちゃん♥ さっきはゴメンね~♥ 今、私達彦星見てたの~。えぇ!? 宏ちゃんも見てたの!? すっご~~いっ! 感激だわ~♥」

 若菜の弾む声を聞きながら三人は夜空を見上げ、天の川を挟んだ彦星に宏を、織姫に自分達を重ねてグラスを傾ける。
 でも私達の彦星はいつでも逢う事が出来る。
 天の川なんて関係無い。
 若菜の笑い声に合わせるかの様に晶、優、千恵、若菜の書いた短冊が夜風に揺れ、寄り添っている。
 そして笹竹の一番高い所には『宏ちゃんとみんなが幸せになれますように』と書かれた短冊が誰にも気付かれる事無く揺れ動き、どの短冊よりも明るく星明りに照らされていた。

「「「「「あっ! 流れ星!」」」」」

 一際煌く軌道を描きながら、一滴の光が彦星の辺りから天の川を越え、織姫に向けて流れていった。


                      (番外編~ 七夕飾りに想いをのせて・了)

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【 お寄せ戴いた御意見・御感想 】

[ 宏は反省しなさい!!! ]
これこれ!!!!
だから此処はいつでも来れるんです(^^)v
ちゃんと乙女の心情が綴られてて、想いが私の心を動かすんです!!!
何気に詠んだら胸が熱くなってしまうんです!!!
こうなったら・・・止められないじゃないですか・・・絨毯爆撃

[ い、いつもお越し戴き……♪ ]
草薙さん
 コメントありがとうございます♪

 ナニやら追い掛け追われつつ……なコメント合戦(?)となっておりますが。
 今章をお褒め戴きありがとうございます♪

 やっぱり若菜が爆弾娘……ですねぇ。(笑)

 いつも応援ありがとうございます♪ m(_ _)m
 

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