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美姉妹といっしょ♡
ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ・・・・・・
突然鳴り響く目覚まし時計のアラームに宏は優の指し示すパソコン画面から目を離し、時計に表示された時刻を確認する。
そして手を伸ばしてアラームを止めながらゆっくりと立ち上がる。
「ごめん、優姉。帰ってからゆっくりと見るよ。もう仕事に行かないと」
宏は家を出る時間の五分前に目覚ましをセットしている。
こうしておけばトイレや洗い物をしていてもTVに表示される時刻を見る事無く時間が判り、余裕を持って家を出られるのだ。
優は宏が残高を見て驚く顔を見られない事を内心残念に思うが表情には出さず、柔らかく微笑んで頷く。
「若姉、悪いんだけど朝御飯の片付け頼んでもいい? 千恵姉、夕飯は俺が作るから。晶姉、引越しの件はOKだから、俺が帰ったらゆっくり話そう」
手早く身なりを整えながら三人を見ると、最高の笑顔で頷いてくれる。
「「「判ったわ♪ いってらっしゃい♥」」」
千恵と若菜の美姉妹(しまい)と晶の心地良い三重奏を背中で聞きながら玄関に向かうと、優が後ろから付いて来た。
「ねえ、ヒロクン。急な話で悪いんだけど、明日か明後日、出来れば明日から二〜三日、お休み取れないかな? お姉ちゃんが当たりを付けた部屋をボクと一緒に見て廻って欲しいんだけど」
優が宏の背中に声を掛けると、靴を履き終えた宏が振り返りながら尋ねる。
「優姉と? 晶姉は? みんな一緒じゃ無いの?」
いぶかしむ宏に、優は晶の忙しさを挙げる。
「お部屋探しはボクに任されてるの。お姉ちゃん、他にする事があって」
「そっか、うん判った♪ 休みは会社と調整してみる。それじゃ、行って来ます!」
「いってらっしゃい♥」
独り暮らしでは決して出来無かった台詞のやり取りに照れながら宏はバイト先へと向かう。
優は玄関を出て宏が見えなくなるまでずっと佇(たたず)み、ゆっくりと部屋へ戻る。
(いってらっしゃい、か・・・・・・。久振りにヒロクンに向かって言ったわ。でもこれからは奥さんとして毎日、玄関で送り迎えをして♥・・・・・・)
まるで新婚家庭の様な(実際、新妻なのだが)シチュエーションに思いっ切り照れてしまう。
(やだっ、昨夜(ゆうべ)の事を思い出しちゃった♥・・・・・・)
奥さんと言う言葉に、宏と肌を重ねた感触や注がれた精液の熱さを思い出してしまい、顔が火照ってしまう。
「優、顔が赤いわよ♪ ナニを考えてるのかな〜?」
からかいを含んだ姉の言葉に、頭の中が新婚モードの優はすぐさま反応出来ない。
そんな優に若菜が笑いながらちょっかいを出す。
「優姉さん、ちゃんと『いってらっしゃいのチュー♥』、して来た?」
「こらっ、若菜っ! 年上をからかうもんじゃないわよっ!」
千恵の叱る声(しかし目は笑っている)と晶の笑い声を聞きながら、優は耳まで赤く染めて残りの朝食を食べ始める。
(いってらっしゃいのキス、か・・・・・・。全然思い付かなかった・・・・・・。妻としてまだまだ未熟だわ・・・・・・)
かなり無念に思いつつ、今夜の『おかえりなさいのキス』から絶対にしてやろうと心密かに誓う優だった。
「さてと。ヒロも出掛けた事だし、残る問題を片付けましょう。千恵ちゃん、若菜ちゃん、あなた達仕事はどうしたの? 今日休む事は言ってあるの? 明日からの勤めはどうするつもり?」
ひと足早く食事を済ませた晶が、食後の番茶を啜っている美姉妹(しまい)に立て続けに問いかける。
妻達のリーダーとして、社会人の先輩として、そして社長室付秘書としての正義感(?)が晶を燃え上がらせ、眼光鋭く二人を捉える。
「おとといの内に、今週は休む事は言ってありますけど・・・・・・その先の事はまだ考えて無くて・・・・・・」
晶の全てを見透かす様な厳しい目に千恵は厳しい女上司に叱られている部下みたく首を竦め、上目遣いになって言葉も詰まってしまう。
高い位置で縛ったロングポニーテールが小刻みに震えて千恵の落ち着かない心境を示している。
「そのうち、会社には辞めると言うつもり、だったの・・・・・・」
若菜は晶の迫力の前に声が小さくなり、みるみる内に顔から血の気が引いて来る。
もともと色白の若菜が更に白くなると漆黒のストレートロングヘアとの対比がより一層際立ち、まるで白い陶磁器で出来た人形の様になってしまう。
「やっぱり・・・・・・。あなた達、このまま黙って会社辞めるつもりなの!? それはちょ〜っと無責任過ぎやしない? 社会人として、人間として」
晶の表情が瞬く間に怒りの形相に変化する。
ただでさえ目鼻立ちが整い、クールな印象を与えている晶が怒った表情になると何者をも近寄り難い雰囲気になる。
実際、晶の会社の社長や会長でさえ目を伏せながら避けて通る程だ。
(ヤバいっ・・・・・・! 晶姉さん、本気(マジ)だっ)
晶の大きな瞳がすっと細くなり、氷点下にまで下がった声色に若菜は姉の手を取って震えだす。
本気で怒った晶の恐ろしさを身を持って知っているからだ。
((やっぱり、仕事を蔑(ないがし)ろにしたのはマズかったわね・・・・・・))
千恵も若菜も、晶の当然とも言える叱責に今更ながら心の中で猛省する。
若菜は宏逢いたさに仕事の事を忘れた(敢えて無視した)事を反省し、千恵は若菜の上京を止めなかった事を姉として深く反省する。
(ったく、後先考えずに飛び出すからこんな事になるのよ! ・・・・・・まぁ、気持ちは判らなくは無いけどね)
二人の萎(しお)れた態度に、晶は心の中で溜息を付く。
宏に逢えなくて淋しい思いをしたのは、何もこの美姉妹だけでは無いのだ。
晶も仕事が無ければ、きっと優と一緒に美姉妹と同じ事をしただろうから。
(ふむ・・・・・・)
晶は表情を若干緩め、途方に暮れる美姉妹を見やる。
晶の鋭いながらも温かな視線と目が合った途端、若菜はバツが悪そうに慌てて視線を逸らして俯き、千恵は雨に濡れて縋(すが)り付く子犬の様な目で見返してくる。
普段は切れ者の千恵も、今後どうして良いかまでは頭が廻らないらしい。
(やれやれ・・・・・・仕方が無い。ここは一つ、鬼になるか・・・・・・)
晶は大きく息を吐き、ヘアバンドで留めたソフトウェーブのロングヘアを左手で背中へ流すと、部下に命令する上司の如く、凛とした声で二人に告げる。
「二人共、今日これからあたしと一緒に実家へ戻ってもらうわ。そして自分の手でキチンと会社を辞める手続きを済ませなさい。同時に、こちらで暮らす準備も整えるのよ。いいわね」
晶の有無を言わせない業務命令(?)に、美姉妹は目を大きく見開いて晶を凝視する。
「今日? これから? 戻る!?」
「!!」
若菜は泣きそうな表情になって言葉を搾り出すが、千恵は今初めて気が付いたとばかりにハッとする。
(確かに・・・・・・後始末は必要だわ。あたいも若菜も、放っておいていい問題じゃ無いものね)
至極真っ当な晶のアドバイスに、千恵はいつもの冷静さをようやく取り戻す。
晶は俯いている若菜の為にもう一度、判りやすく噛み砕いて言い聞かせる。
「これからヒロと東京で暮らすのなら、向うでの憂いを全て無くしてからにしなさい。でないと、あなた達だって気分は良くないでしょう? このままではヒロに迷惑を掛けてしまうわ。それに、あなた達のご両親にも要らぬ心配させちゃうでしょ?」
晶は美姉妹の両親を思い浮かべるが、どう考えても心配する様なタマじゃ無い事位、充分に知っている。
でも、ここは敢えてそういう風にしておく方が話は早い。
「会社の方も寿退社という事なら、まぁ、何とでも言い訳出来るから安心なさい」
晶の会社でも、ショットガンウェディング(出来ちゃった婚)に伴う女子社員の突発的退職が年複数回は発生している。
その度に女子社員(と一部の男性社員)から絶大な人気を誇り、人心掌握に長(た)けた晶は人事部の部課長から欠員部署への人員配置について相談を受ける羽目になるのだ。
「そして会社の件と平行して、正式にヒロの許(もと)へ嫁入りする準備を整えればいいのよ。一週間もあれば直ぐにこっちへ戻れるわよ」
若菜に噛んで含ませる様に言い聞かせる晶は、まるで若菜の母親になったかの様だ。
晶もそんな錯覚に陥り、心の中で苦笑してしまう。
「みんなが実家にいる間、ボクとヒロクンで新しい部屋を見つけてここから引越しておく」
それまでずっと黙っていた優が緑茶を啜りながら晶の補足をする。
「新しいお部屋でみんなが来るのを待ってる。だからこっちの事はボク達に任せて、向うでキチンと整理着けて来て欲しい」
優は美姉妹に向かって安心させる様に微笑む。
「何も実家に引き上げる訳じゃ無いから。こっちで新たに暮らす為の準備だと思って。ね♪ 準備が出来次第、こっちに来ればいいんだから」
最後に晶は微笑み、普段の美しくも優しい表情に戻って若菜の気分をほぐしてあげる。
千恵は晶と優の美女姉妹(しまい)の段取りの良さに感心すると共に、自分達の無計画さを恥じる。
「・・・・・・そうですよね。宏に心配掛けちゃ駄目ですよね。このままじゃ社会人として、宏の妻として失格ですものね・・・・・・。はい、判りました。晶姉さんの言う通りにします」
千恵は表情も晴れやかにキッパリと言い切り、晶と優を安心させる。
しかし若菜は眉根を寄せ、押し黙ったまま何やら考え込んでいる。
「若菜? 今後の為に一度帰りましょう。その位は判るでしょ? 何が心配なの?」
千恵の言い含める言葉に顔を上げた若菜の瞳には、薄っすらと涙が光っている。
そして晶から戻ると告げられてからずっと考えていた事をポツリと呟いた。
「ずるいっ! そうなったら優姉さん、今夜から宏ちゃんと二人っきりじゃないのよ〜〜っ!」
「「そっちの心配かいっ!!」」
一瞬の間の後、ピキマーク(怒りの印)を額に大量に浮べた千恵と晶の正拳が左右から若菜を粉砕する。
一方、若菜の台詞に優がはにかみながら顔を赤らめる
(こ、今夜から・・・・・・ヒロクンとボクが、ふ、二人っきり♥・・・・・・)
優は目元を赤く染め、若菜のさめざめと泣く声を聞きながら今夜からの甘い生活に思いを馳せた。
(つづく)
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【 お寄せ戴いた御意見・御感想 】
[ こうしてよんでみると・・・ ]
むぅ・・確かにすごい表現力だ
トトみたいなインパクト重視のキャッチフレーズじゃなくてね、この細かな想像力っていうか視点を切り替えながら作ってるでしょ?それができるってのがすごいなぁ。どっちかっていうとさぁ、俺はいっつもエロい方向に直線的に進むことしかできなかったから
こうやって「感じること」を表現できないんだよね。
今になってきがつきましたね。
時間をかけて感じることができる
それこそがいい作品の域なんですね。
リンクほんとありがとうございました。
[ 照れちゃいマス・・・ ]
トトロっちさん
コメント&お褒め戴きありがとうございます♪
トトロっちさんにはトトロっちさん流の文章の良さがありますので私は好きですよ♪
リンクはこちらこそ、です(笑)
[ ]
おもしろい
[ ご来訪ありがとうございます♪ ]
怠惰+偽鍋島広臣さん
ご愛読&コメントありがとうございます♪
お褒め戴き恐縮です(*^_^*)
今後も 「ライトHノベルの部屋」 を御贔屓に願います♪
[ ]
作品の世界観とキャラクターが個性的なのがいい
今まで読んできた本?の中でも絶対にBEST 3には入る!
[ ご愛読ありがとうございます♪ ]
たん さん
コメントありがとうございます♪
お褒め戴き、ありがとうございます。
気に入って戴けたようで、作者冥利に尽きます♪
これからもラブラブハ〜レムな物語を掲載して参りますので、
末永い御愛顧、宜しくお願い申し上げます。m(_ _)m
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