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恋妻(5) 恋妻(5) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
(昨日、ほのかさんから渡された地図を見た時から妙な懐かしさを覚えたけど、こうして久々に来てみると懐かしさもひとしおだな)

 モノレールを降り、二列だけの自動改札を抜けた宏は見覚えのあるビル群を見渡し、感慨深げに深い息を吐(つ)いた。

 ――鉄骨で支えられた幾つもの太いパイプがビルとビルの二階部分に縫うように渡され、三階部分には建物同士を結ぶ連絡通路。屋上には赤白塗装の低いアンテナや小型のレーダードームが置かれ、ビルに横付けされた、空港周辺だけにしか見られないフードローダーと呼ばれる機内食運搬の大型特殊車輌や航空会社のロゴが入れられたライトバン。そして見覚えのある枝振りの街路樹の下をお揃いの整備服姿で連れ立って歩く人達――

 前回訪れた時と少しも変わらない光景に、宏はどこか心安まる気分になった。

(ま、少なくはない回数、この駅を利用したからなぁ。すっかりこのエリアに染まっちまったのかも)

 ほのかから「デートしようぜ」と待ち合わせ場所に指定されたのは、羽田空港の北西側に位置するモノレールの整備場駅だった。

(それにしても、日本一の規模を誇り世界的にも年間利用客数第四位の空港なのに、ここだけは人気(ひとけ)が少なくひっそりとした雰囲気は変わらないなぁ。まぁ、この時間はみんな建物の中にいるんだろうけど……)

 数分おきに遠くから聞こえるジェット機のエンジン音の他は、平日の日中にも係わらず小鳥達のさえずりやそよ風が街路樹の葉を優しく揺する音だけが耳に届くのだ。

(空港の南側に新たに拡充された整備エリアにエアライン各社がこぞって移ったからなぁ。今やここは旧整備場エリアなんて呼ばれて、海上保安庁と航空局、警察と消防、報道各社と一般企業向けのハンガーしか残ってないし)

 年間七千万人を越える利用客で二十四時間賑わう旅客ターミナルの華やかさを知っているだけに、同じ空港にいるとは到底思えない。
 それでも。

(……あ! あの錆びた道路標識、まだ端っこが折れ曲ったままになってる! それにこの縁石、割れたトコから雑草が伸びてるの、見覚えある!)

 目に飛び込む光景のひとつひとつが過去の記憶と鮮明に重なり、センチメンタルな気分に浸ってしまう。

(前に来た時は晶姉達六人と挙げる結婚式の打合せで何度か来た程度だったからなー。そっか、あれから一年半近く経っているのか。何だか遠い昔のようにも思えるなぁ。それが今や……)

 同棲を機に土地付き一軒家を所有し結婚、その後も四人の妻を娶り暮らしているのだから人生何が起きるか判らない。

(変ったと言えば、モノレールの始発駅が七月から東京駅に移ったんだよなー。前に来た時は、延伸部分の橋脚工事が終ったかどうかって時だったし、空港自体も沖合に四本目の滑走路が出来るわ国際線ターミナルが大幅に拡充されるわで、時代の移り変わりが早いよな~)

 宏の脳裏に、今回のデートを持ち掛けた金髪碧眼美女の笑顔がポワンと思い浮ぶ。
 妻であるほのかの職場は、このすぐ近くなのだ。

(浜松町での乗り換えが無くなり通勤時間が少し減ったって、ほのかさん喜んでたもんなー)

 宏は家を出てからこの整備場駅までの行程を思い起こしていた。
 自宅から最寄り駅までゆっくり歩いて十五分、そこから東京駅まで快速で三十分、乗り換えに十分と各駅停車のモノレールに揺られること二十分で合計七十五分。
 以前の東京から浜松町まで電車移動していた頃と比べると、およそ十分の時間短縮となる。
 もっとも、東京駅では八重洲側にある新幹線ホームの頭上にモノレール駅が造られたので、丸の内側の地下深くにある快速線ホームから早くても従来の倍近い乗り換え時間が掛かってしまうのが難点だが。

(それでも乗り換え一回で来られるのはホント、楽だよなー。特に朝なんかは)

 などと妻の立場を身に置き換えていたら、丁度その美女が運転するワンボックス車が目の前でピタリと停まった。

「よう、宏! 待たせて悪かったな! ささ、乗った乗った!」

 身を乗り出し助手席のドアを開けたほのかが満面の笑顔で手招きする。
 腰まで届く波打つ金髪は、今はアップに纏められてはいるが、上は深紅のトレーナー、下はスリムジーンズと家を出た姿のままだ。

(あ、そうか。前にほのかさんが言ってたっけ。フライトが無い時のクルーは服装が自由だって)

 職場の大らかさを羨ましく感じた宏が右腕に嵌めた時計をチラリと見ると、待ち合わせ時間の午前十時半より少し前を指していた。

(流石、人格や能力に秀でて選ばれた機長だけあって時間も正確だ♪ ……もっとも、家(うち)にいる時に着崩してセクシーを通り越してあられもない姿で飲んだくれるほのかさんも知ってるから、丸っきり几帳面とまでは言えないけどねー)

 などと目の前の見目麗しい機長に魅入っていたら。

「……おい宏。今、何か失礼なコト考えてたろ?」

 ジト目となった切れ長の碧眼で睨まれてしまった。

「えっ!? いやいや! トンデモゴザイマセン! って、ほのかさん、この白地に赤のラインが入った車って、ほのかさんの勤める会社の車だよね? 去年来た時、事務所の前に停まってたの見覚えあるし。ってコトは、今日のデート先は、やはりほのかさんの職場なの?」

 車に乗り込みシートベルトを締めつつ大慌てで否定し、話題を早急に変える宏。
 あとに引く喧嘩など決してしない相手だと判っていても、せっかくのデートを微妙な空気のまま過したくは無い。
 元よりほのかも冗談だったようで、車を発進させるとウィンクしながらサムズアップして来た。

「あはは! 宏がどう思ったかはともかく、行先は大正解だ♪ まぁ、昨日渡した地図見りゃ大方の予想は付くもんな。ってコトで、今日はオレの普段の仕事っ振りを見て貰おうかと思ってさ。ホラ、学校でもあるだろ? 親が子供の学校や授業を見学するヤツ、えっと……何てったっけ?」

「あ~、授業参観、だね」

「そうそう! ソレだ、ソレ♪ オレ等の会社、家族や知人向けに授業――じゃ無くって職場参観制度、採ってるんだ。だから夫である宏には、仕事してるオレの姿を見て貰いたくってさ♪ まぁ、今回はフライト無いからデスクワークがメインだけどな」

 鼻歌交じりにハンドルを操る横顔に、宏はなるほどと頷く。

「ほのかさんが今朝から機嫌好かったのは、これだったのか。朝食の席でもソワソワ、ウキウキしてたし」

「そりゃ、愛しのダーリンがオレの職場に来るんだ。昨夜は待ち遠しくって嬉しくって興奮の余り全然寝付けなかったぜ♪ お陰で今日は寝不足だ」

 破顔するほのかに、宏はニヤリと笑ってしまった。

「あっれ~、変だな? 昨夜のほのかさん、俺の腕を枕にして実に安らかな寝顔してたよ? それに待ち遠しかったのは俺とのエッチで、興奮してたのはスローセックスの真っ最中だったよね~。正常位で繋がったままお互い異様~に燃えちゃってさ♪」

「!! ~~~~~っ!」

 揶揄する宏に、昨夜の痴態を思い出したのか車が一気に加速し、無言のまま顔が真っ赤に染まるほのかだった。



「到着~♪ さぁ、ここがオレの職場だ! ――って、去年何度も来たから言わんでも判るわな」

 宏がほのかの運転する車で一分と掛からず着いた先は、道路側が二階建ての事務所ビルになっている、これまた見覚えのある格納庫(ハンガー)だった。
 ここは整備場駅から歩いて五分足らずの近場にも係わらず、ほのかはわざわざ車を出してくれたらしい。
 なので車を降りてすぐ、

「ほのかさん、ありがとう!」

 満面の笑みで礼を言わずにはいられなかった。
 ただ、事務所を見上げつつ、

「それにしても久し振りだなぁ。綺麗な薄い青色なのに何となくくすんだ色合いと年季の入ったボロッちぃ建物は前に来た時とちっとも変わらない! まぁ、羽田の拡張工事とは孤立無援なエリアだから仕方無いか」

 懐かしさの余り、ここを職場にする人の目の前で思わず本音が口を吐(つ)いてしまった。

「あ! ご、ごめん! つい――」

「あはははは! 相変らず正直だな! でもそんな正直さを持つ宏だからこそ、オレは好きだぜ♪」

 慌てて詫びを入れる宏を咎めるどころか、サムズアップ付き大笑いで褒められてしまった。
 オマケに、この職場に於いては管理職でもある現役機長からの寛大なお言葉まで頂戴する羽目に。

「大丈夫! 宏の抱いた感想は、ここら一帯で働く全員が普段から思ってるコトだから全然気にしなくて好いぞ♪」

「え~っと……それでも、ゴメン」

 何となく申し訳無く思い、小さく頭を下げる宏だった。

「ま、ともかく中に入ってくれ。所長以下、全員がお待ち兼ねだ!」

「あ、そうか。ここにいる皆さんは昨年ここで挙げた結婚式のお礼に訪れて以来だし、所長さんや副所長さんと逢うのも、今年の春先に下地島で挙げた多恵子さん達との結婚式のお礼で訪れて以来だもんな。皆さん、お変り無く?」

「それは自分の目で確かめてくれ。まぁ、クルーとメンテの人数が倍増した以外は前のままだからさ」

「そう言えば、会社の形態が変わってパイロットと整備士さんが増えたんだっけね。となると、その半数近くは初対面、って事か」

 宏が記憶の中にある、昨年お世話になったクルーや整備士達を思い起こしていると、豪快に笑ったほのかが耳を疑うような台詞を曰(のたま)った。

「あはははは! 宏は初対面でも、このエリアに詰める人間は余すトコ無く全員、宏を知ってるぜ♪」

「はい~~~~っ!?」

 これ以上無い位に目を剥き、言葉尻が急上昇する宏。
 そんなご当主が面白かったのか、ひとしきりケラケラ笑ったほのかがネタばらし(?)してくれた。

「だってよ、この界隈で働いてる者達はオレ達の結婚式に参列した連中だぜ? ハンガーの周りに幾重にも出来た人垣、覚えてねぇか? 百を優に超え二百人以上、いただろ?」

「……そ、そう言われれば、確かに」

 宏の脳裏に、式の周知をしていないにも係わらず噂を聞き付け集まって来た空港関係者達が浮かぶ。

「なにせ、味気無い北側整備エリアを一時(いっとき)でも華のある空間に変えてくれた大恩人なんだ。連日飲めや歌えの大騒ぎになって当然さ。その宏が更に四人もの美女を娶る様子を下地島からの生中継見たり式の様子を収めたブルーレイ見たりすれば、そりゃ誰だって宏の顔と名前、完全に覚えるさ。だから宏はこの界隈では超有名人なのさ♪」

「そ、それって初耳! 寝耳に水なんですけど!? そんなん、ちっとも知らんかったわ!」

「あははは! これぞ、知らぬは亭主ばかり、ってな♪」

「……誰が巧い事を言えと? あ……もしや、それで整備場駅の駅員さんがにこやかに挨拶してくれたのか?」

「あはははは! 今も当時の様子が語り草になってるからな。オレも時々、そのネタでからかわれるし♪」

「こ、ここらで働く人達って、底抜けに陽気で明るいんだって、今ので好~~~く判ったよ。……あ♪」

 終始笑顔のほのかに衝撃的な内容を聞かされるも、宏は微かに感じるジェット燃料の匂いと、数分間隔で聞こえる高らかなエンジン音に心が躍り始めた。

(あぁ、この、何ともクセになるケロシンの匂いに、着陸した飛行機が逆噴射(リバース)する時の豪快なジェットサウンド! これぞ空港に来た! って感じだよなぁ♪ ん~~~最っ高♪)

 航空ファンでもある宏はその実、ここに来る事をほのか同様に昨夜から楽しみにしていたのだった。


     ☆     ☆     ☆


「――で、ここが事務担当のお姉様方が揃う席、あっちが整備(メンテ)の連中だ。ま、机を向い合わせにしてひとつの島を作るやり方は、どこも一緒だけどな。因みに、晶のいる丸の内オフィスもそうなんだぜ♪」

 ほのかは先導するよう宏に腕を絡ませ、事務所内を案内する。

(オレの職場に宏がいるなんて、メチャ幸せだぜ!)

 宏と同僚達三十人がお久し振りです、その節はお世話になりました、お元気そうで何よりです、初めまして、などとにこやかに挨拶を交わしている間、ほのかはずっと心弾ませていた。
 なにせ、勤務時間中にも係わらず愛して止まない宏と一緒にいるのだから、こんな嬉しい事はそうそう無いだろう。

(よ~し! 晶のヤツに一泡吹かせ、こんな幸せな毎日を続けるにも、今日はビシッと決めないとな!)

 前々から準備して来た事が成就するのか否かの瀬戸際だけに、勢い、エスコートする腕に力が入ってしまう。

「ホラ、挨拶はいつだって出来るから、次はこっちだ♪ 給湯室横の階段を上がった二階には更衣室と畳十枚分のスペースもある食堂兼大休憩室、そして十六人分のベッドがある仮眠室とシャワールーム三つがあるけど、それは前に来た時に知ってるだろ? そう、オレ達結婚式の控え室にしてたトコさ。で、整備連中の島の後ろにあるこの扉を開けると……」

 これまでの天井の低い空間から、今度は大きく見上げる程に広大な空間――格納庫へと移動する。
 エスコートされる宏も、久々に来た所為か随所に目を輝かせ、盛んに首を巡らせている。
 どうやら職場参観は巧く事が運んでいるようだ。

「ここは幅百二十メートル、奥行五十メートル、高さはビル七階分に相当する二十メートルあって、誘導路側の隣、つまり事務所の後ろ側にはエンジン調整用の燃焼試験室もあるんだ。今はこのガルフストリームG650の二機体勢でオレ達がフライトしてるのも、知っての通りだ」

「うん、小型のビジネスジェット二機だけとは言え、並んでると壮観だね! しかも分解整備するだけの設備を揃えると、これだけの規模になるもんね。それに……」

 と、ここで隣を歩く宏の目が少し優しくなる。

「懐かしいな。ここで俺達、結婚式を挙げたんだよね」

「そうそう。宏のサプライズウェディングで、な♥」

(あの時は重役の海外出張のフライトと言われてたのに、ここに来ていきなり副所長からウェディングドレス手渡されて……)

 当時の感激が急速に、かつリアルに思い起され、ほのかは顔が火照ってくるのが判った。
 宏も当時を想い浮かべているのか、感慨深げに頷いている。

「あの時はガルフV(ファイブ)一機だけだったけど、今やほのかさんの会社は他社と共同出資して独立し、機体も二機体勢になったんだもんね。たった一年半でも情勢は大きく動いてるんだね」

 自分達の姿がハッキリと映る程に磨かれた機体を仰ぎ、宏がしみじみ呟く。
 そのどことなく憂いを帯びた口調に、ほのかはそれまでの浮かれた気分が一気に消え、眉を少し寄せた。
 夫が現在抱えている悩みに、心当りがあったのだ。

「宏、ひょっとしてまだ仕事に就けない事、気にしてんのか?」

 夫の勤めるバイト先が企業買収の憂き目に遭い、失職してから早数週間。
 宏は自分なりに求職活動をしているものの、漏れ聞いた話によると職種自体が減少し、拡大する雇用のミスマッチ現象と相まって希望に添う働き口がなかなか見つからないのだとか。

(まぁ、六年経った今もサラリーマンショックの余波が全世界的に続いてるからなぁ。阿倍ノミクス効果とて中小企業には全く及ばないし、むしろ悪影響すら与え始めてるし)

 夫が無職である事に自分は(他の妻達もだが)全く気にしていないし、優が手掛ける資本運用だけで現状の生活レベルが余裕で維持出来ている。
 加えて、奥さん各々の口座にも億単位の額がほぼ手付かずで残っている(この利息だけで生活出来るレベルにある)のだから、将来に亘っての金銭的な不安は誰も抱(いだ)いては無い。

(そもそも、宏の口座にしたって中堅サラリーマンの年収に匹敵する利息貰ってんだから、殊更焦って働かずとも好いと思うんだけどなぁ)

 しかし宏自身は夫として、そして男としてプー太郎、且つヒモ状態は善(よ)しとせず、いつまでも身の定まらない自分に対し苛立ちや焦りにも似た感情を持っているらしい。
 しかも夫の不運に乗じ、ある程度所得のある晶、夏穂、多恵子は自分の収入で宏を養おう――つまりは囲う――と冗談をかましつつも実は虎視眈々狙っている有様なのだ(自分もソノ気が無いとは言わないが)。

(奥さんネットワークで宏の現状、みんなに筒抜けなんだよなぁ。夫からすると、それが好いんだか悪いんだか……この場合は善(よ)しとしよう)

 ほのかが瞬き一回分で思い巡らせていると、果して。

「あはは。流石、ほのかさん。機長(キャプテン)だけあって読みが鋭いや。全くもってその通りだよ。自分が意図しない失職にショックが無いとは言切れないし、でもこのまま無職で居続けるのも好いとは思ってないからね」

(宏……だったら!)

 夫の、愛する男性(ひと)の何とも寂しげな表情に、ほのかの胸の中で秘めていた闘争心と母性本能(!?)が盛大に燃え上がる。
 宏の手を取ると胸元で抱き締め、尚も寂しげな瞳をじっと見つめた。
 しかし表情はあくまで明るく、今までの明るく楽しいノリを維持しながら話を進める。

「なら、もし宏の能力を見込んだ企業なり職場なり零細企業なりが今すぐ来てくれ、とスカウトに来たら、どーする?」

「……はい?」

 予想外の事を言われた所為か、宏は一瞬、ポカンとした表情になった。

「俺を……スカウト? あはは、そんな殊勝な企業、ある訳無いって。そもそも、いち企業がいきなり特定の個人をスカウト、ましてや俺なんかをヘッドハンティングする訳、無いって」

「いや、まぁ、それでも、だ。仮定の場合として気軽に応えてみ♪ 宏ならどーする? 求めに応じるかい?」

「仮定で好いなら応えるけど、あくまで俺の理想論だよ?」

「な~に、それで構わんよ♪」

 ニヤリと笑い、サムズアップとウィンクで応えるほのか。
 その実、心臓がバクバクして今にも口から飛び出そうなのは、おくびにも出さない。

「そうだね、まずは職場を見た上で決めるかな? やっぱ実際に働く現場を見ない事には判断出来無いし、どんな人がいて、どんな風に働いてるのか、雰囲気はどうだ、とか、肌で感じる事が大事だと思うんだ」

「なるほど。今やバイトの面接すら現場見学や時給付きで体験就業させる時代だもんな」

 昔と現在との違いを改めて感じさせる夫のお言葉に、ほのかは大いに共感する。
 昭和のひと頃のように、小さな募集広告ひとつで応募者が殺到した時代とはまるで違う。
 今や、応募者が働き口や上役を選び、企業は諸手を挙げて人を呼び込む時代になっているのだから。

(でもそれは入社させるまでの話で、一旦入社させちまえば企業による従業員へのパワハラやら個人差別やら賃金未払いやらが相変わらず横行してるけどなー。だからブラック企業なんて言葉が流行るんだよなぁ)

 心の中で小さく溜息を吐(つ)いたほのかは続けて尋ねた。

「なら、今まで宏が実際に見聞きしてきた中で、こんなトコで働いてみたい、って思った企業は無かったか?」

「そうだね……前にしてた倉庫での在庫管理は面白かったなー、ある程度の肉体労働って感じで。で、そのバイト仲間が言ってた中に、製薬会社での新薬の被験者バイトってのがあって、三食付き日給二万円だけど一ヶ月だか三ヶ月だか施設に缶詰、なんてのもあったな。稼ぎはメチャ好いけど、どんな副作用が出るか判らんしその補償も無し、ってんで諦めたね。あとは、どこぞの施設だかで、時給五千円でホルマリン漬けの死体洗い、なんてのも――」

「――って、おい! きな臭いモンばっかじゃねーかっ! 金に目が眩むんじゃねぇよ! もっとこう、穏やか……ってか、フツーの仕事はねぇのかよっ!」

 夫の言葉を強引に遮り、常軌を逸した(としか思えない)バイト見聞に、思わず身体中の毛が逆立ってしまった。

「とにかく一般社会での話だ! バイト情報誌や求人チラシに載ってるような、平穏平和な仕事だよっ!」

(これ以上、裏バイト(スプラッター的?)を聞いたら、夕メシが食えなくなっちまうじゃんっ!)

 自分で話題を振っておきながら禍(?)が自身に降り掛かるほのかだった。
 そんな妻の抱いた嫌悪感が判る筈も無い宏は、淡々と話を続ける。

「そうだね……。だったら、知り得る限りでは晶姉やほのかさんが勤めるこの会社は好さげだね。去年結婚式挙げる前から会長さんを始め、皆さん懇意にしてくれるし。特に、ここの雰囲気は和やかで好きだな」

 今さっきまで鳥肌が立っていたのに、自分の会社をベタ褒められた瞬間、ほのかの顔が一気に朱(あか)く染まる。
 しかも、別の意味で――狙っていた応えを得られた事で、心拍数が急上昇する。

「ほ、ホントか!? 嘘じゃねぇんだろうなっ!?」

(あぁ! 職場参観して貰って、ほんっとに好かった! これまでの苦労が報われるぜ~♪)

 思わず宏の手を握る手に力が籠もり、内心で目の幅涙(勿論、嬉し泣きだ)を流していると。

「嘘じゃ無いって、ホントだって。でもまぁ、何の取り柄も何の資格も無い俺に航空現場が勤まる訳無いけどね~」

「取り柄が無いだなんて卑下しなくても好いぞ。宏の好いトコなら、オレはいっくらでも知ってるからな!」

 ニコリと笑ってビシッ! とサムズアップを決めるも、当の本人は小さく笑うばかりだ(愛想笑い? 苦笑い? 冷笑!? に限り無く近い……)。
 そんな自信無さ気に肩を竦める宏に、ほのかは胸の高まりと顔の火照りを強引に抑えつつ、質問の内容を少し、変化させた。

「でも、ここは羽田の端っこにある、辺鄙な場所だぜ? 通勤にしたってモノレールの整備場駅は快速停まらんから各駅停車しか利用出来んし、その上、東京からは二十分近く掛かるし、コンビニだってチャリで五分走ったトコに小さく狭い店が一軒あるだけだし昼食事情もお世辞でも好いとは言えないし」

 わざと軽く、そして自分の勤め先をぞんざいに言うほのか。
 しかし、ここが肝心なのだ。
 宏の、嘘偽りの無い本音を聞き出すには今この時しか無いのだから。
 そんな、何やら真剣味を帯びるほのかに、宏は何を今更、とばかり笑って応えた。

「通勤事情は東京までモノレールが延伸したから、かなり楽になった、ってほのかさん自身が言ってたじゃん。だから大丈夫だよ。昼食事情ったって、ほのかさん、ここの近所に行き付けの弁当屋があるって自慢してたし、時々、家(うち)からも千恵姉の作った弁当、持ってくじゃん」

「あ、いゃ、まぁ、そう……だけど」

 何だか……いつの間にか自分が貶めた勤め先を夫が必死にフォローしてくれている図になっているのは……気の所為、だろうか。
 それでも、夫の、自分への職場への関心が高い事に希望を見出したほのかは心の中で自分に鞭を入れる。

「で、宏はオレが詰めるこの職場は悪くないって事で好いんだな? 深夜にまで及ぶ突発的な残業があったとしてもか?」

「へ? うん、まぁ、そうだね。職場としては悪くない……んじゃ無いかな? 何たって、ほのかさん自身が活き活き働いてるんだもん。悪い訳、無いじゃん♪ まぁ、時々職場の呑み会で変な言葉を覚えて来るのはアレだけど~。昨夜の都々逸、とか」

 最後のフレーズはともかく、天にも昇るような夫からの賛辞に、ほのかは頬が緩む気持ちを強引に押さえ込み、そして腹を決めた。

「宏、ちょっと来てくれ」

「え? ほのかさん?」

 何事かと目を見開く宏に、ほのかはここぞとばかりに手を引き、事務室へ取って返す。

(ここまで来たら、後は実行するのみだ! 大丈夫! 外堀は全て埋まってる!)

 腰まで届く波打つ金髪を揺らめかせ、普段の柔和な顔すら忘れたかのような機長の迫力に、さっきまで和気あいあいとしていた事務所内の空気が一気に緊張感に包まれ、静まり返ってゆく。
 所長と副所長は両手を握り締め、ほのか以上に顔を強張らせてもいる。

「ほのかさん? 急にどうしたの? みんな固唾を呑んでるし……ほのかさんもナニやら顔が引き攣ってるよ?」

 夫の問い掛けに、ほのかは自分の机の前でピタリと立ち止まる。
 握っていた手を放すと宏の正面にクルリと向き直り、そして声を張り上げた。

「まずは、これを見てくれ!」

 キャプテンの澄み切った声が雲ひとつ無い羽田の蒼空に溶け込んでゆく――。


                                            (つづく)


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【 お寄せ戴いた御意見・御感想 】

[ ]
このままだと、晶の逆鱗に触れて・・・・ってことになりそうだけど。
個人的には千歳を11番目に・・・(奥さんでサッカーチームが作れる)

しかし、仕事中にデートって、どうなんだろう? (別の言い方をすれば仕事をサボってって事になるんだけど)

[ お越し戴きありがとうございます♪ ]
↑さん
 コメントありがとうございます♪

 晶の動向も気になりますね。
 無事に済めば好いのですが。(笑)
 ほのかのポジティブシンキングにも脱帽です♪

 今後ともご愛顧下さいませ♪ m(_ _)m
 

[ 感想 ]
いろんな意味で大変な事になりそう(というより、ほぼ間違いなく大事件が・・・・!!!)

現状だと、宏は仕事してもしなくても【ヒモ】と変わんない感じがするのは気のせい?



[ ほのかガンバレ\(^o^)/ ]
晶に気付かれる前に既成事実を!!(笑)

[ 毎度ご贔屓ありがとうございます♪ ]
アムロ・レイさん
 コメントありがとうございます♪

 今後、他の奥さん達もどう動くのか……作者にも判りません! (オイッ)
 宏も男としての意地があるのでしょうね。

 いつも応援ありがとうございます♪ m(_ _)m

 -----------------------------------------------------------------

mさん
 コメントありがとうございます♪

 ほのかと晶のバトル(?)も気になりますね。
 宏もどう対処するのか見ものです。(笑)

 いつもお越し戴きありがとうございます♪ m(_ _)m
 

[ ]
ほのかさん
必死!
でも可愛いね
晶との修羅場になりそうgkbr((((;゜Д゜)))

[ 毎度ご愛顧ありがとうございます♪ ]
海人さん
 コメントありがとうございます♪

 ジェット機を操るほのかとて、元は立派なレディですから随所に可愛らしさが滲んでますね♪
 そんなほのかと宏の今後にご期待下さいませ♪

 いつもお越し戴きありがとうございます♪ m(_ _)m
 

[ モノレールが延長!? ]
新橋~東京間にかなり苦しいものがありますが。
火事が起きると新幹線と一緒に燃えちゃいますよ!?

妄想ですから、ついでに『ゆりかもめ』の豊洲~東京間もつなげちゃいましょう。
(ホントにオリンピックやるんですかね、これ以上人が増えるの嫌だなぁ)



[ いつもご贔屓ありがとうございます♪ ]
ぺんぎんさん
 コメントありがとうございます♪

 「ゆりかもめ」も、拙小説の中では新木場まで延伸させたいですね。(笑)
 オリンピック開催で賑わうのも好いですが、その分、東北(福島・宮城・岩手)の復興が遅れるのは勘弁願いたいものです。(^_^;)

 毎度お越し戴きありがとうございます♪ m(_ _)m
 

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