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恋模様(3) 恋模様(3) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
『♪~ハッピバーズディ トゥーユー~、ハッピバーズディ トゥーユー……~♪』

 リビングの床に車座になった宏達によるバースデイソングが厳かに流れた後。

「晶姉、優姉、誕生日おめでとう!」

「「「「「「「「おめでとう!」」」」」」」」

 宏の音頭で、ほのか、真奈美、千恵、若菜、多恵子、夏穂、飛鳥、美優樹が唱和し、一斉にクラッカーの紐を引く。

 ――パンッ! パパンッ! パパパパンッ!――。

 華やかな色取り取りの紙テープが一斉に宙を舞い、上座に座る晶と優の二人に降り注いでゆく。
 お祝いの言葉と鳴り止まぬ拍手が溢れる中、頬を指先で掻いた晶は、ひょいと肩を竦めた。

「なんか、この歳になると照れるわね」

「……言い訳はいいから、早くひと言喋る。みんな、お姉ちゃんの言葉を待ってる」

「う゛っ! 優は、こーゆー席でもノリが悪いわね。……こほん」

 視線が集まり、リビングに訪れた静寂を、晶の澄んだ声が破った。

「……………………ありがとう」

「……………………」

「――って、それだけかいっ!」

 再び訪れた一瞬の静寂を、今度は柳眉を逆立てたほのかの怒濤のツっ込みが引き裂いた。

「だって~、優が『ひと言』って言うから――」

「ホントにひと言だけしゃべってどーする!」

「あはははははっ」

 ほのかの連射ツっ込みと、それを華麗に躱す晶に、リビングはこれ以上無い笑い声に包まれた。

「ま、掴みはオッケーね♪」

 ワイングラスを手に横座りしたまま莞爾と笑うのは、今日の主役のひとりであり、宏の従姉にして優の双子の姉でもある晶だ。
 女性陣――妻十人の頂点に立ち、夫である宏を表立って支える筆頭妻であり、宏の童貞(はじめて)を己の処女膣で迎えた剛の者(?)である。
 緩いウェーブの掛かった黒髪は腰まで届き、切れ長の澄んだ瞳と鼻筋の通った小顔はモデル並みの美しさを誇り、身長百七十センチ、上から八十五、五十八、八十六と均整の取れたボディと、凛とした空気を纏いどこにいても目立つ圧倒的な存在感は見る者全てを惹き付ける美女でもある。

「……お姉ちゃん、もっとアドリブに強くならないと。それに、猫被ってどーする。普段通り弾ければ好いのに」

 チューハイレモンをジョッキで呷りつつ姉に諭しているのは、もうひとりの主役にして常にクールな表情を崩さず、淡々とした話し方が特徴的な優だ。
 株の売買やFX(外国為替証拠金取引)に精通し、宏の貯金を僅か数年で億単位に増やし、冷静な読みと的確な判断で屋敷の金庫を常に潤わせている凄腕のネットトレーダーでもある。
 シャギーにしたショートヘアと姉に似た目鼻立ちの好さに、身長百六十五センチ、上から七十七、五十七、八十五と姉にも引けを取らないスタイルの好さを誇り、屋敷随一のスレンダー美人と謳われている。

「無茶言わないで。あたしは漫才師じゃ無いんだからアドリブなんて利かないわよ。第一、猫なんて被って無いし!」

「……ヒロクンを相手にすると、いつも本性剥き出しにして襲い掛かってるクセに」

「!! あ、アンタねぇ~~っ!! んなコト、笑いながら開けっ広げに言うんじゃ無いわよっ!」

 笑い渦巻く中、羞恥で顔が火照り腰を浮かせた所で、目の前に花束がズイッ、と差し出された。

「晶姉、優姉、これは俺からのプレゼント。今回は純粋に花を贈って見ました~」

 照れ臭そうにおどけた宏が、目にも鮮やかなチューリップの花束をプレゼントしてくれたのだ。

(うわっ、ちゃんと二十六本あるし! 流石、ヒロ。心憎い演出だわ♪ うんうん、立派に育ったわねぇ♥)

 などと、花束を眺めながらつくづく感心していたら。

「……ヒロクン、ありがとう。大事に……大事に飾らせて貰うね」

 隣で座る優も花束をそっと抱き締め、感涙にむせんでいた。
 この時ばかりはクールな表情は消え失せ、頬を朱(あか)く染めて泣き笑いの顔になっている。

「ヒロ、ありがとうっ。ホント、嬉しいわ♥ 会社のデスクにも飾らせて貰うわね!」

「エヘヘ♪ そうして悦んでくれると、俺も贈った甲斐があったよ」

「ヒロ……♥」

(あぁ……その屈託の無い、爽やかな笑顔は反則よ! ったくぅ、年上の威厳が崩れちゃうじゃないっ!)

 嘘偽りの無い言葉を無条件で受け入れてくれる心地好さに、こちらも感極まってしまう。
 と、妹と二人して愛される幸せを噛み締めていたら。

「それじゃ、オレ達からもプレゼントだ!」

 ほのかを先頭に、みんなからのプレゼント攻勢が始まった。

「みんな、ありがとう! 大事にするわね♪」

 優に小一時間は盛り上がっただろうか、ようやく一段落付いた所で宏から贈られたチューリップに手を伸ばす。
 そして花束に半ば顔を埋(うず)めて深呼吸すると、頭の中にとある出来事が見る間に甦って来た。

(この甘い蜜の香り、今でも覚えてる。あれは……あたしの忘れられない、甘酸っぱい青春のひとコマだった)

「ふふ♪ 時は移れど、花の香りは少しも変わらない。あの時と全く同じなのね」

「はい? あの時……って何です? 折角ですから是非、教えて下さい」

 独り言の声量が大きかったのか、唐揚げを美味しそうに頬張っていた真奈美が聞き付け、強く促して来た。
 他の奥さん達からの煌めく視線も集まった事もあり、晶は小さく微笑むとワインで口を湿らせ、遙か昔の出来事を語り出した。


     ☆     ☆     ☆


「あれは……あたしが小学四年になった、十歳の誕生日を迎えた日の事よ」

 優が小さく目を見開き、「あの時の事だね」、とアイコンタクトで伝えて来る。
 晶と優の美女姉妹(しまい)は目線で会話出来るのだ。
 と、ここでビールを大ジョッキで呷っていた、ほのかの茶々が入った。

「となると、半世紀前の話か。随分と古い時代――って、いってぇなぁ! ぶつ事ねぇだろっ!」

「誰が五十年前だと言ったっ! あたしゃ、まだ二十歳(はたち)そこそこになったばっかりだ!」

「……二十歳(はたち)……そこそこ? お姉ちゃん。流石にそれは無理がある」

 頭を抱えた涙目のほのかに、グーパンチを翳して瞳を三角にした晶と瞳を眇めてポツリと呟いた優の同級生トリオ(大学の四年間ずっと一緒だったのだ)に一堂、大爆笑する。
 殊に、ほのかと晶は仕事上でも冗談を言い合うだけあって、ボケ・ツっ込みのタイミングはピッタリなのだ。

「優も! そこはスルーする場所でしょっ!」

 横を向く妹を軽く睨んだ後、小さく咳払いした晶は気を取り直して話を続ける。

「その日は土曜日で、学校が終わってからヒロの家(うち)であたし達の誕生日会を開いてくれたの。その時の面子はヒロと千恵ちゃん若菜ちゃんの五人だったわ」

 話しているうちに自分が十歳の女の子に戻ったかの如く、頭の中に当時の情景が甦って来る。
 すると、車座になってこちらを見ている千恵と若菜、そして宏までもが当時の幼い姿に見えるから不思議だ。

「色々な御馳走の中に、どれ位の大きさだったかな……子供の手よりもずっと大きくて蝋燭が十本ずつ立ったホールケーキがふたつ、用意されてたの。表面には『誕生日おめでとう』って名前の書かれた板チョコが載ってたのを、今でもはっきり覚えてるわ」

 優も盛んに首を縦に振っているのを見ると、しっかり当時を覚えているようだ。

「今回みたく千恵ちゃん達からお祝いして貰って、その時、ヒロから初めて誕生日プレゼントを貰ったの。当時のヒロは幼稚園の年長組で、六歳になる年だったから……実際は五歳と七ヶ月の時よ」

「五歳半! 随分とおませさんだったのですね。ふふ、その時の宏さんにお目に掛かりたかったですわ。おほほ♪」

 終始笑顔の多恵子が照れて俯いている宏を見つめると、場の空気がより温かくなる。

「それで、プレゼントは何を貰ったのですか? 宜しければ教えて戴けませんか? すっごく興味あります!」

 美優樹の煌めく瞳(好奇心がありありだ)に、晶はニコリと笑って即答する。

「今日と同じ、チューリップの花束を貰ったの。それもちゃんと歳の数と同じ、十本ずつ入った満開のチューリップだったわ。目にも鮮やかな真っ赤な花びらとくすみひとつ無い黄色の花びらの色合いは、今でも鮮明に覚えてる」

 小さく、だけどハッキリと頷いている優自身も、当時にトリップしているらしい。

「ひゅ~ひゅ~っ! 宏クンも隅に置けないわねぇ。もうジゴロの素質、出してる」

 既に酔っているのか、宏の首に手を回した赤ら顔の夏穂(片手にはしっかりとビアジョッキが握られている)に、リビングに笑いの渦と宏への冷やかしが巻き起こる。

「でもね~、そのプレゼントが曰く付き、だったのよね~」

「?」

 住人達の脳内に疑問符が浮かんだらしく、一斉に首を傾げた。
 贈った宏本人も首を捻っている所を見ると、どうやら覚えて無いらしい。

「そのチューリップ、ヒロが幼稚園の校外学習でクラスのみんなと公園に植えたものだったんだけど、その花壇から無断で拝借……と言うか、勝手に摘んで来たシロモノだったのよ。ヒロはそれを自慢気に言うから、開いた口が塞がらなかったわ。どうやら自分で植えたモノは自分のモノ、って意識だったみたい」

「あ~あ~あ~」

 一堂、納得したように苦笑する声を漏らし、一斉に首を巡らせ犯人を見る。

「え~~っと、俺、全然記憶に無い――」

 好奇、失笑、同情等々の視線に屈して尻窄みになる宏の言葉に、優しく微笑んだ優が助け船を出した。

「……記憶に無くて当然。当時のヒロクンはまだ就学前。記憶が定かで無いのが当たり前。むしろ、リアルに覚えていたら奇跡……ううん、ボクは嬉しい。それだけヒロクンとボクとの共通の記憶が拡がるのだから」

 リビングに、何度目かの温かな笑いが満ちる。

「で、どうなったんだっけ~? 私、ちっとも覚えて無い~」

「あんたは! そんな大事なイベント、もう忘れたんかいっ! って、あたいも記憶に無い……」

 当時、その場にいた若菜も首を捻り、千恵も申し訳無さそうに首を竦める。

「まぁ、千恵ちゃんと若菜ちゃんは小学二年だったし、祝ってくれた側だからね。覚えて無くて当然よ」

 慰めるように言うと、千恵はペコペコ頭を下げて恐縮し、若菜は、さもありなん、とばかり胸を張り、千恵にド突かれている。

「あたしは……今でもハッキリ覚えてる。何たって、ヒロから初めて貰ったプレゼントだったからね。すっごく嬉しくて……胸が一杯になって……忘れる訳無いし、絶対に忘れたく無い想い出よ」

 強い言葉に、静寂が訪れる。
 ただ、壁時計の秒針の巡る音だけが妙に大きくリビングに響いていた。

「あたしは、ヒロが無断で公園のチューリップを摘んだと聞いて、すぐに叱ったわ。優は『知らんフリしていればバレない』って言ってたようだったけど」

「……記憶にゴザイマセン」

「優、言葉が棒読みになってんぞ! ふふ、ちゃんと覚えてる、ってか。……チェ、羨ましいヤツ等だなぁ」

 真っ赤になる優に、切れ長の碧眼を細めた、ほのかの優しいツっ込み。
 そんな二人に微笑んだ晶はワインをひと口含み、話を続ける。

「あたしだって、内心では泣きたい位、嬉しかった。可愛い従弟からの、初めてのプレゼントだもの! 嬉しく無い訳は無かった。実際、貰った直後は嬉し涙を浮かべてたわ。でも……」

 胸に抱いたチューリップの束をそっと撫で、当時の――幼い自分に戻ったかのように語る晶。

「これは『いけない事』だとも判った。みんなが使う公園の、みんなで植えた花なのよ。いくら自分で植えたものでも、公共の場に植えた以上、ヒロが……個人が勝手に摘んで好いものでは無い、って、子供ながらに判ってた」

 集う面々の口数が一気に減り、自分の言葉が妙に大きく、リビングに響いてゆく。

「でも、ここでヒロを叱って、嫌われたらどうしよう、二度と口を利いてくれなかったらどうしよう、って言う恐怖心も沸き起こってた。……そう、ヒロから嫌われるのが、あたしの一番の恐怖だったから」

「……でも、お姉ちゃんは自分の感情よりも、ヒロクンの将来を採った」

「そんな偉そうなモンじゃ無いわよ。ただ、ヒロには、人としての道を踏み外して欲しく無かった。ヒロを正しく教え導くのが、従姉としての、あたしの役目だと、ヒロが生まれた時から常に考えていたから」

「そ、それじゃ……」

 誰かの、ゴクリと息を呑む音が大きく響く。

「そう。あたしは心を鬼にしてヒロを叱った。泣き叫ぶヒロ相手に、あんなに激しく叱ったのは初めてだったわ」

 みんな、神妙な顔で宏と晶を交互に見る。
 もしかすると、額に角を生やして叱る晶と、わんわんと泣く宏をイメージしているのかもしれない。

「ヒロからすれば、喜んで貰えると思っていたのに滅茶苦茶叱られたんだから、訳も判らず泣き喚くしかないわよね。自分で植えた花を自分が使って何が悪いのか、って。でも、あたしは……ヒロの行為は人として間違っていると、判り易く何度も諭した」

「……千恵さんと若菜さんも、恐怖で泣き震え怯えていた」

 優の解説は、時には姉を陥れるハメになり、しかもみんな即・納得するから腹立たしい。
 でも、今は話の腰を折らずに先に進める。

「あたしはすぐに誕生日会を中断し、貰ったチューリップを持ってヒロと公園の管理事務所に謝りに行ったの」

「そ、その当時から責任感に溢れてたんですね~。流石、筆頭妻となり得るだけはあります!」

 瞳を煌めかせた飛鳥が、変な所で感心している。

「そこでヒロと一緒に謝ったわ。事務所のおじさん達にチューリップの束を二つ返して、言い訳せずに何度も『ごめんなさい』、『勝手に花を摘んでごめんなさい』って」

「……お姉ちゃんはヒロクンの代わりに謝ってた。お姉ちゃん自身は何も悪くないけど、ヒロクンのした事に何度も頭を下げてた。勿論、ボクも一緒に謝った。ヒロクンは……泣いてばかりだった」

「……………………」

 優の解説に、リビングは水を打ったようになる。

「おじさん達に摘んだ理由を聞かれ、正直に話したわ。そしたら、笑って赦してくれたの。摘み取ったチューリップも、そのままあたし達にくれたの。『誕生日おめでとう』って言葉と共に、ね」

「……元々、植えた半分は球根用のチューリップで開花後すぐに花を摘む予定だった、だから気にしなくて好い、とも言ってた。ただ、ヒロクンが摘んだのは観賞用の方だったけどね」

「ヒロの家に戻ってから誕生日会をやり直そうとしたけど、結構、刻が経ってたのね。幼稚園にも謝りに行ったから、すっかり陽も落ちてたわ。ヒロも泣き疲れたのか、そのまま眠ってしまって……御馳走やケーキも食べずにお開きになったわ。あたし達は最初からヒロの家に泊まるつもりだったから、あたしと優は軽く夕食を摂って、そのままヒロと同じ部屋で寝たの。ヒロを真ん中に、川の字でね」

 みんな、目の前の御馳走やアルコールに目もくれず、晶の昔話に聞き入っている。
 当事者の宏でさえ、記憶の穴を埋めようとしているのか、すぐ隣にいるにも係わらず上体が寄っている。

「でも、あたしは眠れなかった。ヒロを酷く叱った事で……恐くて寝られなかった。月明かりに照らされたヒロの顔を、隣からずっと見てるだけだった」

「……………………」

「あたしは、朝になるのが恐かった。厳しく叱った事で完全にヒロに嫌われたと思ったから。朝になって、ヒロから無視されたり一歩引いた態度を取られたりするのが……凄く恐かった。思っただけで胸が痛い程、締め付けられたわ」

「……お姉ちゃんはこの時、布団の中で一晩中震えてた。ボクは……何も出来無い自分が情け無かった。お姉ちゃんを慰めるどころか、声を掛ける事すら出来無かった」

「優は悪くない。それでもあたしは……ヒロには人として正しく育って欲しかった。それが叶うのなら、あたしひとり嫌われても好い、とさえ思った。まぁ、そう思う事で嫌われる恐怖を誤魔化そうとしていた……のかもしれないわね」

「……お姉ちゃん、心の中で泣いていた。ヒロクンから見放される哀しみを、ボクも手に取るように判った。お姉ちゃんはヒロクンから嫌われる位なら人の道を踏み外しても好い、とも思ってた。それはボクも同じだった」

「あたしは常日頃から従姉として、陽の当たる場所にヒロを導く責任がある、と思ってた。だから仕舞いには……たとえ嫌われ忘れ去られる位なら、恐い親戚のお姉さんとしていつまでも記憶に残ってくれた方が好い、とまで思った。そんな事を思いつつ、ヒロの寝顔をずっと見てた」

「……………………」

「ヒロったら、泣いたまま寝ちゃったから顔がボロボロになってたわ。涙と涎と鼻水で。それが月明かりで光ってて……見てたら面白くて少しは癒されたわ」

 もはや、茶化す者は誰もいない。
 ただ、晶の言葉を聞き漏らすまいと、息を呑んで耳を傾けるだけだ。

「あたし、ここで気付いたの。まだヒロに誕生日のお礼を言って無い、って」

 晶は、当時を再現するかのように宏へ顔を向ける。

「だからって、ぐっすり寝入っているヒロを起こすのは可哀想だったから……おでこにそっと、キス、したの。『今日は誕生日を祝ってくれてありがとう、プレゼント貰ってとても嬉しかったわ♥』って。そして『厳しく叱ってゴメンね。ヒロには正しく育って欲しかったの』、って気持ちも込めて、ね。その時、枕元に置いてあったチューリップの香りが、今日貰ったのと同じだった――って訳」

 目元を赤らめた晶は宏をじっと見つめ、ニコリと微笑んだ。

「それがあたしの、正真正銘、ヒロに捧げた真のファーストキスよ。そして、ヒロはこうして立派な大人になってくれた」

 リビングには、涙をそっと拭う幾人かの美女と小さく鼻を啜る音がいつまでも響いていた――。


     ☆     ☆     ☆


「ふぅ。晶さんと宏さんに、あんな情熱的な出来事があったなんて……………………羨ましいな」

 ツインテールを解いた栗色の髪をアップに纏め、広い湯船に鼻の下まで潜ってポツリと零すのは美優樹だ。
 晶と優の誕生日会を終え、リビングをみんなで片付けた後の、就寝前の入浴中なのだ。
 そこへ、こちらも髪をアップに纏めた晶が前も隠さず現われた。

「お邪魔するわね。で、何が羨ましいって?」

「晶さん! いえ、羨ましいとか……あ、いえ、ともかく、どうぞどうぞ」

 慌てて腰を浮かせ、湯船を示す美優樹の仕草がおかしかったのか晶はクスリと笑い、何度も掛け湯をしてから美優樹の正面に身を沈めた。

「ふぅ~、好いお湯ね。さっきまでのバカ騒ぎが嘘のようだわ。ま、何かあったら聞くわよ。あたしでお風呂最後だから、邪魔は入らないし」

「ご配慮、恐れ入ります」

「好いって好いって♪ 同じ奥さん同士なんだから頭下げなくて好いし、堅っ苦しい口上や遠慮も無用よ」

 見た目の高貴さとは裏腹に気さくな人柄に何度も触れていた事もあり、美優樹は心の底にあるわだかまった部分が自然と口を突いて出ていた。

「美優樹、さっきの晶さんの話を聞いて羨ましかったんです。晶さんは宏さんが生まれてからずっと歴史を共にしていたんだなぁ、それに比べ美優樹と宏さんの歴史は一瞬だなぁ、って」

「そっか、美優樹ちゃんも、か。同じ想いを、ほのかと真奈美も抱えてたわ。あの二人は、あたし達の中でヒロとの出逢いが一番遅かったからね」

「みたいですね。チラッと聞いた事があります」

「特にほのかなんて、大学出てから二年間アメリカで仕事に就いてたから、『オレだけ宏との繋がりが短い~』って泣きそうな顔してたわ」

「あの、それでどうなったんですか?」

「ヒロが『だったらこれから一緒に想い出をたくさん作って行こう』って慰めて、二人共、そのひと言で機嫌治ったわ」

「宏さんらしいですね♥ でも、やっぱり晶さんの、従姉としての繋がりは羨ましいです」

「あはは、世の中に年上の従姉なんて、ごまんといるわ。それに、あたしとヒロがそうなったのは単なる偶然よ」

「それでも、です。美優樹は、お姉ちゃんの事件が切っ掛けで宏さんと出逢いました。でもそれは、あくまで『後輩の妹』、若しくは『後輩の家族』、って言う立場でした。まぁ、これはお母さんも似たようなものですが」

 晶からすれば九つも歳下の後輩になるが、じっと耳を傾けてくれるのが美優樹には嬉しかった。
 それは、高校生が小 学生の戯言をきちんと聞くようなものだからだ。

「晶さんと宏さんは日常的に接する機会がありました。でも美優樹には何もありませんでした。ただただ、宏さんが家(うち)に来た時にだけ、リビングでお母さんとお姉ちゃんに話している姿を隣の部屋から黙って見つめるだけでした」

「う~ん。まぁ、その時の美優樹ちゃんは十歳だっけ? 小四の児 童が人権問題を語るには少し……かなり難しいわよ。実際、一緒したくても雰囲気的に出来無かった、って感じだったんじゃない?」

「そうです。当時の美優樹は完全に子供でした。そして宏さんは十五歳。子供の五歳差は大人の十歳差以上に感じますから、お近付きになりたくてもなれなかった、と言う部分もありました」

「あはは、確かにそうね。小学四年生にとって、中学三年生はかなり大人に見えるものね」

「出逢った当初は、遥か雲の上の男性(ひと)、って感じでした。中学三年生って、すっごい大人なんだな、って」

「うんうん」

「でも、何度も……毎日のように宏さんが家(うち)に来て下さって、お姉ちゃんとお母さんの宏さんを見る目が段々と変化していくのが判りました。何て言うか……頼ってる、みたいな感じで」

「まぁ、中三の男子が権力者を敵に回して大一番仕掛けたんだから、下手な大人より頼り甲斐はあるわね」

「だからなのか、宏さんはお姉ちゃんに優しくしてくれる男性(ひと)、お姉ちゃんとお母さんが信頼を寄せる男性(ひと)、って言う意識から、いつしか美優樹の初恋の男性(ひと)になってて……まさしく、高嶺の花になってました」

「高嶺の花……か。初恋が高嶺の花だと、ちょっと切ないわね」

「そうですね。でも、何度か顔を合わせているうちに、『ゴスロリドレス、可愛いよ』って言ってくれるようになったんです。『そのヘッドドレス、気品があって好いね』とか『今日も似合ってるよ』とか言って貰えて……美優樹、天にも昇る程、嬉しかった。お姉ちゃんとは関係無く、初めて美優樹だけに向けられた言葉でしたから!」

「あ、そうか。元々、飛鳥ちゃんの事でヒロが自宅訪問してたんだものね」

「そうなんです! 美優樹は小さい頃から可愛い服が好きだったので、それで一気にゴスロリファッションに目覚めたんです。今思うと、ひとえに宏さんから褒めて貰いたい――美優樹を見て貰いたい一心だったんでしょうね」

「いつの時代も、女の子は好きな男性(ひと)から見られ、褒められて育つ生き物なのよね~」

 晶が同感とばかり、クスクスと笑う。

「でも、憧れているままでは宏さんの隣はおろか、お姉ちゃんの隣にも立てないって判ったんです。お姉ちゃんは中学と高校で一年間といえど、宏さんと学舎を共にしました。でも美優樹にはそれすら出来ませんでした」

「年齢差だけは、誰にもどうしようも無いものね」

「だから目一杯勉強してお姉ちゃんと同じ高校、そして大学に入れば少しは宏さんとの社会的な距離も縮まり再会出来る――。そう考えて飛び級を繰り返しました。でも、日本の公立学校は無駄や枷が多過ぎて……閉口しました」

「中学で一年、高校で二年、飛んだのよね」

「はい。でもその甲斐あってお姉ちゃんと一緒に大学に入り、宏さんと同じ東京に行く事が出来たんです!」

 話しているうちに興奮したのか、それとも単に長湯で逆上せたのか。
 いつも以上に鼓動が早まった美優樹はゆっくり立ち上がると浴槽用のカランから水を出して顔を洗い、湯船の縁に腰を下ろす。
 すると頭の中が元通りに冴え、昂ぶっていた気分も穏やかになった。
 晶も同じように水で顔を洗い、目線の高さを合わせるかのように並んで腰掛けた。

(晶さん、いつ見ても綺麗。普段から身体のケア、しっかりしてるって言ってたものね)

 浴室に湯気が立ち込める中、美優樹の目には美乳の頂で揺れる桜色の突起や無毛の深い縦筋を露わにした美女が白いベールを纏っているかのように映っていた。

(って、見惚れてる場合じゃ無かった)

 暫し魅入った美優樹だったが、すぐに意識を元に戻す。

「美優樹のやり方は間違って無かった。寮の件は偶然でしたが、それが切っ掛けで宏さんと同居出来て……そして単なる後輩の妹だったのが、今では奥さんにまで昇格したんです! これが幸運と言わずして何と言うんでしょう!」

「幸運……か。あたしもヒロの従姉じゃ無かったら、今頃どうなってたのかしらね」

 一瞬、遠い目をする晶に、美優樹は小さく首を傾げた。
 普段の凛とした態度からは想像も出来無い、こんなにも弱々しい表情と台詞は初めてだ。

「晶……さん?」

(これって……大学の友達が進展しない恋の悩みを打ち明けた時と同じ顔だわ。いつも凛として毅然とした晶さんと言えど、実際は悩みや憂いもある、美優樹達と同じ普通の女性……ってコトよね)

 美優樹の中で晶に対する意識が大きく変わり、より身近に感じた瞬間となった。


     ☆     ☆     ☆


 晶はつい漏らしてしまった自分の弱気な発言に、慌てたように表情を笑顔に戻した。

「あ、いや、気にしないで。ネガティブ思考はあたしには似合わないわ。……うふふ♪ それにしても美優樹ちゃんの隠された一面を垣間見る事が出来て好かったわ」

「あ、いえ、こちらこそ今日は貴重なお話を聞かせて戴きました。晶さんは宏さんの為に強くなれる女性だ、って言うのが判りました。それに……」

 顔をやや伏せた美優樹が小さく息を吐(つ)きながら、頼れるお姉様に心情を吐露する。

「先程のプレゼント云々のお話しは晶さんが小四の時でした。美優樹が宏さんと出逢ったのも小四でしたので……同じ小四でも随分と違うんだなぁ、晶さんは幼い頃から立派だったんだなぁ、と思いまして」

「あ……そうなるのか。でも、あたしは立派なんかじゃ無いわ。単に、自分の想いをヒロに押し付けただけよ」

「いえ! それは違います。晶さんは立派に宏さんを導いたのですから誇っても好いです! 美優樹なんかよりずっと大人です! 亀の甲より年の功です!」

「あはは! それは買い被りよ。あたしは強くなんか無い。ヒロから嫌われたり忘れ去られたりする事に今でも怯える、臆病(チキン)な女よ。それに年の功って言うなら夏穂先生や多恵子さんの方がずっと経験値が高いでしょ?」

 二人の脳内に、夏穂と多恵子の姿が同時に浮かぶ。

「それは……年齢から言えば、確かに夏穂お姉さんとお母さんは三十路を優に越えてます。が、社会的経験値としてはどうなんでしょう? 外資系企業で部長職に就いている晶さんより優れているとは到底思えませんが」

「あら、夏穂先生だって何百人もの生徒を卒業させてるでしょ? 多恵子さんだって単身で二人の子供を立派に育て上げた実績があるんだし」

「お母さんには感謝しています。でも、あの外見は反則です。一緒に歩くと美優樹の妹と間違えられるんですよっ!? それをまた鼻を高くして話すし! 夏穂お姉さんは……あのスチャラカ振りは目を覆いたくなります。今の教え子さん達や歴代の卒業生が可哀想です。哀れです。お気の毒様です」

「おいおい、あたしやヒロもその卒業生なんだけど……まぁ、言わんとする所は判るわ」

 九つも歳下の後輩に同情され、ヒョイと肩を竦めて思いっ切り苦笑する晶。
 これでは、どちらが年上なのか判らない。

「それにしても、夏穂先生だけじゃ無く、自分の母親にもキビシイ事、言うわね。普段は聞かないから新鮮だわ」

「うふふ♪ お母さん、見た目がアレで本人も自覚してますから、結構、周りの反応を楽しんでいるんです。今度、宏さんと一緒に愛し合う事があったら、色々と試してみると意外な一面が見られて面白いかもしれません。特にランドセルを背負わせ白タイツ穿かせてエッチするとお互いに萌えるかもしれませんよ♪」

「あ、あははは……そ、それは流石にやり過ぎのような気が。第一、ヒロにヘンな属性、付いちゃいそうで恐いわっ」

 屋敷最年少にして妻達の中で最も知能指数が高いであろう美優樹のバイタリティに、冷や汗をドバドバ流しつつも好感を覚える晶だった――。


     ☆     ☆     ☆


「晶姉、誕生日おめでと……うっ!」

「はぅっ♥」

「美優樹ちゃん、今日も可愛い……よっ!」

「ひゃん♥」

 言葉の最後で腰を突き上げ、ペニスを膣奥(おく)に叩き付けて甲高い可愛い声を上げさせているのは宏だ。
 ベッド中央に晶と美優樹をM字開脚で並べ、正常位で交互に合体中だった。

「……ボクはパス。ニューヨークの株式市場の値動きが怪しくなってるからリアルタイムでチェックしておきたい。ヒロクン、今夜はお姉ちゃんの二十六歳となった完熟ボディを存分に堪能すると好い。で、ボクの代わりに……」

 姉を持ち上げたのか揶揄したのかは微妙~だが、優はバースディエッチを美優樹に譲っていた。
 どうやら、姉と風呂場で長々と話していた事で何かを察したらしい。
 故に、宏のベッドには栗色のツインテールを解いた美優樹(黒タイツのみ着用)と本日の主役でウハウハの晶(白のローラーズショーツのみ着用)のあられもない姿があった。

「晶姉、愛してるよ♥」

「ヒロ♥ ヒロッ♥ あん♥ あんっ♥ はぁん♥ 膣内射精(なかだし)されたヒロの精液が……あたしを狂わせる~~♥」

 クロッチを横にずらし、手足を絡ませ密着したままディープキスを繰り返し、宏は蕩けた膣肉をフルストロークで万遍無く抉ってゆく。
 上と下の口で繋がりながら宏は熱い精をたっぷりと注ぎ、晶もまた何度目かの潮を噴きながら宏に縋り付く。

「美優樹ちゃん、好きだっ、愛してるっ♥」

「宏さん♥ 宏さんっ♥ んっ♥ んぁ♥ ん~~~っ♥ 宏さんが……美優樹とひとつになってますぅ~~~♥」

 上背のある美優樹は正常位から対面座位に体位を変えて貫き、小指の先程に勃起した乳首を口に含みながら若々しい膣を撹拌する。
 張りのある微乳に頬を擦り付け、無毛の淫裂に己の勃起肉が突き刺さっている様を見ながらの抽挿に、宏のボルテージは上がりっ放しとなっていた。
 美優樹もまた、深々と刺さった肉棒に本気汁を纏わり付かせ、亀頭に子宮を何度も突かれる度に連続したアクメを迎えていた。

「二人共、愛してるよ! 一生一緒だからねっ♥」

「「あっ♥ あっ♥ あっ♥ はぁ~~~んっ♥」」

 子宮に熱い精液を何度も注がれた晶と美優樹は同時に力尽き、ベッドへと沈み込む。
 翳りの無い亀裂から大量の白濁液を溢れさせた二人は手を繋ぎ、互いに抱き合うように深い眠りへと落ちてゆく。

(こうして見てると、まるで本当の姉妹のようだな。二人して幸せそうに微笑んじゃって……可愛いなぁ♥)

 全身に汗を浮かべ、肩で息をする宏は二人の妖艶な肢体を眺めつつ、思いっ切り鼻の下を伸ばしていた。

「筆頭妻の晶姉と屋敷最年少妻の美優樹ちゃん、か。このコンビは今後も好い味、出していくんだろうな~」

 寄り添い、硬く握りあった手に己の手を重ねた宏は、二人の絆がより深まっているのだと確信した。


                                            (つづく)


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【 お寄せ戴いた御意見・御感想 】

[ 続きが待ち遠しいです ]
いちも楽しく読ませて貰ってます
やっばり、一人一人に歴史が有るっていいですね
過去が有るからこそ現在が引立ちますよね。
ヒロ君のハーレムは昌姉さんのおかげかな?
次回作も首を長くしてお待ちしてます~

いつも拙い感想で申し訳ありません

[ 毎度お越し戴きありがとうございます♪ ]
草薙さん
 コメントありがとうございます♪
 
 今回もお楽しみ戴けたようで何よりです。
 引き続き宏とヒロイン達の織りなす物語にご期待下さい♪ 

 毎回コメントをお寄せ戴き、誠にありがとうございます♪ m(_ _)m

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