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コンチェルト~飛鳥(1) コンチェルト~飛鳥(1) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
 夏穂が宏と結ばれた翌日の土曜日。

「ねぇ、夏穂姉さん? 昨日からやたらとテンション高いけど、何かあった? 給料でも上がったの?」

 昨夜からず~っと気分ルンルンな叔母に、飛鳥は昼食の席で首を傾げつつ尋ねた。
 何しろ事ある毎に締まりのない蕩けきった笑顔を浮かべ、今日の午前中など鼻歌交じりに布団を干したりスキップで掃除したりしていたのだ。
 今もチャーハンを頬張りつつ、目元がだらしなく垂れ下がっている。
 そんな困惑気味の飛鳥に向かい、幸せの絶頂に駆け上って浮かれまくっている夏穂は余りの嬉しさに、つい口を割ってしまった。

「でへへへ~♪ ウチ、宏クンとエッチしちゃった♥」


     ☆     ☆     ☆


 夏穂の仰天告白(自白?)に、屋敷は蜂の巣を突(つつ)いたかのような騒ぎとなった。

「ほ~~~、下宿した恩師を手籠めにするなんざ、流石、我が夫だな。天晴れ天晴れ♪ ん? 手籠めじゃなくて夏穂さんから迫られたって? なんだ、もう尻に敷かれているのか?」

「宏君ったら、やっぱり夏穂さんと相思相愛だったのね。現役教師さんと元・生徒さんだなんて、萌えるわ~♪」

「宏ちゃんのいけずぅ~! どうして私も交ぜてくれなかったのよぉ~~~っ!」

 時々、怪しげな日本語を使い廻すほのかが大口開けて笑えば真奈美も予想通りと大きく頷き、一大イベントに参加出来無かった若菜が漆黒の長い髪を振り乱して地団駄を踏む。
 そんな夏穂受け入れ派が手放しで喜んでいる一方。

「か……夏穂先生。あたし達の苦労って……」

「……………………」

 脳天気女教師の台詞に額を押さえて天を仰いだのは晶だ。
 恩師の意に沿って宏との逢瀬を内密にセッティングした意味はなんだったのだろうかと脱力してしまう。
 優も同じ思いなのか、レンゲを持ったまま呆けるよりも唖然として浮かれた女教師を見つめている。

「か、夏穂先生もっ!? それじゃ、み……っ!!」

 片や、ポニーテールを跳ね上げて驚愕した千恵は「美優樹ちゃんと一緒じゃない!」と言う言葉を寸前で呑み込む。
 美優樹からのお願い事――宏さんとの事はまだ内緒にしてて下さい――が頭を過ぎったのだ。

「あ~~~えっと……その~~~」

 そして片方の当事者である宏も中華スープのお椀とレンゲを持ったまま、恩師と妻達を交互にチラチラと眺めている。
 夏穂の口から「内緒ね」、などと念押しされたのに恩師自ら暴露してしまい、どうしたものかと戸惑っているのだ。
 そして、一足早く宏と結ばれた美優樹は。

「夏穂お姉さんってば、いつの間に宏さんと……。ずっと口先ばかりでのほほんと構えてたのに、やる(犯(や)る?)時はやるのねー。……きっと、宏さんへの想いが溢れちゃったんだろうな」

 叔母の意外な行動力に目を見張っていた。
 これまでは宏を落とすだの何だの言っていたが全て希望的観測だっただけに、人知れず実力行使に出た勇気に驚いたのだ。
 もっとも、美優樹自身も抜け駆けしたので行為自体を責めはしない。
 むしろ、叔母と一緒に宏の妻の座に就けた事を内心、喜んでいた。
 いくら想い人と結ばれたと言っても、夏穂達に内緒にしたままで心苦しい部分が少しはあったのだ。

「となると、お姉ちゃんは……」

 その心苦しく思っていた最大の要因である飛鳥を見ると……。

「……え゛? 宏先輩と…………エッチした? ………………ゐ゛ヰっ!?」

 手にしたレンゲをポロリと落とし、目と口をポカンと開けたまま震える指先で宏と叔母を交互に指しながら全身真っ白になっていた。
 傍から見ると、まるで氷像の如く固まっている。

「さもありなん。結局は夏穂お姉さんにも抜け駆けされちゃったもんねー」

 己の事はちゃっかりとスルーする美優樹。
 姉の宏に対する想いを誰よりも長く深く知っているだけに一瞬同情するが、最早どうする事も出来無い。
 結局は姉自身の問題だからだ。

「こうなる前にさっさと告白すれば好かったのよ。下宿して宏さんとの距離が一気に縮まったんだから、これを活かさない手は無いのに……」

 目の前で鳶に油揚を攫われた姉に、容赦無い感想を呟く美優樹。
 その内容はゴスロリドレスを纏った美少女とは到底思えない辛辣なものだ。

「はてさて、理性を失ったお姉ちゃんはどう出るかしら? 天の邪鬼的な思考回路をショートさせたお姉ちゃんが暴れなければ好いけど」

 妹として、むしろこの後の展開が気になった。
 形好い眉を顰めて思案に暮れる美少女に、その本人から突然声が掛かった。

「美優樹! あんたもそう思うでしょっ!?」

 姉から肩を揺すられるものの一瞬状況が掴めず、辺りを見回す美優樹。
 ひとり考え込んでいるうちに、事態が動き出していたようだ。
 場の雰囲気からすると、姉が叔母に向かって自分達に内緒で宏にアタックした事を猛烈に責めていたらしい。

「あ……えっと、その……」

 しかし、ここで下手に姉の意見に乗ってしまうと、後々もっとややこしくなる事は火を見るよりも明らかだ。
 何せ、自分は既に宏と結ばれているのだから。

「だったら……」

 瞬き一回する間に考えを纏めた美優樹は口元を引き締め、腹を括った。

「えっと、お姉ちゃん。実は美優樹も宏さんと……」

 白のレースがふんだんに飾られた黒のゴスロリドレスとヘッドドレス。
 肌理細やかな肌の白さと、ツインテールに結われた栗色の艶やかな髪が柔らかく揺れるその様は、まさにアンティークドールそのもの。
 そんな美少女から発せられた内容に、屋敷は再び激震に見舞われた。

「どっ……どうしてっ! 何で内緒にすんのよっ! 私に黙って宏先輩と、え……エッ……するなんて卑怯よ!」

 エッチの部分は恥ずかしさから小声になり、口の中で呟く飛鳥。
 ひとりだけ椅子から勢い良く立ち上がり、指を突きつけて糾弾する少女に、叔母の夏穂は残りのチャーハンをパクつきながら平然と曰(のたま)った。

「あら? 好きな男性(ひと)に告白するのに飛鳥ちゃんの許可がいるの? 好きな男性(ひと)と結ばれるのに飛鳥ちゃんの許しがいるの?」

 不遜に映る叔母の態度に、怒りの導火線が一気に縮んだ飛鳥も負けずに言い返す。

「だって上京前に、一緒に宏先輩を攻略しようって言ってたじゃないっ! なのに、何で内緒に事を進めるのよっ!」

「うん、言ったわよ。でも、約束した訳じゃ無いでしょ?」

「ねえ、お姉ちゃん。だったら美優樹達と一緒に宏さんに告白して、三人一緒に結ばれた方が好かった?」

「う゛っ! そ、それは……っ!!」

 二人からの指摘に言葉を詰まらせる飛鳥。
 たとえその通りだとしても、恥ずかしさや照れ臭さで結ばれるどころか告白さえ無理だろう。
 その事が誰よりも判っているだけに反論出来無い。

「でもっ……う゛ぅ……………………」

 結果、感情的な唸り声を上げて押し黙る飛鳥。
 片や、平然とした夏穂と理路整然とした美優樹。
 宏と六人の既定妻達も固唾を呑んでそんな三人を見守っている。
 『みんな仲好く♥』がモットーの若菜も飛鳥を擁護したくてウズウズしているが、今は我慢して参戦を控えている。
 これは叔母と姪の問題でもあるので、みんな安易に立ち入れないのだ。
 どれ位時間が過ぎただろうか、低く唸っていた飛鳥が遂にキレた。

「バカぁっ! もう知らないっ!!」

 長く垂らしたツインテールを真横になびかせ、食事もそのままに自室へ駆け込む飛鳥。
 宏には、その顔は怒りよりも泣いているかのように見えた――。


     ☆     ☆     ☆


 飛鳥が冷戦(?)状態に陥ってから一週間。

 ――おはようございます、おやすみなさい、行って来ます、ただいま帰りました、いただきます、ごちそうさまでした――

 朝晩と食事、登下校の挨拶以外、飛鳥は殆ど口を利かなくなってしまった。
 弾けるような眩しい笑顔と軽やかな笑い声を忘れてしまったのではないか、とさえ思われた。
 ただ、大学(がっこう)では普段通りに友人達と接している(美優樹談)ものの、帰宅後は食事と風呂以外は部屋に籠もりがちになり、感情も表わさず無表情のまま下宿生活を続けているのだ。
 宏達から話しを振っても目も合わさずに最小限の言葉――はい、いいえ――で応えるだけで、飛鳥から話し掛ける事は一切無かった。

「宏ちゃん~、飛鳥ちゃんが可哀想だよ~、何とかしてあげようよ~」

 リビングで顔を揃えるや否や、飛鳥の痛々しさに見るに見かねた若菜が宏の手を取ると形好い眉を八の字に下げて懇願し、心配気なほのかと真奈美も反対側の手と腕を取って大きく頷く。
 土曜の午前中にも係わらず、みんな飛鳥を心配して自然とリビングに集まって来ていた。
 本来、この時間は自分の部屋を掃除したり廊下や風呂場の掃除を手伝ったりしている時間帯なのだ。

「何とか……って言ったって、こんな状況で何か言っても、かえって逆効果なような気もするし……」

「いいのよ、宏クン、放って置いて。あの娘(こ)が勝手に拗ねて自分の殻に閉じ籠もっているだけなんだから、無視して構わないわよ~」

 騒ぎの発端を作った夏穂が読み掛けの雑誌を丸めて左右に振り、教師とは思えない台詞を吐いて姪を突き放す。
 しかも赤地に白のラインの入ったジャージ姿で居丈高に構えているので、まるでドラマに映る陰険な体育教師のようだ。
 しかし、晶にはソファーでふんぞり返る恩師の真意を汲み取っていた。

「つまり、飛鳥ちゃんからも歩み寄らないと恋は成就しない、って事よ。まぁ、どうやって水を飲ますかじゃないけど、あたしらもこのまま手をこまねいている訳にもいかないし。……あの娘、結構頑固そうだけどね」

 的を射た解説に、なるほどと頷く一同。
 敢えて突き放した夏穂もバレたか、と小さく肩を竦め、元・教え子の鋭い観察眼に苦笑いする。
 同時に、高校の頃より人間的、性格的に丸くなっている晶に安心もする。
 高校時代の晶ならば、放って置いたままとうの昔に切り捨てていただろう。

「ホント、お姉ちゃんってば頑固で意気地無しなんだから。こんな事で宏さんに嫌われたら元も子もないでしょうに」

 美優樹も姉と一緒に登下校し(会話も無く、黙って後ろを付いていくだけだが)、ベッドや机が隣り合っている分、もろに不機嫌オーラを浴び続けているので好い加減辟易し、どうにかしたいとは思っている。
 しかし、自分も夏穂と同じ立場――しかも真っ先に抜け駆けした張本人なので、何を言っても聞き入れて貰えないのだ。

「すみません、宏さん。お姉ちゃんの所為でお屋敷の雰囲気を悪くしてしまって……本当にごめんなさい」

 沈んだ顔で髪が床に着くほど頭を下げるゴスロリ美少女に、屋敷の面々(除く夏穂)は大きく首を横に振る。

「いやいや、気にしないで! むしろ、俺も責任の一端はある訳だし」

「いいえ、宏さんは少しも悪くありません。夏穂お姉さんと美優樹の想いを受け取って下さっただけですから。悪いのは自分の気持ちを素直に表わし、行動出来無いお姉ちゃんです」

 これこそ事態の核心なのだが、当の本人は聞く耳持たないので説得のしようもない。

「まぁ、自分の思い通りにならなかったからって拗ねてるようじゃ、恋なんて無理無理。百年早いわよ」

 ソファーの上で長い足を組み替え、鼻であしらう夏穂。
 まるで『飛鳥vs夏穂』の様相を呈し始め、心底困り果てる宏以下六人の妻達とゴスロリ美少女の美優樹。

「……………………」

 明るい陽射しが降り注ぐリビングに重苦しい空気が漂い始めた、その時。

 ♪ ピンポ~ン、ピンポ~ン、ピンポ~ン~♪

 膠着状態を打ち破るかの如く、何とものんびりとした電子音が屋敷に響いた。
 宏の屋敷では、門にセットした赤外センサーにより誰かが敷地に入るとチャイムが鳴り、インターホンのモニター画面に来客者が映るシステムを採っている。
 果たして、すぐに呼び鈴が鳴った。

「はい、どちら様で……て、えぇっ!?」

 カメラ付きドアホンに対応した千恵が驚きの声を上げる。
 そこには、屋敷の誰もが知る人物がボストンバッグ片手に微笑んでいる姿が映し出されていた。


                                            (つづく)


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[ 久々な一人飲み ]
地元では口コミ評判の隠れ家的な飲みから帰宅しました 一人飲んでいてたまたま携帯の着信音家族用に設定したのが鳴り響き応対した後 なんと自分が中一のときお世話になった先生(かほせんせいではないけど)再会しました 当時大好きな曲で担任兼音楽教師だったんでレッスンと云う名の時間をすごしたのが走馬燈の用に蘇り しかし不思議です 暴露しちゃうと16年前から先生歳をとってないかんじで 女性の美しさ可憐さの不思議を改めて考えた自分がいました 姉も先生と面識あるので話すと 女性は魔法使いなのよと 身内でも…となり炭酸でむせてくるしかった自分が居ます 飛鳥ちゃんがんばー

[ 毎度お越し戴きありがとうございます♪ ]
凪さん
 コメントありがとうございます♪

 言われれば、確かに女性は魔法使いと言える一面を持っていますね。
 そして男はその魔法に惑わされ……。(*^_^*)

 いつも応援ありがとうございます♪ m(_ _)m
 

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