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恋情(4) 恋情(4) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
「あらら……行っちゃった」

 遠ざかる新幹線を全員が半ば呆然として見送る中、いち早く我に返ったのは千恵だ。
 若菜の声に反応するや否や身体をビクンと震わせ、宏に向き直ると同時に両手で宏の手を強く握る。

「……って、ちょっと宏っ! 飛鳥ちゃんひとり乗ってっちゃったけど、どーすんのっ!? あ、いや、すぐに追い掛けなきゃっ!」

 長いポニーテールを振り乱して慌てふためく千恵に、夏穂は手を振って微笑んだ。

「あ~~~、大丈夫よ、千恵ちゃん。あの娘(こ)がこっちに戻って来れば好いだけの話だから♪」

 高校時代と少しも変らない面倒見の好さを発揮した元・教え子に、夏穂は心から破顔する。
 人として大切な部分を失わずにいてくれた事が、世の中に送り出した元・担任教師としてもの凄く嬉しいのだ。
 そんな千恵に、美優樹も腰を九十度に曲げて深々と頭を下げる。

「心配してくれてありがとうございます。でも、携帯で連絡を取って次の停車駅で降りるように伝えれば済みますから、どうかご安心下さい♪ 隣の駅で折り返せば小一時間もあれば充分戻って来られるでしょうし……」

 おっちょこちょいな姉を心から心配してくれる千恵に最大限の謝意を示したのだ。
 同時に、これまで抱いていた歳の離れた学校の先輩という意識よりも、近所の頼れるお姉さん的な親近感が猛然と湧いて来る。
 これまで殆ど関わりが無かった筈なのに姉を気遣ってくれる千恵の優しさが美優樹の心の垣根をいとも簡単に取り去ったのだ。

「ですから、どうかお気遣い無く♪」

 僅か十五歳の――もうすぐ十六になる――少女とは思えない腰の低さに、七つ年上の千恵も釣られて頭を下げる。

「あ、いやいや。あたいはただ当り前の事を言ったまでだから、そんなに畏まらないで……」

「いえいえ、こちらこそ至らぬ姉がご迷惑をお掛けして……」

 頭ひとつ分背丈の違う二人が互いに頭を下げ合う姿に、夏穂を始め晶と宏は状況を忘れて笑い声を上げてしまう。
 これではどちらが年上なのか判らない。
 一方、ほのかと真奈美は初対面の夏穂に視線が釘付けとなっていた。

「宏や千恵ちゃん達から聞いてた通り、夏穂さんって見た目と違って肝っ玉が据わっているよな~。姪とはぐれても少しも動じないトコなんざ、さすが教師だぜ」

「立派な先生に付いていたんですね、みんな。……なんだか羨ましいわ。私も夏穂さんみたいに綺麗で凛とした先生に教わりたかったわ」

「夏穂先生って~、美人で気さくで面白いから学校の人気者だったんだよ~」

 ほのかと真奈美が顔を見合わせて感心し、若菜が自分の事のように胸を張る。
 しかし、ただひとり携帯電話で新幹線の時刻表を確認していた優が辺りに漂うノンビリムードをいとも簡単に打ち砕いた。

「……ヒロクン。飛鳥ちゃんが乗った新幹線は最速タイプだから東京までノンストップ。次の停車駅は終点の東京だよ。到着時刻は九十五分後の十五時三分。因みに、すぐ折り返す新幹線に乗ったとしてこっちに戻るのは……早くて十七時二五分。あと四時間後だね」

「「「「「「「「……………………」」」」」」」」

 ホームには暫し、八つの彫像が立っていたという。


     ☆     ☆     ☆


 その日の夜。
 一足早く自宅へ戻っていた夏穂と美優樹、そして先程やっと帰って来た飛鳥は昼間買った駅弁で少し遅い夕食を摂っていた。

「まったくっ! なんで私がこんな目に遭うのよっ!!」

 怒り心頭の飛鳥は手にした箸で肉じゃがのジャガイモを勢い好く突き刺す。
 まるで親の敵とばかり力を入れた所為で、柔らかく煮込んだジャガイモは一瞬で粉砕されてしまう。

「お姉ちゃん、おかずに罪は無いよ? それに、元々はお姉ちゃんが宏さんに見惚れてボケ~~~~っ、としてたから悪いんじゃない。つまりは自業自得。モノに当るのは筋違い」

「そうそう。さっさとホームに降りて再会を喜ぶハグなりキスでもしてれば、遥か東京まで運ばれる事は無かったのよね~」

 可愛い顔に似合わず辛辣な台詞を吐く美優樹に続いて夏穂までが二本目の缶ビール片手に姪のドジっ娘振りに笑い声を上げる。

「うぐぐぐっ………………っ!」

 妹と叔母から情け容赦無いツッ込みを受けて何も言い返せない飛鳥。
 ことに自分と瓜二つな顔の妹から言われると、鏡の中の自分からダメ出しを食らったようにも感じるので精神的ダメージがより大きいのだ。

「しょ……しょうがないじゃないっ! 余りに突然な再会だったから頭の中が真っ白になって……身動き出来無かったんだモンっ!」

 飛鳥は自分ひとりだけがデッキにいた為に列車から降りそびれ、みんなとはぐれて東京まで行って(運ばれて?)しまったのだ。
 そして二時間かけて舞い戻り、心身共に疲れた状態で自宅へとたどり着いたのだった。

「ホラホラ、美優樹も夏穂ちゃんも、そんなに飛鳥をイジメないの。一番の被害者は飛鳥なんだもの。ね~♪」

 飛鳥と美優樹の母が娘の不運(?)に苦笑しつつ取りなすも、飛鳥の怒りは収まらない。
 自分だけが宏との再会に水を差された形となり、全くもって面白くないのだ。

「何で二人共、私を追って次の新幹線で東京に来なかったのよ。そうすれば当初の予定通り、コトを進められたのにっ……はぐはぐ……んぐんぐっ」

 口と箸が同時に動き、最後は何を言っているのか判らない。
 頭に血が昇っていても、昼食を食べ損ねた所為でお腹がかなり空いているらしい。
 リスの如くご飯やおかずを次々と頬張り、箸の動きが止まらない。
 まるで大食い女王にでもなったかのような飛鳥に、三本目の缶ビールを飲み干した夏穂が頬を赤く染めながら答えた。

「だって~、宏クンのいない東京に行っても仕方無いでしょ~?」

「んぐんぐ……って、むこうで住む所を捜すのが第一目的だったんじゃないの? ……はぐはぐ」

 内心とは裏腹にあくまで建前を振りかざす飛鳥だが、宏と逢えて夢見心地の夏穂には通じない。
 アルコールの所為かはたまた宏との邂逅で気分が高まっている所為か瞳は潤み、言葉も間延びしている。

「だから~、大家さんがこっちにいるのに店子(たなこ)が上京する意味、無いじゃん♪」

「むしゃむしゃ……え!? それじゃ夏穂姉さん、本気(マジ)で宏先輩の所に下宿させて貰う気なんだ!? ……んぐんぐ」

「当り前よ~。だから上京を中止してここにいるんじゃない♪ ……って、食べるかしゃべるかどっちかにしなさいよ~」

 姪の食い意地に苦笑いした夏穂のツッ込みに、ご飯をかっ込んでいた飛鳥の箸がようやく止まる(しかし咀嚼はしたままだ)。
 美しき叔母のかんばせを暫し見つめ、ご飯を味噌汁で流し込んでから大きく息を吐く。

「まぁ、私も下宿話に賛同したからね~、深くは突っ込めないわ」

「だから明日の午後、宏クン家(ち)へお邪魔するからね~♪ アポは取ったから、東京でする筈だった陳情をこっちでするのよっ! 明日こそが勝負のしどころよ~っ!」

 五本目の缶ビールを高々と掲げ、意気揚々と語る夏穂の隣から再び柔らかいアルトの声が掛かった。
 その声は先程、飛鳥を取りなした人物から発せられたものだった。

「夏穂ちゃん、いくら宏さん……いえ、元・教え子さんの家にお邪魔するからって、手ぶらじゃ失礼よ。何かお土産を用意しないといけないわ。なんたって、こちらがお願いする立場なんだし」

 飛鳥と美優樹の母であり夏穂の姉でもある女性がご飯(夏穂が買い足した駅弁だ)をつまみつつ、心配気に眉根を寄せる。
 そんな彼女に、六本目の缶ビールを開けた夏穂がニヤリと眼を細めた。

「大丈夫よ~、姉さん。既にお土産は用意してあるから♪」

 ケラケラと笑いつつ、手にした缶ビールで大食い娘をサッと示す。
 その実に意味ありげな目線を、姉はいとも簡単に読み取った。

「あら♪ それじゃ、飛鳥を宏さんへのお土産に? それはいいアイデアだわ♪ 宏さんなら飛鳥を委ねても安心だし……むしろ願ったり叶ったりかしら♥」

「そうそう♪ 初モノだけに鮮度が命でしょう。お早目にお召し上がり下さい……なんちて♪」

 さすが姉妹だけあり、思考回路がそっくり……いや、全く同じだ。
 手放しで喜ぶ母と酔った叔母に、飛鳥は箸を突き付けて猛然とツっ込んだ。

「って、私がお土産って、どーゆーコトよっ! 委ねる……って、それじゃまるで私が生贄になって宏先輩に身体を差し出す……ような……って…………え゛ぇっ!?」

 自分で言っておいて、初めて夏穂の意図を知る飛鳥。
 加えて、『初モノ』の意味も悟ってしまう。
 脳内には一糸纏わぬ自分に裸の宏が覆い被り、純潔を奪われるシーンが浮かび上がって来た。

「~~~~~~~~っ!」

 猛烈に沸き上がる羞恥心が言葉を消し、見る間に顔が真っ赤に色付いて頭と耳から湯気が出始める。
 切れ長の瞳が徐々に見開かれ、長いツインテールが揺らめいて次第に大きく波打ってゆく。
 箸とお椀がカチカチと打ち鳴らされ、手の震えが全身に伝わってゆくのが誰の目からも判った。

「そうよ~♪ 飛鳥ちゃんを宏クンに捧げて~、お部屋を借りる手付けにするの~♥」

「なるほど♪ お手つきの女に仕上げてそのまま……ってコトね♥」

 七本目の缶ビールを空けた夏穂は夢見る乙女そのものになりきったかのように両手を胸の前で組み合わせ、瞳の中に多数の煌めく星を浮かべて平然と曰(のたま)う。
 片や飛鳥の母も、とても親とは思えない台詞を娘の前で平然と曰い、妹と顔を見合わせて笑い合う。
 一方、宏を想うもうひとりの少女も姉に羨望の眼差しを向ける。

「お姉ちゃん、好いなぁ。私も宏さんにこの身を捧げたいのに。嫌なら私が替りに……」

 表情はまるで優しいのに言っている中身は女衒(ぜげん)そのものの叔母と、にこやかな顔で微笑む鬼畜な母に、我に返った飛鳥がキレた。

「バっ、バカぁ――――――――――――~~~~っっ!!」

 自分の純情を利用された腹立たしさと宏とねんごろになれる嬉しさやら期待やらがごっちゃになり、沸き上がる感情がコントロール出来無い。
 語尾を振るわせ、箸を放り投げて脱兎の如く二階の自室へ駆け込む(逃げた)飛鳥に、ダイニングキッチンでは爆笑の渦が沸き起こった。


                                            (つづく)

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【 お寄せ戴いた御意見・御感想 】

[ 無事に帰って来れたようで何より(?)ですww ]
いよいよ勝負ですかwwwいや、勝負なんて生易しいものではないでしょうwwなんていったってあの晶さんがいらっしゃるのですから、戦争ですねwwwでも主に反対に回るのは晶さん一人だけだろうし孤軍奮闘か……え?千恵姉ですか?前にコメントに書いた通りですwww
どのような論争になるのかも楽しみですが、それを肴に騒ぐ(?)ギャラリー達の様子も楽しみですねwwもはや宴会です。酒が入れば誰にも止められませんww(未成年が二人ばかりいますが?w)
酔った勢いで…………ダメですね。疲れてるみたいですwwww
では最後に、お疲れ様です。頑張ってください♪

[ いつもご愛読ありがとうございます♪ ]
きのさん
 いつもコメントありがとうございます♪

 すったもんだの飛鳥ちゃんですが、なんとか帰って参りました。
 あとは東京での住み家ですね。
 果たしてどんな展開になるやら……作者にも判りません! <オイッ

 今後の展開にご期待下さいませ♪
 
 いつも応援戴き、誠にありがとうございます♪ m(_ _)m
 

[ ]
お疲れ様です!
とうとう始まりましたね新展開・・・
どうなることやらwww
個人的に期待(?)しているのは
美優樹ですがどうでしょう
これからの展開期待してます

[ いつもお越し戴き、ありがとうございます♪ ]
多摩さん
 毎度コメントありがとうございます♪

 美優樹ちゃんの ゴスロリ + 茶髪ツインテール は私的にもツボとなっております。(^^♪
 今後、最年少キャラの美優樹ちゃんをどのようにして活躍させようか思案中です。
 
 新婚グループに処女三人が絡む今後の展開にご期待下さいませ♪

 これからも 「ライトHノベルの部屋」 をご贔屓下さいませ♪
 

 

[ 管理人のみ閲覧できます ]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

[ ↑ コメントありがとうございます♪ ]
 いつもご愛読戴き、誠にありがとうございます♪

 お寄せ戴いたコメントは大変ありがたく、貴重なものとして心に刻みたいと思います。
 これらを参考に、今後の作品作りに活かして参ります。
 励みになるコメント、誠にありがとうございました。

 いつでも忌憚なきご意見をお待ち致しております♪
 今後も 「ライトHノベルの部屋」 を宜しくご贔屓下さいませ。 m(_ _)m
 

[ 再会 ]
拝見致しました。
夏穂&飛鳥&美優樹が宏に再会できて良かったです。
でも多恵子&夏穂が飛鳥をお土産にするとは面白い?家族ですね(笑)


[ いつもご愛読ありがとうございます♪ ]
MTさん
 コメントありがとうございます♪

 何とか無事に(?)合流出来ました。
 多恵子と夏穂の姉妹は、ある意味最強……なのかもしれませんね。

 今後ともご贔屓に♪
 

[ お母さん・・・・ ]
ただの母娘・姉妹漫才の会話の流れに入っているだけの女性だとばかり思っていました。
まさかこの『母』があとであんな核兵器と化すとはちっとも気が付きませんでした。
『お母さん(名前不明)』、バンザ~~イ!!
(ノ ̄▽ ̄)ノ)))))))))) ●~*●~*●~*●~*●~*( ((≪☆★BOMB!!★☆≫)) )

[ こちらにもお越し戴きありがとうございます♪ ]
ペンギンさん
 コメントありがとうございます♪

 この頃は覆面女優(?)の多恵子さんでした。
 読者さんからの反応(誰? この女性(ひと)!?)に、思惑通りの反応だったので気を好くしていましたっけ。(笑)

 いつもご贔屓ありがとうございます♪ m(_ _)m
 

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