【2008年12月23日(火) 17:06】
URL | きの |
[ 編集 ] 【2009年01月06日(火) 16:44】
URL | 多摩 |
[ 編集 ] << サンタは風に乗ってやってくる〜中編 | ←←← トップ画面へ戻る | 美姉妹(しまい)といっしょ♪〜新婚編 表 紙 >>
ブログ障害・メンテナンス情報
性描写がありますので20歳までの方は閲覧しないで下さい。
現在の閲覧者数 : 名様
<< サンタは風に乗ってやってくる〜中編 | ←←← トップ画面へ戻る | 美姉妹(しまい)といっしょ♪〜新婚編 表 紙 >>
最終更新
'09.11.20. 新着情報 / 11.21. お知らせ | 掲 示 板 | リンク | ▽ このページの下へ |
美姉妹といっしょ♥〜番外編
十二月二十三日、火曜日。
千恵達が看病を始めてから四日目の朝、宏の家は歓喜の声で満たされた。
宏の風邪が完治したのだ。
「三十六度五分、平熱ね♪ どう? おかしな所は無い?」
体温計と顔色を見比べ、晶が満面の笑みを向ける。
宏は布団から勢い好く立ち上がり、鈍った身体を動かしてみる。
「身体も軽いし、頭もクラクラしない。関節や喉の痛みも無いし……大丈夫っ! 異状なしっ!」
直立不動で敬礼のポーズをかます宏に、六人のナースから拍手喝采が起こる。
「宏ちゃん〜。好かった〜嬉しいよぉ〜」
嬉し泣きしているのは若菜だ。
そんな妹を慰めつつ、千恵も大きな瞳を潤ませる。
「早く治って好かったわ♪」
「みんな、ありがとうっ! お陰で綺麗サッパリ、治ったよっ」
満面の笑みで飛び跳ねてみせる宏に、みんなは心底安堵した表情を見せる。
「宏ちゃん〜、もう風邪を引かないでね〜」
「そうよ、宏。風邪は万病の元。油断しないでね」
若菜と千恵の美姉妹(しまい)コンビがいつもと変らない笑顔を向ける。
宏には、その表情はこの四日間でもっとも輝いて見えた。
「宏ぃ、今度風邪引く時はオレに知らせてからにしろよな。オレがマンツーマンで付きっ切りの看病してやるからさ♪」
「宏君、私が風邪を引いて寝込んだら、今度は宏君が私を看病してね♪」
ほのかがサムズアップしながら破顔し、真奈美が宏の手を取って上目遣いで見つめる。
宏はいつか二人に恩返ししようと、固く心に決めた。
「ヒロ? 治ったからって無茶するんじゃ無いわよ? 当分、安静を心懸けて、部活も軽めにしときなさいね」
「……ヒロクン。今度風邪引いたら、誰にも言わずボクだけに知らせて。そうすればボクがあっという間に治して見せるから♪」
晶が年長者らしく少年を諭すが、優が一波乱起こす発言をする。
当然、黙って見逃す面々(特に晶、ほのか、若菜の三人)では無い。
「って、どーゆー意味かしら!?」
「おいおい、まるでオレ達がいたから風邪が長引いたようなコト、言うなよっ」
「ひど〜いっ。私の特製お粥があったからこそ、今日で治ったんだよ〜っ」
眉を跳ね上げて目を剥き、頬を膨らませて抗議する三人。
そこに千恵と真奈美が加わり、収拾が付かなるかと思われた時。
「みんな、ほんとにありがとう。みんなのお陰で完治しました。この恩は一生忘れませんっ!」
深々と頭を下げる宏の素直な態度に、六人の元・ナース達は言い争いも忘れて大いに照れたのだった。
「あの、それで……千恵姉と若姉の誕生日パーティー、なんだけど……」
宏は懸念していた問題を言い難そうに振ると、当事者の千恵が笑いながら答えてくれた。
「あ、それだったら、明日(あした)にして貰おうかと思ってたの。明日予定してたクリスマスパーティーと一緒にすれば、お互い手間が省けるでしょ?」
若菜も一緒に頷いている所を見ると、どうやら二人で前々から話し合っていたらしい。
宏は晶に視線を向け、どうしようと問い掛ける。
宏自身、千恵と若菜の了承が取れれば、二十四日のクリスマスパーティーと同時開催を提案するつもりだったのだ。
「あたしも千恵ちゃんの意見に賛成よ。そうすれば改めて準備出来るしね。ほのかと真奈美はどうする?」
晶の視線を受けた二人も大きく頷き、千恵と若菜の誕生日会は明日のクリスマスパーティーと併せて行う事となった。
「それじゃ朝食はみんなで摂りましょ♪ その後、家(うち)の中の後片付けをして、それで解散しましょ。……いくら若くても、さすがに三日連続の貫徹は応えるわ」
晶がウィンクひとつ、宏に投げて寄越す。
宏は改めて六人の美人ナースに深々と頭を下げ、感謝の意を伝えるのであった。
☆ ☆ ☆
十二月二十四日、水曜日。
この日に限り、多くの国民がにわかクリスチャンになるクリスマスイブ当日。
宏の家では晶、優、ほのか、真奈美、宏、そして千恵と若菜によって誕生日とクリスマスの合同パーティーが行われようとしていた。
本来なら、誕生日の主賓である千恵と若菜は何もせずにどっしりと構えていれば好いのだが、
「誕生日パーティーはゲストでも、クリスマスパーティーはホストの側ですから♪」
そう言って料理や飾り付けなどを若菜はみんなと一緒に、千恵は率先して行っていた。
因みに、昨年までのクリスマスパーティーは宏をゲストに招き、晶と千恵の家で毎年交互に行っていた。
今年のクリスマスは千恵の家でする予定だったのだが、二十日に宏が風邪を引いてしまった。
その為、翌日の千恵と若菜の誕生日パーティーが延期され、クリスマス会の開催も危ぶまれた。
しかし、六人の「なんちゃってナース(優命名)」による手厚い看護のお陰(?)で宏はクリスマスイブ前日に見事快復、延期されていた誕生日パーティーを本日のクリスマスパーティーと併せて行う事になった。
そこで、今回は病み上がりである宏の体調を考えて宏の家での開催とし、午前中の早い時間から六人の美女が集まっていたのだった。
「今日は活きの好い佐渡産の天然鰤と大間産黒鮪の大トロが手に入ったから、みんな期待しててよっ!」
「今回も地鶏を丸々三羽、丸ごと貰って来たからね〜。みんな〜、楽しみにしててね〜♪」
特に千恵と若菜は張り切って台所に立っていた。
己の誕生日よりも宏とのクリスマスを心待ちに、そして宏の快復を心から喜んでいる現れだ。
千恵は刺身包丁と雪平を巧みに操り、若菜も手際好く鶏を締めてゆく。
「はいよっ、刺し盛り上がりっ! ブリ大根は……もう少し待ってねっ」
「は〜い、唐揚げ出来たよ〜♪ 次は青椒肉絲だよ〜♪」
緑のエプロン姿がチャーミングな姉の千恵が腕を振るえば、水色のエプロン姿が新妻に見える妹の若菜も料理の腕を遺憾無く発揮し、様々な料理を同時に手際好く仕上げてゆく。
今日の千恵はスリムジーンズに赤いトレーナー姿と、いつもと変らない出で立ちだ。
たとえ誕生日の主賓だろうが宏とのクリスマスだろうが、自ら料理を作るのでどうしても動き易い服となってしまうのだ。
そんな千恵は気分上々と見え、ロングポニーテールが小気味好く、包丁の動きと共に軽やかに揺れている。
また、妹の若菜も鼻歌交じりでフライパンや中華鍋を振っている。
裾の長いフレアスカートとセーターの組み合わせは普段通りのスタイルだ。
若菜自慢の漆黒の髪は首の後ろでひとつに縛られ、真っ直ぐ腰まで下ろしている。
こちらも軽いステップと共に、リズミカルに揺れている。
一方。
「もうすぐケーキが焼けるから、ほのかはクリームの角が少し折れる位まで泡立てといてね。真奈美はテーブルにお皿並べたら冷蔵庫からフルーツを出しておいて」
緩いウェーブの掛かった黒髪をアップに纏め、オレンジのエプロン姿も似合う晶はスイーツを担当し、ほのかと共に効率好く仕上げてゆく。
家事修行中の真奈美も上手く誘導し、実に見事な采配振りを発揮している。
晶も普段着のスリムジーンズと蒼のトレーナー姿で、さり気無く脚線美を強調して色香を振り捲いている。
ほのかはデニムのミニスカートと赤のチェック柄のシャツ、真奈美は白のワンピースに黒のベルトを纏い、共に白いエプロン姿だ。
この二人は宴会初参加だが、晶達三人はそれぞれの誕生日やクリスマス、正月など、季節毎に宴会をこなしているので実に手慣れている。
それぞれが滞り無く、順序立てて料理を仕上げてゆくと、落ち着いた少年の声が全員の耳に心地好く入って来た。
「みんな、上の準備が整ったから出来た物から運ぶよ」
宏が台所に姿を現すと、五人の美女は同時に声の主に顔を向ける。
その眩しいばかりの笑顔に、宏は一瞬、照れてしまう。
今日の宏はウェストと太腿部分に余裕を持たせた厚手のパンツと保温性に優れたハイネックのセーター姿だ。
見た目よりも病み上がりに最適な服を選んだのだ。
「……ボクも運ぶ」
宏の後ろから現れた優もジーンズにセーター姿で、動き易さ第一で服を選んでいる。
晶と優の美女姉妹(しまい)揃って服は地味だが、中身が優れているので何を着ても様になるのだ。
もちろん、千恵と若菜の美姉妹(しまい)やほのかと真奈美も中身が好いので、地味な服装でも華やかに見える。
「俺の部屋、飾り付けしたらすっかり見違えちゃったよ」
宏は優と顔を見合わせて笑う。
この二人は朝から飾り付けを担当していたのだ。
もっとも、若菜や晶達が前もって作った飾りを壁や天井に留めるだけなのであっという間に終わってしまったが。
「それじゃ、こっちの料理をお願いね」
千恵が飛び切りの笑顔でテーブルに並ぶ料理を目線で示すと、頭の高い位置で縛ったポニーテールが嬉しそうに揺れる。
「オッケー♪ それじゃ、取り皿と箸も持って行くね」
宏は千恵と晶から「ゲストであり、病み上がりだからじっとしていろ」、と何度も念押しされていたのだが、女性に働かせて自分はふんぞり返る事なぞ到底受入れられなかった。
そこで、自主的に部屋の飾り付けや階段を上下する運搬役を買って出たのだ。
優に言わせると、この位の運動が鈍った身体には丁度好いリハビリになるのだとか。
千恵と晶も宏の性格を判り切っているのでそれ以上何も言わず、宏の自由にさせてくれていた。
そして、全ての準備が整った昼過ぎ。
宏の部屋は狭いながらも豪華なパーティー会場となっていた。
天井から折り紙チェーンがいくつも吊され、壁の所々に金銀煌めく大小様々な星やサンタの形をした切り抜きなどが飾られて宏の部屋はクリスマスムード一色に染まっている。
部屋の隅には小さなクリスマスツリーが置かれ、赤、青、緑、黄色の電球が瞬き、金銀の星や雪に見立てた白い綿が電球に照らされて色鮮やかに染まっている。
そして部屋の中央には大きなテーブルが置かれ、様々な料理が美味しそうに湯気を立ち昇らせていた。
唐揚げ、青椒肉絲、水餃子、春雨サラダ、刺し盛り、ブリ大根などなど、どれも宏の好物を中心とした――しかも病み上がりを意識した胃腸に優しく精力の付くメニューとなっており、千恵と若菜の心意気が見え隠れしている。
その脇には各種ソフトドリンクとアルコールが揃い、宴会準備はすっかり整っていた。
窓を背にした上座の前には晶特製、クリーム控えめの二段重ねのフルーツケーキ(直径三十センチ、高さ十五センチ近い大きさで、これも宏の体調を意識した作りだ)が置かれ、主役の登場を今か今かと待ち侘びている。
宏の六畳間は、つい先日までここで宏が唸りながら寝込んでいたとは到底思え無い程、明るく賑やかに様変わりしていた。
「みんな〜、お待たせ〜♪」
その会場となった部屋に、隣の部屋で着替えを済ませたほのか、優、若菜が入って来た。
しかし、三人の身に纏う衣装に残りの面々は呆気に取られ、思わず好奇の視線を向けてしまう。
その衣装とは……。
「ホレホレ〜♪ 見えそうで見えないミニスカサンタ〜♪」
赤い三角帽子を被り、真っ赤なサンタコスチュームでお色気を振り捲いているのは北欧生まれのほのかだ。
膝上……より股下から計った方が断然早いひらひらのミニスカートを纏い、スラリと伸びる生足を惜し気も無く晒して宏に見せ付けている。
ほのかにとって、この程度の短さは普通なのだ。
染みひとつ無い太腿の白さが赤いスカートで引き立ち、引き締まった美脚のラインが高校生の男の子をいとも簡単に籠絡する。
そして。
「……ムフッ♪ 意外と似合うでしょ♪」
可愛らしいトナカイの着ぐるみ(頭の先からつま先まで顔以外すっぽり被るタイプだ)を身に纏っているのは優だ。
何でも、頭から伸びた二本のデフォルメされた角がチャームポイントだそうで、本人は宏とのクリスマスにノリノリになっている。
腰(尻尾もちゃんと付いている♪)を振ったり愛嬌を振り捲いたりして、着ぐるみ初体験とは思えない堂々たる姿だ。
「あはははは〜〜〜〜っ! ラップランドのトナカイを真似てオレが着せたんだっ♪ オレのサンタとコンビだぜ〜♪」
本場のトナカイを知るほのかが優の肩を抱いて前面に押し出し、豪快に笑う。
宏や千恵、晶も優の、ほのぼのとしたコスプレに大いに癒された。
さらに……。
「じゃ〜んっ! 私は〜、サンタ服にナース服を併せてみました〜♪」
若菜が美脚を交差させるモデル立ちになって長い髪を掻き上げる。
服のシルエットはナース服のそれなのだが、地の色はサンタの赤でボタンや袖は白だ。
宏の目には漆黒の髪とのコントラストが美しく映り、
「これは……これでありかも♪ ナースサンタ……侮りがたしっ! ……この姿で看病して欲しかったなぁ」
と、目を見張る。
しかし、ナースキャップ代りの赤い三角帽子が小悪魔の被る帽子にも見えてしまい、これでは癒されるよりも先に生気(精気?)を吸われそうだ。
しかも若菜は、膝上二十センチはあろうミニスカを穿いているので、ほのかの衣装と相まって目のやり場に困ってしまう。
高校二年生の男子に、妙齢の美女によるムッチリ太腿四本――しかも生足は刺激が強過ぎる。
風邪で寝込んでいる最中は当然の如くひとりエッチしていないので、ちょっとしたお色気シーンで暴発する可能性が非常に高いのだ。
(こんなんだったら、昨日、オナニーしとけばよかった……)
宏は昨夜、誰もいない自室で久し振りに自家発電しようと思ったが、さすがに治った当日に真っ裸になるのは拙いと思い、自粛していたのだ。
今回はそれが裏目に出てしまった。
それでも悲しいかな、男の性で宏はほのかと若菜の健康的なお色気脚線美にチラチラと視線を向けてしまう。
と、そんな宏の熱目線に、朝からずっとテンションの上がりっ放しのほのかが待ってましたとばかり、顔を綻ばせた。
宏の快復を喜び、一緒に過ごすクリスマスを心待ちにしていたのだ。
その結果、普段は決してしない行動までもしてしまう。
恋の成せる業だ。
「ん? 別に、宏だったら見られても平気だぜ。なんだったらパンツも見せてやろうか? ホレっ♪ ……ぐぁばっ!」
「宏ちゃん〜。どこまで捲れるか、やってみる〜? こうして、ズリズリ〜っ、とな♪ ……きゃんっ!」
スカートを両手でペロン、と捲り上げたほのかに晶の裏拳が飛び、タイトスカートをたくし上げる若菜に千恵の正拳が決まる。
優が宏の頭を慌てて横へ向け、ぐぎり、と首から嫌な音を立てさせる。
真奈美はワンピースの裾を握るも出遅れ、来年は自分もセクシーコスプレを導入しようと固く決意する。
宏は首の痛さよりも、ほのかと若菜の一瞬目にしたショーツの眩しさにノックアウトされた――。
☆ ☆ ☆
こうして、千恵と若菜の誕生日会兼クリスマスパーティーが正式に始まった。
宏とミニスカサンタ・ほのかは並んで胡座を掻き、主賓の千恵と若菜は上座で正座し、晶と優、真奈美は横座りしてテーブルを囲む。
千恵から見て左隣に若菜、右面に宏とほのか、左面に晶と真奈美、正面に優という布陣だ。
「え〜〜〜、それでは……」
それぞれにグラスが行き渡っているかを確認した宏がホットウーロン茶の入ったグラスを掲げ持つ。
さすがに病み上がり直後なので、今回は自主的にノン・アルコールだ。
「千恵姉、若姉、十九歳の誕生日おめでとう――っ!!」
「「「「誕生日、おめでとう――っ!!」」」」
宏の乾杯の音頭で四人の美女が一斉にグラスを目の高さに掲げ、唱和する。
こちらの美女軍団は全員ライト・アルコールだ。
千恵と若菜の主役二人も薄目に作ったカクテルを手にしている。
いずれも最初から飛ばすと後が続かなくなるとの判断だ。
「みんな、ありがとうっ! ありがとうございますっ!!」
「みんな〜、ありがとう〜っ! 嬉しいよ〜っ♪」
上座で何度も頭を下げる千恵と手を振って愛嬌を振り捲くナースサンタ・若菜に向かって五人からの祝辞が乱れ飛び、クラッカーを何度も撃ち鳴らす(ほのかは片手に四個持って同時に紐を引いていた)。
『〜♪ ハッピバースディトゥーユー、ハッピバースディトゥーユー〜……』
誰も練習なぞしていないのに、歌い出しからピタリと一発で決まるのは慣れた証拠だ。
ほのかと真奈美も宏と一緒に歌い、実に楽しそうだ。
テーブルに置かれた誕生日ケーキには十九本の蝋燭が綺麗な円形に並び、小さな炎が全員の顔を朱(あか)く照らし出している。
そして歌い終わると双子美姉妹が揃って蝋燭の火を吹き消し、再びクラッカーの嵐が二人に見舞われる(悪ノリしたほのかが今度は片手に八個のクラッカーを手にしたが目を吊り上げた晶に止められた)。
「千恵姉、若姉、誕生日おめでとうっ!」
「うんっ、ありがとうっ!」
「今年も元気な宏ちゃんにお祝いして貰えて感激だよ〜♪」
美姉妹の顔は蝋燭の火が消えても朱いままだ。
照れ臭そうな、それでも嬉しそうな千恵と若菜が何度も頭を下げ、乾杯が繰り返された。
「それじゃ、まずは俺から二人にプレゼントを。千恵姉、若姉、誕生日おめでとう♪」
宏がそれぞれにプレゼントを渡すと、晶、優、ほのか、真奈美からもプレゼントが贈られる。
二人の前には綺麗にラッピングされた十個の箱が山積みとなった。
「「みんな、ありがとうっ!」」
双子らしく、息もぴったりに礼を言うと、宏の部屋は温かい笑いに包まれた。
「さっそく開けて見なよ。宏がどんなプレゼントを贈ったのか気になるし」
好奇心満載の瞳で催促したのはほのかだ。
しかし他の面々も同じ瞳の色をしているので誰も咎めない。
恋敵(ライバル)に贈られた品物が、どうしても気になるのだ。
「うん、それじゃ、さっそく……」
「どれどれ〜」
千恵と若菜はピンク色のリボンが巻かれた箱を丁寧に開けてゆく。
そこには……。
「うっわ〜……♪ すっごく綺麗……」
思わず感動の声を漏らす千恵。
箱の中には上弦の月を型取った純銀のネックレスが窓からの明かりに煌めいていた。
そして……。
「あ……♪ すごい……」
切れ長の瞳を見開き、感嘆の声を漏らす若菜。
箱の中には下弦の月を型取った純銀のネックレスが窓からの明かりに輝いていた。
「「あ……これって……」」
千恵と若菜がネックレスを合わせてみると、綺麗な満月になる作りになっていた。
さらに、千恵の月の裏にはイニシャルである『C』が、若菜には『W』と彫られているのが判った。
「千恵姉と若姉は二人でひとつの部分があるから、月になぞらえて丁度好いかな、と思って。ほら、上弦の月と下弦の月って見掛けはまるで違うけど元はひとつでしょ?」
宏の言葉は二人の耳には届かなかった。
好きな男性(ひと)からの心の篭ったプレゼントに心ときめき、ネックレスを抱き締めていたのだから。
そして、二人同時に顔を上げたかと思うと、これまた同時に口を開いた。
「宏、ありがとうっ! 一生、大事にするねっ!」
「宏ちゃん、ありがとうっ♪ ずっと、大事にするねっ!」
二人の潤んだ瞳には晶が声を掛けるまでの間、ずっと宏の姿が映っていた。
「次はあたし達のを開けてみて♪」
涙にむせぶ二人に晶達からのプレゼント――たとえばそれぞれに学食の食券(プリペイドカード式なのだ)半年分とか最新式毛穴クリーナーとチャネルの石鹸セットとか高級フェロモン香水とシルクのキャミソールとか外国製高級ストッキングとガーターベルトのセットとか――が披露され、場は暫しの間、歓声に包まれた。
「いや〜、実はさ、千恵ちゃんと若菜ちゃんの誕生日プレゼント、直前まですっかり忘れててさ〜」
ほのかがペロリと舌を出し、肩を竦めて失敗談を披露する。
すると、真奈美も「実は……」と顔を赤らめ、晶と優までが視線を逸らしながら頷くものだから、千恵と若菜は呆気に取られる。
しかし、次の瞬間には二人してお腹を抱えて笑い転げた。
「あはははは〜っ! おっかし〜〜〜〜っ! きっと、頭の中が宏へのプレゼントで満たされてて、あたい達の事がお留守になっちゃったのね〜〜〜」
「ふふっ♪ みんな、宏ちゃんが第一だもんね〜♪」
さすが恋する双子美姉妹。
みんなの核心を突く台詞を同時に口にする。
「あ、いや、面目無い」
ほのかが深々と頭を下げるが、千恵と若菜は意に介さない。
「いいえ、気にしないで下さい。皆さんの心が嬉しいんですから♪」
満面の笑顔でそう言うと、貰ったプレゼントを愛おしげに撫でる。
若菜も大きく頷き、大事そうに胸に抱える。
そんな美姉妹の心の広さに、晶達女性陣は尊敬の眼差しを向けた。
何度も乾杯を繰り返し、テーブルや皿に少々隙間が出来始めた頃。
晶が宏の机に置かれた色鮮やかなカードに気付いた。
「ん? これって……夏穂(かほ)先生からのクリスマスカードじゃない。へ〜、今年も届いたんだ……」
「こっちは……飛鳥(あすか)ちゃんよ」
「これは〜、美優樹(みゆき)ちゃんだね〜♪」
「……って、お姉ちゃん、千恵さん、若菜さんっ! 勝手に見ちゃダメっ!」
優が慌てて注意するも、既に三枚のカードはそれぞれの手の中に収まっていた。
「……ごめん。また勝手に読んじゃった」
優が頭を下げるが、宏は構わないと微笑む。
晶&千恵プラス若菜の小姑(?)による宏宛のクリスマスカードチェックは毎年の事なので、すっかり慣れっこになっているのだ。
すると、文面を読んでいた晶から尖った声が上がる。
「ったく、あのエロ教師ったら! 担任のくせに生徒に色目使ってどーするっ!? 手ぇ出す気かっ! ったく〜、あの万年発情女教師が〜〜〜っ!」
と憤慨すれば、
「ふ〜ん……。宏、年下にも人気あるのね……。ううん、ちっとも、これっぽっちも気にして無いわよっ! むしろ人気者の幼馴染を持って幸せだわよ? お〜っほっほっほっ〜!」
千恵が嫉妬を滲ませたジト目で睨む。
かと思うと、
「美優樹ちゃん、いつも可愛らしくて大好き〜♪」
若菜は歳の離れた妹が出来たかのように手放しで喜んでいる。
「……まったく。毎回毎回、しょうがない三人」
「あはは〜、まぁ、好いんじゃない? 全く知らない間柄じゃ無いんだし」
毎年似たような反応を示す、三人の対照的な顔付きに優は苦笑し、カードを貰った宏も何やら照れくさそうに、でもまんざらではなさそうに鼻を掻いている。
そんな面々に、ほのかと真奈美が首を傾げ、優と宏を交互に見る。
「なぁ。飛鳥と美優樹って……誰?」
「えっと、夏穂先生……とは?」
初めて耳にする名前に、興味津々の二人。
目の前のアルコール(と数々の御馳走)に目もくれず、身体を乗り出して来る。
「……あ、そっか。ほのかと真奈美はまだ知らなかったっけ。あのね……」
優は、夏穂は宏が高校に入ってからずっと担任である事、飛鳥は宏の二つ年下で中学時代の陸上部の後輩である事、美優樹は飛鳥の三つ年下の妹で二年前に飛鳥を通じて知り合った事などをかいつまんで話す。
そして、自分達が高校二年の時に新任教師として夏穂が担任になった事も付け加える。
「へ〜〜〜、ってコトは……二十七歳、十五歳、十二歳!? ……の女性から慕われてる、って事か。ほぉ〜〜〜、宏って学校でもモテるんだなぁ〜。さすが宏! オレが見込んだだけの事はあるぜっ!」
「宏君、きっと好い生徒さんであり、先輩なんでしょうね。何だか目に浮かぶわ♪」
ほのかは指折り数えて破顔し、真奈美は相好を崩し、宏の学校生活に思いを馳せる。
二人共、初めて知る女に対し、嫉妬心を微塵も覗かせない(晶とは大違いだ)。
優などは既に何かを掴んでいるようだが、自信の表れなのか、はたまた鈍いのか、全く問題視していない。
宏が高校を卒業するまでの関係(付き合い)だと、タカを括っているのだ。
もっとも四年後、ほのかと真奈美はこの三人と深く関わる事となるのだが、それはまた別のお話――。
☆ ☆ ☆
時間は進み、テーブルの上に並んだ数々の料理がケーキを残してみんなの胃袋に消えた頃。
「それじゃ、本日二度目のメインイベント! クリスマスのプレゼント交換と行きますか♪」
晶の音頭でもうひとつのイベントが始まった。
「最初は、あたし達からヒロへのクリスマスプレゼントよ!」
「……ヒロクンに、お姉ちゃんとボクから合同のプレゼント♪」
優が差し出した箱の中には、黒地にオレンジのラインが目にも鮮やかなデザインの陸上競技用のスパイクシューズがメッセージガードと共に鎮座していた。
晶と優が見つめる中、宏はスパイクの上に置かれたカードを開く。
『ヒロへ。メリークリスマス! このシューズで自己記録を目指すのよ! いつも応援しているからね♥』
『ヒロクンへ。メリークリスマス。このシューズを履くと優勝間違い無し。でも、無茶はしないように』
そこには二人の従姉からの温かい想いが篭められていた。
「晶姉、優姉……ありがとうっ」
宏は居住まいを正し、深々と頭を下げる。
そんな律儀な従弟に、晶と優は思わず苦笑してしまう。
「ほら、中身よ、中身!」
メインの贈り物はこっち、とばかり晶に急かされ、宏がスパイクを持ち上げた瞬間。
「あっ! こ、これって……!」
重さを殆ど感じないシューズを手にし、そのまま固まる宏。
見た目は一般的な土用の六本ピンスパイク――宏が暮らす県の、殆どの陸上競技場は土のトラックだった――なのだが、明らかに作りが違った。
「これって……完全オーダーメイドのスパイクだっ! 履く人の足……左右の足型を取って作るから、完成まで早くても二ヶ月以上は掛かるって言われてる、幻の一品だ!」
陸上部に所属する宏にとって、スパイクシューズはアップシューズと同じ位、最重要なアイテムだった。
足の形に始まり指の長さと広がり具合、甲の厚み、土踏まずの形と高さ、踵から足首までの高さ、重心位置、そして履き心地、などなど。
この靴の善し悪しで記録が大きく違って来る程なのだ。
中学時代から短距離(四百メートルだ)専門の宏にとって、如何に自分の足に合うスパイクを見つける事が出来るかが勝負の分れ目だった。
しかし人口の少ない地方都市に住んでいるのでスポーツ専門店と言えど品揃えが充分では無く、これまで満足するスパイクにお目に掛かった事が無かった。
中学以降、宏はもっとも足にフィットするスパイクを選んで使っていたが足の形と微妙に違い、地面を蹴り上げた時にどうしても違和感が拭えずにいたのだ。
特に雨が降ってトラックがぬかるんでいる時ほど違和感が強かった。
しかし、オーダーメイドで自分の足の形に合わせてあるのならトラックの状態に関係無く、心置き無く全力で走る事が出来る。
「でも俺、型を採った覚えが無い……」
と、ここで宏は三ヶ月近く前に、優が足型を取りに来た事を思いだした。
「あ〜〜〜〜っ! まさか、あの時っ!!」
絶句する宏に、トナカイ・優が微笑んだ。
「……うん、そう。あの時、ボクがヒロクンの両足を石膏採りした時だよ。それをメーカーに送ったの。デザインは……ほら、スポーツマンって、験担(げんかつ)ぎするでしょ? だから今履いているのと同じデザインにして貰ったの」
「ヒロのスパイク、かなり年季が入ってるでしょ? だからそろそろ新しいのを買う時期かな〜と思って、秋頃から二人で考えてたの。クリスマスに贈れば、春の大会までには足に馴染むと思ってね♪」
実際、今使っている宏のスパイクシューズは高校の入学祝いに千恵と若菜から合同で贈られた(宏と一緒に買いに行った)もので、それから二シーズン、一年半以上使っている為に外側の布――土踏まずの上の部分や踵の部分――が摩擦で擦り切れ、かなり痛んでいた。
宏は練習用と大会用のスパイクを使い分けしていない。
決勝レースで好タイムを叩き出すには、普段から足に馴染んでいるスパイクを使う必要があるからだ。
その為、日頃の練習からひとつのスパイクを履き通すので、自然と痛みも早くなる。
二人のお姉さん達は、そんな宏の日常を把握した上でプレゼントしてくれたのだ。
宏は晶と優が早秋からクリスマスを目標に行動していたのかと驚くと同時に、二人の深い想いに心打たれた。
もっとも、トナカイの着ぐるみが感動を笑いに(少しだけ)変えた事は内緒だ。
「こんな……高い物を……晶姉、優姉、ありがとうっ!! これで来シーズンは自己記録が更新出来るよっ!!」
幻の一品を手にした宏の飛び切りの笑顔に、双子美女姉妹は小遣いをはたいた甲斐があったと、大いに喜んだ。
続いて、ほのかが進み出て細長い箱を差し出した。
「これは……高級シャーペンと万年筆のセットだ!」
宏は使い易そうな筆記具に目が釘付けとなる。
どちらも握る部分が従来のそれよりかなり太く作られ、長時間の使用に耐えられる作りとなっていた。
今使っているシャープペンシルは、中学一年の時に晶から入学祝いに貰った、当時流行りの細いタイプのものだった。
以来丸五年、毎日使っているので、今ではかなりくたびれて来ていた。
「宏に何を贈って好いのか判んなくって、いろいろ考えてたらこれが目に入ってさ。……長く使えるものだから好いかな、なんて思ったりもして……」
最初にミニスカサンタではしゃいでいた勢いはどこへやら、初めて異性に贈り物をする緊張でガチガチに凝り固まっているほのか。
視線はあちこち彷徨い、身体も小刻みに動かして落ち着きが無い。
喜んで貰えるか、はたまた気に入らずに残念そうな顔になるのか、ほのかには心臓が爆発しそうな位、胸の鼓動が乱れに乱れていたのだ。
宏はその想いに胸が温かくなった。
「ありがとう、ほのかさん! 大事に、毎日使わせて貰いますね」
宏の心からの笑顔と言葉に、ほのかは舞い上がって暫く思考停止に陥ってしまった。
そして、好きな男性(ひと)へのプレゼントで一喜一憂する自分も女だったんだな、と改めて噛み締めた。
「それじゃ、今度は私から……」
真奈美がおずおずと、リボンの巻かれた紙袋を差し出す。
「私も何を贈ろうか散々迷って……これにしました。どうか受け取って下さい」
目元を赤らめた真奈美が、真っ直ぐに宏を捉える。
見つめる瞳には、自分では好かれと思ったプレゼントを贈る不安や怖れ、期待が綯い交ぜになって映っていた。
宏は真奈美の想いを垣間見た気がし、ありがたく受け取る。
「おぉ、これは……カシミアのマフラーだ♪ 真奈美さん、ありがとうっ!」
宏はさっそく白いマフラーを首に巻いてみる。
「うわ〜〜〜、これは暖かいや♪ 真奈美さん、ありがとうっ! これだったら、もう風邪引かなくて済みます♪」
宏にとって、これから迎える厳冬期を前に嬉しい贈り物となった。
そんな宏の満面の笑みに、真奈美は嬉しさの余り涙ぐんでしまった。
同時に、初恋の男性(ひと)に初めて贈ったプレゼントが大当たりしたので、気分も最高潮になった。
少々無理して――小遣いの前借りと貯金の切り崩しだ――買っただけの事はあった。
「次は、あたいの番ね♪」
千恵がはにかみながら、綺麗にラッピングされた袋を宏に手渡す。
そこには吸湿性と速乾性に優れたオレンジ色のスポーツタオルが綺麗に収まっていた。
「うわっ! これ、前から欲しかったんだ。千恵姉、ありがとうっ!」
毎日、部活で汗だくになる宏には非常にありがたいプレゼントだ。
今あるスポーツタオルだけでは足りないと思っていた矢先なだけに、宏は思わずタオルに顔を埋(うず)めてしまう。
「うん、肌触りも好いし、大きさも特大サイズで頭や肩を包むのに丁度好いし……最高っ! 毎日使うねっ!」
子供のようにはしゃぐ宏に、千恵は思わず笑みを零す。
こんなにも喜んで貰えるなら、私財をはたいてでも毎月の様に何かをプレゼントしたくなってしまう。
千恵は唐突に、男に貢ぐ女の気持ちが判るような気がした。
同時に、自分と晶美女姉妹のどちらも宏の日常を把握しているが故のプレゼントに、ライバル心よりも同族意識を強く持った。
「真打ち登場〜! 最後は私だよ〜♪」
若菜がにこやかに背後から品物を差し出した。
それはA四サイズの、無地の封筒だった。
「……えっと、これは?」
手にした封筒はやや軽く、何やら厚手の紙が十数枚、入っているようだ。
「宏ちゃん〜、早く開けてみて〜♪」
嬉々として急かす若菜に頷く宏。
と、千恵が慌てて進み出た。
「ちょっと待って! ……何やら嫌な予感がする。宏、こっちへ」
双子ならではのテレパシーで何かを察知したようだ。
千恵の、若菜絡みでの悪い(?)予感はよく当たるのだ。
(何、アレ? 買った時とは明らかに形状が違っているし、こんな大きさのプレゼントは家(うち)でも見て無いわよっ)
眉間に皺の寄った千恵に、素直に渡す宏。
プレゼントしてくれた若菜に対し、同じ予感を持ったとは死んでも言えない。
「え〜〜〜、どうして〜〜〜っ!? 宏ちゃんのいけずぅ〜〜〜っ!!」
「まぁまぁ、若菜ちゃん。あたしにも、見せて欲しいな〜」
頬を膨らませて抗議する若菜の背後に晶が素早く移動し、羽交い締めにして動きを封じる。
その瞳は早く中身を見せろと言っている。
どうやら、晶も何か察するところがあったようだ。
だてに長い付き合いをしている訳では無い。
「……若菜さん。クリスマスだからって無茶なコト、してない……よね? 念の為、検閲します。あ、ヒロクンは安全が確認されるまで、後ろに下がってて」
「そんな〜〜〜っ! なんにも危なくないよ〜〜〜っ!!」
まるで危険物扱いされ、若菜は晶の腕の中でジタバタ暴れるが無視された。
優も眉根を寄せつつ宏を部屋の隅に隔離し、中身が目に触れない位置に移動した事を確認してから千恵に先を促す。
そして宏とのクリスマスに浮かれ、爆弾娘の存在をうっかり忘れていた自分にこっそりと喝を入れた。
「それじゃ……いくわよっ」
緊張して顔が強張っている千恵の指先に注目が集まる。
ほのかと真奈美は何が出て来るのか興味津々に瞳を輝かせている。
(こんなに楽しいクリスマスは生まれて初めてだぜっ)
ほのかは心から楽しむと同時に、こんなクリスマスを何度も積み重ねた晶達を羨ましく思う。
「……えいっ!」
千恵の掛け声と共に、みんなの目の前にA四サイズの写真が晒される。
どうやら、パソコンのプリンターで印刷されたモノらしい。
そこには……。
「全部、自宅のベッドで私がデジカメで撮ったものだよ〜。これは仰向けで〜、それはうつ伏せ。こっちなんかM字開脚で、そっちは女豹のポーズだよ〜♪」
晶の腕の中で、若菜が勝ち誇ったように解説を始める。
それは、まるでグラビアアイドルの写真集から切り取ったかのような、実に見事な肢体が下着姿のまま、様々なポーズで収まっているセルフポートレートだった。
若菜は家事も万能だが、薙刀でインターハイ出場を果たしたスポーツウーマンでもある。
鍛えられた身体には贅肉が無く、引き締まったボディーと女性特有の丸味を帯びたラインが実に色っぽい。
決して大きくは無いが、寄せて上げられた形好いお椀型の双丘と柔らかそうに刻まれた谷間が目を惹き、小さく窪んだお臍と下腹部へ続くなだらかな斜面が蠱惑的だ。
クロッチに薄っすらと刻まれた縦筋が何とも艶っぽい。
おまけに、雪のように白い肌と腰まで届く濡れ羽色の長い髪の対比が目にも美しい。
若菜は背が高く、手足もそれなりに長いのでモデルと言われても通る程なのだ。
そんな瑞々しいボディーに纏っているブラとショーツに目を移すと、デザインにハイレグなど際どい物は一切無い。
若干、ローライズ気味のショーツを纏ってはいるが、下着がシンプルな分、若菜の好さが引き立っている。
しかも素材はシルクだろうか、純白の光沢が漆黒の髪と相まって清純さを滲ませ、嫌らしさよりも爽やかなお色気が満ち満ちていた。
これが青年雑誌に載ったら、軽くミリオンセラーは間違い無しの逸品だ。
とても素人のセルフ撮りとは思えない、完璧な出来映えである。
どうしてこれだけの腕前をまともな方向へ向けないのか、全員不思議に思うのであった。
「……って、見ちゃダメ――――――っ!! 特にヒロっ!! 回れ右っ!!」
同性でありながら思わず見惚れていた晶が我に返り、慌てて鋭い声を上げる。
宏は何が起きているのか判らないまま、取り敢えず従う。
その声の迫力は、ただ事では無い事を示している。
宏は背後に漂う微妙な空気に首を傾げるばかりとなった。
一方。
余りの出来映えの好さに魅入っていた千恵は慌てて頭を強く横に振り、我に返る。
すると写真を持つ手が震え出し、全身の血液が音を立てて脳に集まり、こめかみに血管が次々と浮かぶのが自分でも判った。
「……あんた、いつの間に。……まさか、コレを、宏に、贈る、つもり、だったのっ?」
「そうだよ〜。十八歳最後のセルフヌード写真だよ〜♪ 青春真っ直中の綺麗な身体を画像として残して置きたかったのぉ〜。それに〜、こういうの、宏ちゃんも悦ぶし〜♥ あ、でも、さすがに全裸は恥ずかしかったから〜、ブラとショーツは着けたままにしたの〜♪ どう? 私のセクシーランジェリー姿、色っぽい?」
姉の、徐々に怒気を孕んでゆく言葉に、若菜は我関せずと満面の笑みで答えた。
ある意味、大物である。
片や、千恵の低い声色が警報となった他のギャラリーは全員速やかにその場から待避する。
若菜の物怖じしない性格とどこまでも明るい思考はプラスに働けば強力なパワーとなるが、それがそのままエッチな方向へ転換されると、いくら常識人の姉である千恵でもコントロール出来無い。
初心で純情な千恵では手に負えないのだ。
「若菜ちゃん。どうして宏がそーゆーの、好きだと判るんだ?」
ほのかが素朴な疑問をぶつける。
その瞳はビームを出さんばかりに妖しく光り、口の端には涎が溜まっている。
あわよくば、来年は自分も……と考えている顔付きだ。
と、待ってましたとばかり、若菜が押入れを指差して曰(のたま)った。
「だって〜、宏ちゃんの夜のオカズ、大和撫子の下着姿とかが多いもん。浴衣を着崩して下着が見えたりとか〜、国産や外国産の美少女がショーツ一枚でポーズとっているのとか〜。段ボール箱の中に、そーゆー雑誌や写真集、いっぱい入ってるよ〜♪」
いったい、いつの間に隠し場所がバレ、『ネタ』が解析されたのだろうか。
宏は目の前が真っ暗になり、頭を抱えてその場に蹲る。
そしてこのまま自分で穴を掘り、自らを埋めてしまう。
「あ……あはは〜。ま、まぁ、年頃の男の子には好くあるコトさ。だっ、だから、気にすんなよ、なっ!」
苦笑した金髪碧眼ハーフ美女(瞳は大いに笑っている)に肩をバシバシ叩かれて慰められる、純日本人の宏だった。
一方、千恵はそんなやり取りは全く耳に入っていなかった。
妹の、女の肉体を使ったアプローチに千恵の中の正義感……よりも嫉妬心が猛烈に燃え上がった。
どう見ても、肉体という部分では妹に一生勝てないからだ。
唯一、胸だけは勝っているが(八十四センチのDカップに対し、若菜はギリギリCカップの七十八センチだ)、それ以外は女らしさと言う点で勝負にならない(と千恵は思っている)。
――これじゃ、宏を取られちゃうっ!――
千恵に焦りが出たとしても、なんら不思議では無かった。
結果、妹の身体を張ったアプローチには、どうしても過敏に反応してしまうのだ。
「こっ、こっ、こっ、このおバカ――――――っ!! こんなの、年頃の男の子に上げるモンじゃないでしょっ! 恥を知れ、恥をっ!」
千恵は手にした十数枚の写真をあっという間に粉砕してしまう。
恐るべし嫉妬パワーである。
若菜の青春画像は、クリスマスイブに文字通り、スターダストとなってしまった。
「あ〜あ、せっかくプリントしたのに〜。……でも〜、まだデータとして残っているから〜……! ふにゃぁ〜……」
こめかみをヒク付かせた千恵の裏拳が炸裂し、ナースサンタ・若菜は暫し宏に看護されるハメになった。
騒動の種・若菜(その後、まともなプレゼント――瀟洒なオルゴール付きフォトスタンド――を渡したのは言うまでも無い)が復活したところで、メインイベントが再開された。
今度は、宏を交えた全員によるプレゼント交換だ。
「みんな、それぞれが持ち寄ったプレゼントに番号を振ってから、テーブルに置いてね。ヒロは一番、千恵ちゃんは二番、若菜ちゃんは三番、ほのかは四番、真奈美が五番、優が六番、そしてあたしがラッキーセブン♪ 七番よ♥」
各自がペンで箱の隅に番号を記す間、晶は七枚の小さな紙に一から七まで番号を振って四つ折りにし、小さな箱に入れてゆく。
「まずは、クジを引く順番決めよ。最初はグぅ〜〜〜、じゃんけん……」
晶の音頭で七人によるじゃんけんが繰り広げられ、ひとりが勝ち抜ける度に大きな歓声が上がる。
「それじゃ一番の人、どーぞ!」
テレビに映る司会者そのままに箱を突き出す晶のノリに、みんな笑みを零す。
晶とて、宏とのクリスマスを心待ちにしていたひとりなのだ。
これまで毎年、同じ事を繰り返していたとしても、好きな男性(ひと)と過ごす時間はいつでも楽しく、心躍るのだ。
「クジを引いても、まだ見ないでね。みんなが引き終えたら一斉に開けるから。自分で自分のプレゼントを引いた時は……それもアリね♪」
じゃんけんで最初に勝ち抜けた者から箱に手を入れ、期待に満ちた表情で紙片を取り出てゆく。
女性陣は宏のプレゼントである一番クジを目当てにしているからだ。
「それじゃ、オープンっ!」
晶がどこぞのクイズ番組張りに高らかに宣言し、全員が一斉に折られた紙を広げる。
すると、部屋の中は一喜一憂する大歓声(阿鼻叫喚?)で満たされた。
「げげっ、七番!? ……なんだ、コレ? ……アクドナルドの一万円分プリペイドカード!? 最悪だぜ……。なぁ、誰か一番と交換してくれよ〜」
「……って、なんですってぇ――っ!!」
思わず愚痴り、目に見えてがっかりするほのかに髪を逆立てて猛然と突っ込む晶……を尻目に。
「あら、私は三番だわ♪ どれどれ……きゃぁ〜〜〜っ♪ おっきな熊さんのぬいぐるみよ〜♪ 大きさが百五十センチですって〜♪ いやぁ〜ん、可愛い〜〜〜っ♪」
「同じ大きさの姉さんより可愛いでしょ〜?」
「……って、おいっ! どーゆー意味だっ!」
手放しで喜ぶ真奈美に、ポニーテールを跳ね上げた千恵の雷が炸裂する。
「あたしは……五番ね。五番、五番……あら、凄いわねっ♪ 最新の五インチカラー液晶テレビじゃない。浴室でも浴槽に沈めても見られるって言う、完全防水の優れものだわ♪ うん、ありがたく使わせて貰うわっ♪」
「実用的だと思ったので、それにしました。お気に召して戴いて嬉しいです♪」
目を見張った晶と安堵の息を漏らした真奈美が微笑み合っていると。
「……ん、四番。……温泉パス? 『有効期限無し。但し月丘温泉と瀬南温泉にて合計百回迄の入湯に限る』……か。うむ、面白い♪」
「あ〜〜〜、それ、な。いや、日本人って、温泉が好きだろ? それを買った店にポスターが貼ってあってさ、『雪見風呂で雪見酒♪ ワカメ酒のオプション付き♥』、って書いてあったから、これは好い! と思ったんだ。……ところで、『ワカメ酒』って、なんだ? 日本酒の銘柄か?」
温泉好きの優にピッタリのプレゼントとなり、二人の親友(悪友?)はニヤリと笑い合った。
しかし、優はワカメ酒について、ほのかに決して語ろうとはしなかった。
「どれどれ〜……六番だぁ〜♪ 六番は……? ん? なに……これ? 何かの賞状……じゃない……株券? 私に民天堂の株券が……百枚当たったぁ〜♪ ……けど、これ、どーしたらいいの?」
「……あ、それ、一種の宝箱。将来、大化けするか紙屑になるかは運次第。……大化けしたら、それこそ数億単位になるかも」
「へ〜〜〜、そうなんだ〜。うふふっ♪ 将来に備えて宏ちゃんとの結婚資金と思えば楽しいわね〜♪ 余った資金でラブラブハネム〜ン♥」
「……!! あ、いや、そんなつもりは……」
ニッコリ笑う若菜と不覚にも敵に塩を送った(?)優がソフトな火花を散らしていると。
「俺は――二番だ♪ どれどれ? ……おぉ、充電式ハンディークリーナーだっ! これ、小回り利くから欲しかったんだっ! ありがとうっ!」
「えっ!? あたいのプレゼントが宏に!? そ、それじゃ……」
微かな期待が大きく膨らみ、千恵は手元の紙を広げた。
そこに書かれた数字は……。
「あ……一番クジ……」
栄えある宏からのプレゼントは、ものの見事に千恵が引当てた。
その途端、みんなの羨望に満ちた視線が千恵に注がれ、再び祝辞の嵐に見舞わることとなった。
「お姉ちゃん〜、好かったね〜。想いが届いたね〜♪」
「くっそーっ! もしかしてクジ引いた時、指に触れてた紙だったのかもっ! ……でも好かったな、千恵ちゃん。誕生日とクリスマスのプレゼント、併せて宏からだぜ♪」
若菜とほのかが肩をバシバシ叩き、手荒い祝福をしてくれる。
晶と優、真奈美は温かい視線で、好かったね、おめでとう、と伝えて来る。
千恵は宏とクリスマスのプレゼントを交換した形となり、胸が熱くなった。
こんな偶然、あるのだろうか、と。
「なぁ、宏のプレゼントって、なんだ? 開けて見なよ」
ほのかや他の面々から急かされ、千恵は真っ赤なリボンをほどき、可愛らしい熊がデフォルメされた包装紙を丁寧に剥いでゆく。
「おぉ〜〜、これはっ……」
みんなの低くどよめく声が部屋を包む。
宏からのプレゼントは薄桃色のルージュだった。
塗ると微妙な光り加減で艶っぽく見える、大人の女性向けに今冬発売されたばかりの新製品だ。
テレビコマーシャルにアダルトな雰囲気で人気のある美人女優が採用されて話題を呼び、街中でも特大ポスターが貼り出されている流行りの一品だった。
「宏ぃ〜、隅に置けないなぁ〜」
ほのかが千恵と交互に見やり、ニヤリと笑う。
「あ、いや、ほら、俺のプレゼント、誰に渡るか判らなかったからさ。それで……みんなの事を考えてたら、これが似合いそうだな、って思って。……テレビや雑誌でも評判だったし」
大いに照れた宏が鼻の頭を掻きながら語ってくれたのだった。
千恵は、デパートの女性化粧品売り場で男子高校生の宏がしどろもどろになりながら選んでくれたのかと思うと可笑しくもあり、そしてとても嬉しくなった。
もしかしたら、自分にはもったいなくて使えないかもしれない。
「……大事にするから」
やっとの事で言葉を搾り出した千恵は胸にルージュを抱き締め、熱い吐息を漏らす。
贈った宏も千恵の喜ぶ顔が見られ、心底安堵した。
売り場で女性に囲まれる中、肩身の狭い(?)思いをして買った甲斐があったと言うものだ。
「それにしてもヒロ? これって結構高かったでしょ? お小遣いは大丈夫だったの?」
プレゼント交換の場に平気で金額の事を話せるのも、このメンバーの好いところだ。
誰も金額の大小で物の価値を計らないからだ。
晶は純粋に宏の財布を心配しての発言なのだ。
宏は、直接金額は言わないものの、予め予算を組んでいた事を話す。
「ほら、今年の夏に西瓜運びのバイトしたでしょ? その時のお金が少し残ってたんだ。……って言っても、最初から千恵姉と若姉の誕生日プレゼントを買う為に組んだバイトだったし、クリスマスのプレゼント用でもあったから全く問題無し! 大丈夫だよ♪」
「宏っ……♥」
顔を赤らめ、千恵の大きな瞳がハート型になりかけたその時。
若菜が胸の前で両手をパチンと打ち鳴らし、煌めく瞳で曰(のたま)った。
「宏ちゃん、男らしく一念勃起したんだね〜♪」
「「「「「「…………………………」」」」」」
部屋から全ての音が消え、暫しの沈黙の後。
「……って、それを言うなら『一念発起』だっ、このおバカっ!! なんつー間違いするかなっ、この娘(こ)はっ!? し・か・もっ! せっかくのっ、甘〜〜〜いム〜ドをっ……ぶち壊しやがって――――――っ!!」
「きゃいん! きゃいんっ! いった〜〜〜いっ!」
大きな瞳を目一杯吊り上げた(しかも涙目だ)千恵の怒級ぐ〜ぱんちが何発も頭上にヒットし、頭を抱えて逃げ回る若菜。
この二人の漫才に、この日一番の喝采が浴びせられたのだった。
☆ ☆ ☆
クリスマスイブに開催された宴会は大いに盛り上がり、七人の結び付きをより強める結果となった。
特に若菜の長ネギ騒動やら晶のレンゲ争奪戦、果ては座薬挿入とパンツの着替えを担当した優の『ヒロクンの股間レポート♥』で場は一気にヒートアップし、爆笑(宏は泣いていた)の渦が沸き起こった。
「ところで晶姉。どうやって俺が風邪で寝込んだ、って知ったの?」
晶の作った二段重ねの誕生日兼クリスマスケーキを全員で味わいながら、宏がかねてから疑問に思っていた事を尋ねる。
すると、千恵と若菜が今気付いたとばかり、ケーキを食べる手を止めて顔を見合わせ、晶に視線を向ける。
「それ、あたいも聞きたいです。あの時、誰も晶さんの家に行ったり連絡したりして無かったと思いますけど?」
口にフォークを咥え、千恵が小さく首を傾げる。
若菜はケーキ(三切れ目だ)を頬張りながら盛んに頷いている。
そんな三人に、晶は目を小さく見開いた。
晶が驚く時にする表情だ。
「あら、あんた達……何も知らないの? 二十日の夕方前……だったかしら。伯母様(宏の母の事だ)が家(うち)に来てあたし達の両親引き連れて温泉に行ったわよ。何でも、四〜五日暇が出来たから温泉でゆっくりしよう、とかなんとか。伯父様(宏の父だ)は現地で落ち合う……とも言ってたわね。その時にヒロが寝込んだ、って聞いたのよ」
「……ヒロクンの看病は千恵さん達に任せてあるから大丈夫だ、って伯母さんから聞いた瞬間、お姉ちゃんが血相を変えて飛び出してった。ボクは後を追っただけ」
やれやれと肩を竦めた優の発言に、晶が口から火を噴く勢いで突っ込んだ。
「って、こらっ! 事実を端折るんじゃ無いっ! 抜け駆けは許さない、とか呟きながら並んで走ってたのはどこの誰っ!? しまいには、ヒロを取られるとか穢されるとか言って目くじら立ててたのは誰っ!?」
「……フッ、遠い昔のコトさ♪」
前髪をサッと払い、遠い目をする妹に晶が呆れたように呟いた。
「誰だよ、オマエはっ!?」
千恵と若菜に負けず劣らずの漫才振りに、ほのかと真奈美は大口開けて笑い転げ、千恵は情報漏洩が身内(?)と判って脱力した。
そんな千恵や若菜をはじめ、みんな上気した顔で陽気にはしゃいでいるのはアルコールがかなり回っているようだ。
時計を見ると、かれこれ数時間は飲み続けている。
宏の快復と、共に過ごす時間に浮かれているのだ。
そんな女性陣を尻目に、晶の言葉にもっとも衝撃を受けたのは他ならぬ宏だ。
ケーキの刺さったフォークを手からポトリと落とし、そのままテーブルに突っ伏してしまう。
「……息子が熱出して苦しんでるのに、看病を隣人に押し付けて自分達は温泉かよ〜。……グレてやるぅっ」
涙目になった宏がいじけた所に、アルコールで目元をほんのりと赤らめた千恵が思い出したように付け加えた。
「あ……そう言えば……出掛けにおばさん(宏の母親の事だ)が、『将来へのシミュレーションと思えば楽しいでしょ』とか、『あとは嫁に任せた』、とか何とか言ってたような……」
言わなくても良い事(しかも最後の部分は都合好く改ざんされた記憶だ)をつい、酔いもあってポロリと暴露してしまう千恵。
これでは野焼きしている田んぼに高性能爆弾を放り投げたようなものだ。
案の定、晶が怒濤の突っ込みをかました。
「やっぱりっ! あんら達、あらしらに内緒でヒロとイイコトしようとしてたんじゃないっ! しかも! 新妻の練習とか夜の務めってナニっ!?」
フォークに刺したケーキごと千恵を指す晶。
晶もかなり酔いが回っていると見え、呂律も怪しく突っ込む内容がまるで違うモノになっている。
眼が据わり、上体がびみょう〜に揺れている酔っ払い晶に、こちらも酔いの進んだほのかが突っ込んだ。
「……って、オマエもオレに教えなかっただろっ! 同罪だっ!」
しかし、金髪碧眼美女がほんのりと目元を赤く染めているので何とも艶っぽく見え、とても突っ込んでいるようには見えない。
そんなほのかに、晶も果敢に言い返す。
「こっちはそれどころじゃ無かったのよっ!」
晶とほのかが火花を散らしていると、千恵がかなり遅れて反応した。
「あ、いえ、晶さん。あたいは心の中で思っただけで、決っしてそんな風に思っただけで……」
同じ言葉を繰り返す千恵も、知らず知らずのうちに酔いが回っているようだ。
晶、ほのか、千恵による泥酔トライアングル状態に、ケーキの余りの美味しさにほっぺを落としている真奈美がのんびりと優に尋ねた。
優もケーキの出来映えの好さに眼を細め、舌鼓を打っている。
「あの〜、このまま放って置いていいんですか? 空中で火花が散ってますけど?」
「……大丈夫。単なるスキンシップ。女同士の触れ合い。仔猫がじゃれ合っているようなもの……」
と、晶達のバトルへ、これまた酔った(浮かれた?)若菜がしゃしゃり出た。
「だったら〜、今夜からみんなで宏ちゃんと一緒に暮らそうよ〜♥ あ〜んなコトや、こ〜んなコトをお世話して上げようよ〜♪」
その瞬間、六人の美女軍団の脳内にはピンク色の妄想が、それは激しく湧き上がった。
そして今の今までいがみ合っていた晶、ほのか、千恵の三人が目に妖しい光を湛えて宏ににじり寄る。
しかし、当の宏はいじけたままテーブルに突っ伏していた為、若菜の言葉が耳に入っていなかった。
「あ〜ぁ。もしも千恵姉達がいなかったら、俺、今頃ミイラになってたぞ……って、うわぁっ!? なっ、何だっ!?」
次の瞬間、宏は酔っぱらった四人の美女に抱き付かれ、仰向けに押し倒されていた。
「ヒロ〜〜〜♥」
「宏ぃ〜〜〜♥」
「宏ちゃん〜〜〜♥」
「宏っ♥」
「晶姉? ほのかさんっ! って、若姉に……千恵姉まで!? いったいどうした……ぐわぁっ!」
「……ヒロクン♥」
「宏君〜〜〜♥」
さらに優と真奈美が面白がって重なって来たので、宏は六人の美女に押し潰されて身動き出来無くなった。
しかも、全身に感じる女性特有の柔らかさと温もり、仄(ほの)かに香る香水が宏の下半身に直結し、みるみる大きく盛り上がってしまう。
四日間にも亘る禁欲生活の副作用(?)だ。
おまけに首筋に掛かる晶とほのか、千恵と若菜の息遣いが宏の理性を溶かし、性欲を盛んに煽って来る。
(ヤバいッてっ! このままじゃ……軽蔑されるっ!)
運の悪い(好い?)事に、宏の股間にはほのかの柔らかい生足太腿が載っているので、彼女にとっては勃起が丸判りだ。
しかも、ほのかが身じろぎする度に股間から壊滅的な刺激が光の速さで全身を駆け巡るのだ。
(ヤバいっ! 絶対ヤバいっ! 激ヤバいっ!! この状態が続くと……出ちゃうよっ!)
抱き枕にされた宏は、次第に快感よりも焦りに襲われる。
しかし。
「「「「「「す〜〜〜、すぅ〜〜〜〜。くぅ〜〜〜、くぅ〜〜〜〜」」」」」」
寝ていた。
六人の美女は、宏に折り重なるようにして軽い寝息を立てていた。
ここ数日間の貫徹看病と今日のパーティー準備、そして宴会ではしゃぎ回った疲れがアルコールによって出たのだ。
もし、ほのかの太腿があと三擦り半でも動いていたら、宏はそのまま射精(だ)してしまったかもしれない。
(はぁ〜〜〜〜。た、助かったぁ〜〜〜〜)
これなら、多少(?)身体の一部が硬くなっていても判らないだろう。
宏はお漏らしの危険性が無くなり、取り敢えず安堵の息を漏らす。
そして、胸の上で安らかな寝息を立てている女性陣の可愛らしさに微笑んだ。
「みんな……お疲れ様♥」
宏は感謝の気持ちを込めて優しく呟くものの、誰かが目覚めるまでず〜〜〜っと下敷きになったままだった。
☆ ☆ ☆
最初に乾杯を始めてから時計の短針が一周し、テーブルの上の料理が綺麗に胃袋に収まって各種ドリンクも空瓶が並ぶだけになった頃。
「あ〜〜〜〜、雪だぁ〜♪ 雪が降ってるぅ〜〜〜っ!」
若菜は、窓の外が白くなっている事に気付き、少し開けてあったカーテンを全開にすると曇った窓ガラスをティッシュで拭く。
すると全員が窓辺に近寄り、外を覗き込む。
女性陣は軽い睡眠を(宏の上で二時間程)取ったので、元気溌剌だ。
「お〜〜〜、降ってるな〜。雨がいつの間に雪になってたのか」
ほのかが懐かしげに瞳を細める。
故郷――スウェーデンでのクリスマスを思い出したのかもしれない。
「どれ? ちょっと窓、開けるぜ?」
みんなの了承を得てからほのかが窓を開けると、そこは一面の銀世界になっていた。
風も無く、ただただ白い牡丹雪が真っ暗な空から静かに舞い降りて来る。
開けた窓からは深々(しんしん)と冷え込む空気が部屋に流れ込むが、むしろ火照った身体には心地好く感じられる。
「ホワイトクリスマス……だね。ふふっ、何だか嬉しい♪」
千恵がそっと、宏の腕に――セーターの肘の部分を指先でちょこんと摘んだだけだが――そっと触れ、静かに寄り添う。
一緒にホワイトクリスマスを過ごせる幸せを感じたかったのだ。
「あたい、この雪の美しさ、一生忘れない。それと、今日という日も。……ううん、絶対に忘れない!」
無意識の内に摘む指に力が篭り、首から下げた月のネックレスを握りながら宏の顔を見つめる。
宏も小さな千恵の、大きな存在に顔を綻ばせる。
「こうして、一緒にクリスマスを過ごせるのは千恵姉のお陰だよ。ありがとう、千恵姉」
肘に感じる千恵の温もりに、宏の鼓動が早くなる。
数日間に亘る看病や今日の料理など、八面六臂の活躍をしてくれた千恵に感謝の言葉を贈る。
風邪で倒れた時、真っ先に駆け付けてくれたのは千恵(と若菜)なのだ。
風邪で寝込んでいる時、部屋の環境維持にもっとも気を遣ってくれたのが千恵なのだ。
風邪が治った時、人知れず涙を流してくれたのは千恵なのだ。
そして今日、数々の料理を仕上げてくれたのも千恵なのだ。
宏にとって、何度感謝してもし切れない、幼馴染のお姉さん……を通り越して大切な女性(ひと)なのだ。
「ありがとう、千恵姉。そして……」
宏は固唾を呑んで(?)二人を見つめていた五人の美女に向き直る。
「今日、みんなと一緒にクリスマスを楽しめたのは、みんなの手厚い看病のお陰です。本当に、ありがとうっ!」
宏は万感の思いを込め、深々と頭を垂れる。
そして頭を上げた宏に、ここに集う女性達は一瞬で骨抜きにされた。
その顔は、六人の年上美女を蕩けさせるには余りある――新雪に熱湯を掛けるが如く――魅力的な笑顔だった。
(サンタは風に乗ってやってくる・了)
↑↑ 「面白かった♪・良かった♪・エロかった♥」と思われた方は押して下さい♪
(ランキングサイトに投票され、作者が悦びます♪)
【 お寄せ戴いた御意見・御感想 】
[ あとがき ]
皆様、長い長い物語をお読み頂き……お疲れ様でした。
そして最後までお読み頂き、誠にありがとうございます。
番外編〜 「サンタは風に乗ってやってくる」 をお送り致しましたが、如何でしたでしょうか。
多少なりともお楽しみ戴き、宏と美女軍団によるハ〜レム生活の一端を垣間見て何かしら感じて戴ければ作者冥利に尽きます。
さて。
昨年同様、今年もクリスマスに合わせて番外編を書きたいと考え、物語のプロットを練り始めたのは今年の夏――8月の終わり頃でした。
描く年代や季節、ボケ突っ込みや台詞等の構成は3日程で出来上がったので、9月から新婚編と平行して少しずつ執筆する予定でした。
……が、予定は未定、と申しまして(汗)、実際は思うように行きませんでした。
9月、10月と私事が重なり、新婚編の執筆に追われて番外編の執筆まで手が回らなかったのです。
そこで、まずは掲載中の新婚編〜アリアの章〜を仕上げ、それから番外編に取り掛かる事としました。
それが11月上旬の事で、今作の掲載予定日まであとひと月少々と言う状況に、大いに焦りました。
しかし、最初にプロットを念入りに練り込んでいた(普段はここまでしない)お陰で執筆はサクサク進み、ある程度――7割程迄は順調に書き上げました。
ところが、予定は未定と言いまして(しつこいっ)、キャラ達が動けば動くほど、物語が迷走し始める事態に……。
――あちらを立てればこちらが立たず――
暴れる(?)美女軍団を言い含め、なんとか完成に漕ぎ着けました。
本作は、普段のわたくしならば完成まであと2ヶ月は掛かるボリュームです。
しかし、今回はクリスマスバージョンなので12月24日迄に掲載すべく必死に書き進め、かろうじて間に合わせた次第です。
今現在、無事に掲載されて心底、ホッとしてます。
結果的に○×が1番、得をしたキャラになった……かもしれません。
宏は……どうなんでしょう?(笑)
作者的には、あの2人にもっと活躍して欲しかったかなぁ、活躍させれば好かったかなぁ、などと今更ながらに思ったりもしています。
遅筆なわたくしがこれだけの量(文字数で80,000弱、400字詰め原稿用紙200枚分、A4用紙で75ページ分)をひと月余で書き上げたのは初めてでした。
驚くべきハイペースです。
こんな事、金輪際、無いでしょうし、今後もしたくもありません……。
なので、次回の番外編はいつ掲載されるかは全くの未定――白紙です。
気が向けば、何かしらの時期に合わせて書き上げるかと思いますが……ノンビリと気ままにお待ち戴ければ、と存じます。
新婚編も、来月から始まる新章より飛鳥、美優樹、夏穂が登場します。
この3人がどのように宏達と絡むのか……どうぞお楽しみに♪
今後も 「ライトHノベルの部屋」 をご愛顧下さいますよう、宜しくお願い致します。
2008年 12月23日 エルム
[ 伏線がww ]
お疲れ様でした。 え〜この一言しか思い付きませんw
私としましては、千恵姉が可愛かったことと、優の思わぬ言動、そして、いつもごとく賑やかなお話に、これまたいつものごとく楽しく読まさせていただきました♪
今年はもうお休みになって、来年からまた新婚編、頑張ってください♪楽しみにしています♪
それにしても、150cmの熊のぬいぐるみですか……千恵姉と並べてみる……同じ大きさだw熊に背を預ける形で座らせてみる…… ……… ……可愛かったwww……バタッ………シーンww
[ いつもご愛読ありがとうございます♪ ]
きのさん
コメントありがとうございます♪
楽しんで戴けたようで作者冥利に尽きます。
千恵も可愛いと褒められて喜んでおります♪
新婚編でも喜んで貰えるよう頑張ります。
今後も宜しくご愛顧下さいませ♪ m(_ _)m
[ ]
お久しぶりです。
長かったですが楽しく読ませていただきました!
私的には飛鳥と美優樹が気になるので、
次回を楽しみにしています!
お疲れ様でした!!1
[ いつもご愛読ありがとうございます♪ ]
多摩さん
コメントありがとうございます♪
楽しんで戴けたようで何よりです♪
飛鳥と美優樹の登場まで今暫くお待ち下さいませ。m(_ _)m
今後も宜しくお願い申し上げます。
【 御意見・御感想の投稿 】
[ 管理人専用口 ]
作品別 目次
| 本 編 | 新婚編 | 番外編 | サイトマップ |
| 女の子が読むちょっとエッチな小説 | おたりんく | 読み物探し処 |