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 ライトHノベルの部屋  ライトHノベルの部屋  ライトHノベルの部屋
     ~ラブラブハーレムの世界へようこそ♪~


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メヌエット(2) メヌエット(2) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
 
「ふぅ~~~~」

 座席に着くなり、宏は深い溜息を吐(つ)いた。
 背もたれを深々と倒し、脚も投げ出した格好で――リクライニングの角度に合わせてレッグレストが自動的に迫り上がるのだ――天を仰ぎ目も瞑る。
 身体を優しく包み込むような、それでいてシートに深く沈み過ぎない、程好い硬さのリクライニングシートに脱力した身を任せていると、手足から疲れが徐々に抜け落ちてゆく気がした。

(や~~~~っと静かになった! これで暫くは平穏な刻(とき)が過ごせる!)

 それまで全く聞こえなかったジェットエンジンの音が今では耳を澄ませば耳に届くようになった。
 冬休みの時期だけあって搭乗直後から賑やかだった乗客達も、ランチタイムを終える頃にはすっかりと落ち着きを取り戻している。
 時計を見ると、離陸から既に五時間が過ぎていた。

(それにしても、この日程を組んだ時からある程度の騒ぎは覚悟してたけど、ここまでとはねぇ)

 妻達の弾けっぷりを思い出し、つい苦笑いを浮かべてしまう。

(ま、初海外組が四人に、それに便乗して騒ぐのもいたからドンチャン騒ぎとなって当然と言っちゃぁ当然か。もっとも、それを鎮めるのに予想以上に手間暇食っちまったけどね……ふぁああ~~~~)

 それまで張り詰めていた気が緩んだ所為か、欠伸と同時に猛烈な眠気が襲って来た。
 引率責任者として周囲への気配りや騒動への陳謝がようやく済み、安堵した事に加えて昨晩の深酒(前夜祭と称する宴会に強制参加させられた)と寝不足が要因のようだ。

(前夜祭がお開きになったのって、確か深夜三時を過ぎてたような……。そんで五時起きの六時出発だもんなぁ)

 しかも搭乗と同時にウェルカムドリンクでシャンパンを、その後のランチでは食前酒(アペリティフ)のシェリー酒をそれぞれグラスで空け、食事中はフランス産赤ワインのミニボトルを呑み干し、止(とど)めに食後酒(ディジェスティフ)のブランデーと、午前中からアルコール度数の高い酒を立て続けに摂取したのも一因だろう。

(そう振り返ると、俺も夏穂先生やほのかさんに『呑み過ぎです』なんて言えない位に呑んじまってたんだなぁ)

 夏穂は羽田空港までの送迎バスから既に缶ビールを呷り(迎え酒よん♪ と本人談)、その後もほのかと一緒に出発ラウンジの酒を全て制覇していたのだ。
 他の妻達もラウンジでの飲食は全て無料なのを好い事に、飲み食いに励んでいた。
 そして機内食とは到底思えない絢爛豪華で上質なフルコース――バカラ製のグラスに銀の食器と陶器の皿だ――を目の前にすれば、誰だって知らないうちにアルコールの過剰摂取と相成って当然だろう。
 結果、ハイテンションのまま騒ぎまくり、やがて酔いが回った者から寝落ちする状態となっていた。

(俺も、メシが美味いからって食事中にビール追加したのが拙かったかも。デザートのケーキにもブランデー、たっぷり入ってたし。ホントは時差調整の為に、西行きの機内では眠くても寝ない方が好いんだけど……ま、寝られるうちに寝とかないと、次にいつ寝られるか判んないもんな)

 首を巡らせ妻達の様子を窺うと、それぞれ濃紺のシートに身を深く沈め、毛布を被って安らかな寝息を立てている。
 宏達が座る『ヨーロピアンクラス』は機体最前方に位置し、シート配置はひとり掛けと二人掛けが通路二本を挟んで1-2-1の横四人、縦三列の定員十二名だ。
 今は機内左側シートの二列目に多恵子、その後ろに夏穂が座り、機内中央のシートには一列目に千恵と真奈美、二列目に美優樹と飛鳥、三列目にほのかと宏がそれぞれ並んで座り、機内右側シートには前から優、晶、若菜の順に座っている。
 左前の一席が空いているが、この区画(クラス)全部が宏達一行に宛がわれているので他人が座る事は無い。
 故に、宏達はシートベルト着用サインが消えると同時に席を自由に移動し、酒盛りその他に耽っていたのである。

(エアラインの厚意でこのクラスを貸し切りにして貰ったもんなぁ。お陰で気兼ね無く楽に過ごせて最高だ♪)

 宏は手足を思いっ切り突っ張り、ノビをする。
 前後の座席間隔(シートピッチ)は二百センチ、シート幅も九十センチあるので身長百六十九センチの宏は元より、長身揃いの妻達――百四十八センチの多恵子と百五十センチの千恵を除いた平均身長は百七十二センチだ――でも存分にくつろぐ事が出来る。
 オマケに、この区画はパーティションで仕切られ(通路には厚手のカーテンが掛かっている)、専用のバーカウンターとトイレもあるので他の乗客からの視線を気にしたりトイレの順番待ちをしたりする事は無い。
 因みに、機体後方のエコノミークラスになると2ー4―2の横八人でシートピッチは八十三センチ、シート幅が四十五センチと極端に狭く、そして悪くなる(観光バスと同等か狭い位だ)。
 ヨーロピアンクラスとエコノミークラスの間に縦三列あるプレミアムエコノミーもシートピッチは九十四センチ、シート幅五十センチと僅かに拡がる程度だ(新幹線の普通車よりも狭く妻達もこの席での四時間を超える移動はキツい)。

(それにしても、酒に強い晶姉は元より、みんなしてアルコールで撃沈するなんて珍しいな。余り呑まない多恵子さんや飛鳥ちゃんもアペリティフ一杯とデザートで出されたブランデーケーキで酔いが回ったって言ってたし。でも仕方無いか。機内は気圧が低いし)

 なにせ、現在の飛行高度は三万八千フィート(上空一万二千六百メートル)、機内気圧は地上の七割程度、つまり標高二千五百メートル地点にいるのと同じなので、アルコールに対しては二倍近く酔い易い環境でもあるのだ。

(酒を呑まなかった美優樹ちゃんですら、食後のデザートで酔っちゃったもんなぁ。ま、美優樹ちゃんに関しては塵も積もれば、って感じかな?)

 宏は思い出す。
 黒のゴスロリドレスを纏った美優樹が、目の色変えてケーキのお代わりを繰り返していた事を。
 その美優樹も、姉の飛鳥と肩を並べるようにして寝息を立てている。

(確かに、あのケーキは旨かったからなぁ。品切れにならなければ、俺もあと二つはイケてたかも。今度、真奈美さんに作って貰おうかな? 熱心にレシピ聞いてたから、帰国早々作ってくれるかも)

 などと思っていると、急激に瞼が重くなってきた。

(到着まで、あと五時間半……)

 心地好く意識が薄れゆく中、宏の脳裏にはチェックイン直後からの一連のシーンが浮かび上がって来た――。


     ☆     ☆     ☆


 ここで時間は少々遡る。

「さて、千恵姉と若姉が追いかけっこしてる間にチェックイン、済ませちまおうか」

 宏が全員のパスポート片手に搭乗する航空会社(エアライン)のヨーロピアンクラス専用カウンターへ歩み寄ると、ほのかが驚いたような声を上げた。

「ひ、ひ、ひ、宏! もしかして……『スカンジナビアーナ』に乗るのか!?」

 遠くまで通る、鋭くも透き通った声に宏は勿論、それまでネズミとネコの追いかけっこ張りに走り回っていた千恵と若菜の双子美姉妹(ふたごしまい)もピタリと足を止めて振り返り、そのコント(?)を微笑ましく眺めていた妻達も一斉に顔を向ける。

「ってコトは、オレ達が向かう先はストックホルムかっ!?」

 切れ長の碧眼を真ん丸く見開き、興奮しているのか白い肌が見る間に紅潮してゆくのが判る。
 ほのかが驚くのも無理はない。
 スカンジナビアーナ航空は、ほのかの出身地であるストックホルムに本社を置き、羽田とは週七便運航しているスウェーデンのフラッグキャリアなのだ。

「うん、そうだよ。俺達はこれからほのかさんの、ストックホルムでの実家に行くんだ」

 ここまで来ると行き先に関してはもう隠しようが無いので、宏はニコリと微笑ながら肯定する。
 なにせ、チェックインカウンターの背後の壁にはエアラインのロゴマークが大きく描かれ、便名と行き先、出発時刻が目立つよう表示されているのだから。
 すると、今度はほのかが小躍りしながら駆け寄り、強く抱き締められると同時に、顔中に猛烈なキスの嵐を貰ってしまった。

「宏、宏ぃ! 愛してるぜ♥ ん~~~~チュッ♥ チュッ♥ チュッ~~~ッ♥」

「ほ、ほのかさん、みんな見てるって。ホラ、子供が指差してるし、さっさとチェックイン済ませないと」

 宏にとって、チェックインカウンター前での、ほのかの熱い抱擁と猛キッスは二度目になるので殊更慌てる事は無いが、向けられる周囲からの視線は多々あるので恥ずかしさは変わらない。

(前回はフランクフルトの空港で同じようなハグとキス、貰ったっけ。そっか、あれからもう一年半近く、経つんだな)

 晶達六人と最初の式を挙げ、ハネム~ンの途中でストックホルムへ向かった時だ。
 この時は、ほのかに内緒で誕生日を母方の実家で祝うべく、足を延ばしたのだ。

(あの時のほのかさん、メチャ喜んでくれたもんな。チェックインから飛行機降りるまでずっと腕を組んで離してくれなかったし)

 そしてストックホルムから帰国する際に利用したのが、今回乗るスカンジナビアーナ航空だったのだ。
 かような事もあり、ほのかにとって故郷を連想させるロゴマークを見た瞬間に血が騒ぐのは当然かもしれない。

(あらら、歓喜の声を上げてるほのかさん以外はあんぐりしてら。千恵姉と若姉なんてすっかり固まってるし)

 その時のメンバーだった優、真奈美、千恵、若菜も、程度の差はあれ目を見張っている。
 今回の旅の計画(プラン)に初めから加担し行き先を知っている晶はニンマリしているが、それ以外の妻達はこの厳冬期に北欧へ行くなど想像の範囲外だったらしい。

(そう言えば……昨夜の宴会でどこに行くのか話題になった時、ハワイとかオーストラリアって予想してたな。日本人の年末年始はハワイが定番だとか、季節が逆の南半球でサーフィンするサンタクロースが見たいとか言って、大層盛り上がってたっけ。……みんな、寒いの苦手だったっけ? でもまぁ――)

 多恵子、夏穂、飛鳥、美優樹の新妻四人も意外そうな顔付きをしている所から、今回のドッキリ旅行は見事成功したと言って好いだろう。

(――掴みはオッケー! だな♪)

 幸先好いスタートに、宏の心はぐんと軽く、そして晴れやかになった。

(あとは、大人しく機内で過ごせれば万々歳なんだけど……そうは行きそうも無いよなぁ、このメンバーじゃ)

 酒乱女教師と抱き付いたまま離れないほのかに、一抹の不安を抱く宏だった。

     ★     ★     ★

 慇懃に迎えられたチェックインカウンターでは滞りなく手続きが済んだものの、次に案内されたヨーロピアンクラス専用の待合室(ラウンジ)では案の定、ひと騒動起きてしまった(一般客とは違いここで保安と税関の各検査、そして出国審査まで出来るのだ)。
 宏達以外に、このラウンジにはプレミアムエコノミー席を利用する乗客も二十数名いたのだが、

「あ~はっはっはっ! ここの酒は全てウチのモノじゃ~っ!」

 無料提供されているアルコールを更にひとり占めにしようとカウンター席を占拠した夏穂(目の色変えた晶が襟首掴んで強制排除した)。

「……ヒロクン、ゴメン。某企業の株が大暴落して五千万円の損失、出しちゃった……かも」

 ラウンジに置かれた大型テレビで某企業の合併(実質、吸収され消滅した)のニュースを見るや顔を真っ青に染め、インターネットに接続され誰でも使用可能なパソコンのブースに飛び込みそのまま籠城した優(入ってすぐに短い悲鳴が聞こえ、その後ずっと啜り泣く声が続いていた……)。

「あらあら、まぁまぁ♪ 綺麗な飛行機がいっぱい♪ あら♪ 今降りた飛行機はどこの国から来たのかしらん♪」

 駐機場(スポット)と誘導路、滑走路が見渡せる席で瞳を煌めかせて子供のようにはしゃぎ、搭乗時間を過ぎてもガラスに張り付いていた多恵子(赤面した飛鳥と美優樹が両側から腕を掴み、ぶら下げるようにして連行した)。

「このサンドイッチ、美味しい~~~♪ こっちのピザもトロトロふわふわで絶品~♪ あの、是非レシピを教えて戴けませんか?」

 ラウンジ担当のグランドスタッフのお姉様に、提供されている全ての軽食のレシピを尋ねまくっていた真奈美(千恵に恥ずかしいから止(や)めてと懇願されていた)――等々、微笑ましいものから眉を顰めるものまで実に飽きる事が無かった。
 宏も、

「あの、ルンルン気分になるのは判るけど、もちっと大人しく騒いでね。ここには他の人達もいるんだし」

 騒ぎが起きる度に駆け付け、それぞれ一喝(?)するも数分後には元の木阿弥となり、搭乗案内されるまで問題児ならぬ問題妻の対応に追われ続けたのだった。
 しかもこの間、宏の左腕には帰郷出来る嬉しさと感謝で舞い上がっているほのかがずっとへばり付き、晶や若菜からブーイングを受けてもいたのだった。

「やれやれ、飛行機乗る前からみんな元気だよなぁ。ま、暗く沈んでるよか断然、好いけど」

 優の憂鬱は宏が必死に宥めたお陰で事無きを得たし、物怖じしなくなった宏の性格と相まって妻達のハイテンションはラウンジから搭乗した機内に移っても変わる事は無かった。

「ひ、宏先輩! こ、こここここの席って、いったい……」

 フライトアテンダントの長(おさ)、パーサーのお姉様(銀髪が美しい熟女だった♪)に恭しく案内された所で、初海外の飛鳥が栗色に煌めくツインテールを振り乱して右腕に抱き付いて来た(左腕はほのかの胸元に抱かれたままだ)。

「あの! イメージしてた席とは形やら大きさやらがまるで違うんですけどっ!? 肘掛けは腕が三本載る程に広いしヘッドレスト横から伸びるフレキシブルアームの先にはLEDの読書灯!? しかも二十一インチはありそうなモニターが目の前に付いてますし……あっ!? スリッパやタオル、歯ブラシにコロンまである!」

 まるで、幼い子供が珍しい物を見つけた時のように興奮し腕を引っ張る後輩に、宏はつい笑ってしまった。

(飛鳥ちゃん、こうなると素直で可愛いよなぁ。時々見せるツンデレ風な態度も可愛らしいけど、やっぱ素の方が断然好いなぁ♥)

 鼻の下を思いっ切り伸ばし、デレる宏。
 それでもツアーコンダクター(?)として、そして夫として堂々と応える。

「飛鳥ちゃん、落ち着いて。ここはファーストクラスとビジネスクラスを足して二で割ったようなグレードの席なんだ。このスカンジナビアーナ航空では『ヨーロピアンクラス』と言う名称を付けてるんだよ」

 そう解説し宥め終えた所で、ニコニコ顔のパーサーから声を掛けられた。

「本日このクラスは宏様とお連れ様の貸し切りとなっております。お好きな席でごゆるりとおくつろぎ下さいませ」

「お心遣い、感謝致します」

 ウェルカムドリンクのシャンパンを受け取りつつ礼を述べる宏だったが、ふと、脳裏をよぎるモノがあった。

(そっか、予約した段階では何も言って無かったけど、結局、このエリアは貸し切りになったのか。まぁ、定員十二名の場所に一家十一人だもんな。一席だけ他人を乗り合わせるマネはさせないって配慮なんだろうな。……ん? 待てよ? これって……春先の結婚式で宮古島まで乗った飛行機と同じパターンだな)

 羽田からの機中でも十二席あるスーパーシートが貸し切り同然となり、呑めや歌えやの大宴会と化した事を思い出したのだ。
 果たして。

「若姉! お願いだから飛行機乗る度に乗員(クルー)の制服借りて機内をうろつかないで! ここはコスプレ会場じゃ無いんだからっ!」

 制服のサイズが合っているのを好い事に(若菜はモデル体型なのだ)、フライトアテンダントの真似事をして嬉々とする若菜。
 しかも、極短時間とは言え乗客相手にドリンクサービスまでこなしたのだから恐れ入る(それを嬉々と許したパーサーもだ)。

「夏穂先生、のっけからバーカウンターに入り浸らないで下さい。ここにあるお酒、全て呑み干す気ですかっ!?」

 いくらミニボトルとは言え、次々と空瓶を増やしてゆく恩師に苦言を呈するも、聞く耳持たない夏穂(晶もさじを投げ、苦笑したパーサーから夫として何とかしてくれとお願いされてしまった)。

「真奈美さんは、ラウンジにいた時から料理のレシピを聞きまくってるね。屋敷で再現する為とは言え、出来るだけフライトアテンダントさん達の邪魔にならないようにね」

 メモとボールペン片手に、戦場のような忙しさの調理室(ギャレー)に入り浸っている真奈美。
 ヨーロピアンクラス、プレミアムクラス、エコノミークラスと、各クラスのメニューとレシピの聞き取りに余念が無い。

「えっと……晶姉?」

「なによっ!」

「まだ鼻息荒いじゃん。いくらあのオッサンの態度が横柄で鼻持ちならなくて我慢の限界だったからって、晶姉がエコノミークラスまで遠征して直々に成敗しなくても好かったのに。パーサーや機長だっているんだから」

 酔っ払った挙げ句、大声でわめき散らし機内の顰蹙を買いまくっていた日本人乗客を舌先三寸で一刀両断した晶(後にクルー全員から感謝され高待遇を受けていた)。
 その一方で、搭乗直後からずっと静かにしている妻達もチラホラ。

「飛鳥ちゃん、そんな畏まって座ってなくて好いのに。もっと背もたれ倒したり脚を伸ばしたりして自由にくつろいで好いんだよ? 俺達はお客さんの立場なんだから」

「へっ!? あ、いや、その~、私みたいな凡人がこんな豪華な席にいて好いのかと思って」

 先に乗った国内線スーパーシートとは違って国際線のハイグレードな席は上流階級専用との思いが強いらしく、背中を垂直に立てたまま浅く腰掛け、なかなかリラックス出来無い後輩の飛鳥。
 もっとも、見よう見まねで挑んだフルコースランチを終える頃には常連客みたくすっかり馴染んでいたが。

「優姉、あの程度の株損失は痛くも痒くも無いから、いつまでも気にしないで」

「……ヒロクン。ボクは今、猛烈に後悔している。旅行に浮かれてヒロクンのお金を消滅させた自分が情け無い」

 慰めにも耳を貸さず、それどころか機内貸し出しのパソコンを使い(このクラスでは無線LANが無料で利用出来るのだ)、五千万円の穴埋めをしようと株取引やFXに躍起になっている優。
 絢爛豪華な機内食を頬張りつつも血眼になって画面を睨み、時折、一心不乱にキーボードを叩く姿は普段の微笑を浮かべ沈着冷静な姿とはまるで違った黒いオーラを放ち、姉の晶でさえ近寄ろうとはしなかった。

「千恵姉、映画ばっか見てて飽きない? 目が疲れちゃうよ? たまには機内を散歩したら?」

「上げ膳据え膳で豪華な食事が出て、普段見逃していた映画が見放題! このチャンス、逃すまいて! ホラ、宏も一緒に見ようよ♪ 宏の好きなアメリカの男優、ハリソン・クライスラーの特集、やってるよ」

 着席するやヘッドフォンを着け、前席との仕切り板に組み込まれた画面を凝視し続ける千恵。
 しかし上映プログラムを見ると外国映画の大半が日本語吹き替え版だったので、オリジナル音声を尊重する身としてはつい二の足を踏んでしまった。

「え~っと、ほのかさん? そろそろ腕を離してくれるとありがたいんだけど? トイレがてら散歩もしたいし……」

「えぇっ!? ひ、宏はオレと一緒にいるのが嫌なのかぁっ!? 妻の愛情を全否定するのかぁっ!?」

 泣き真似し(すぐにテヘペロッ♪ と、おどけたが)、機内後方の目ざとい連中から同情を買う大根役者のほのか。
 お陰で、誤解が解けるまで機内の女性陣から白い目で睨まるハメになってしまった。

「えっと、多恵子さん? 乗ってからずっと窓の外見てますが、何か見えますか? 今日は曇が多くて地上が見えないでしょうに」

「はぁ……」

 ラウンジからずっと窓の外ばかり見ている最年長妻に声を掛けるも、振り返りもせず生返事ばかりの多恵子。

「余程、蒼空と雲海のコントラストに魅入られてるのかな? 飛行機乗ってるだけに、上の空……ってか?」

 この時、他の奥さん達から座布団九枚貰った(パーサーからは余ったシャンパンをボトルで貰った)が……何故だろう。
 そして。

「えっと、美優樹ちゃん? ゴスロリ目当ての人に、いちいち応えなくて好いんだよ? 断る勇気も必要だよ? 何だったら俺が言おうか?」

 海外でも有名になりつつあるゴスロリファッションを完璧に着こなしているからか、それとも美優樹が超可愛くて超美人だからかは不明だが(絶対に後者だ)、乗客の多くがスマホやタブレット端末、デジカメ片手に美優樹とのツーショットを願い出て来る騒ぎも。
 ただ、この件に関しては裏があった。
 離陸後、暫く経ってからの事だ。

     ※     ※     ※

「ひ、宏! あ、あ、あ、あ、あ……」

 ここまで大人の行動――模範行動を示していた千恵が突如、鬼の形相で突進して来た。
 ほんの数歩分しか離れていない席にも係わらず腰まで届くポニーテールが真横になびく勢いで、だ。

「落ち着いて、千恵姉。どうしたの? 映画、見てたんじゃなかったの?」

「そ、そうなんだけど、あ、あ、あ、あ、あたい達が映画に出てる! 出てるのよっ!」

「はい~~~?」

 鼻息を荒げて沫を食う千恵に首を捻っていると、目の前にオーディオプログラム一覧表――座席で見聞き出来る映画やドラマ、音楽チャンネルの案内小冊子だ――がずいっと差し出された。

「これがどうかした――」

「いいからここ! これ見て! ここよっ!」

 尋ねるより早く、千恵の白魚のような細い指が機内上映一覧の、とある蘭を指し示した。

「どれどれ? 『実録! 宏様ご家族の愛の軌跡♥ PartⅠ~羽田編』 って、なんだこれ? 俺と同じ名前? まぁ同じ名前位、世の中に幾らでもある――え? 違う? 番組解説文を読め? 判った、そう急かさないで。んと……『本日ご搭乗の宏様が昨年夏に羽田空港の格納庫で新婦六人と挙げた前代未聞のハ~レム結婚式! 式当日の一部始終と新婦達の素顔を余す所無く追ったリアルドキュメンタリー!』――って、なんじゃ、こりゃぁっ!?」

 青天の霹靂、とは正にこの事だろうか。
 千恵の慌て振りに集まって来た他の妻達も、余りな事態に覗き込んだまま固まっている。
 そんな面々を余所に、千恵の指がひとつ下の蘭にずれる。

「え? 続きがある? これか? 『実録! 宏様ご家族の愛の軌跡♥ PartⅡ~下地島編』 って、まさか……え? 想像した通りだって? どれ……『本日ご搭乗の宏様が下地島で挙げたハ~レム結婚式第二弾! 豊かな自然の中で織りなす愛の賛歌! 今回は新たなる四人の新婦が堂々のお輿入れ! 新婦の横顔は勿論、式の途中で起きたハプニングにも屈せず愛を貫徹させた新郎の手腕に迫るリアルドキュメンタリー第二弾!! 前作大好評だった号泣必至な感動の指輪交換シーンと発情必然な熱々の誓いのキスシーンも満載♥』――って、おいおい……」

 半ばウンザリした顔の千恵が、更に下にある感想コメント蘭を指差した。

「見なくても判りそうだけど……一応、ね。どれ……『私がこの羽田編と下地島編の二本のビデオを見た後、すぐ素敵な出逢いがありました! お陰で今はキャッキャウフフ♥ の幸せな結婚生活を送っています♪ 宏さんご一家の御利益の賜物です! (※この意見は個人の感想であり効果を保証するものではありません)』――って……好いのか、これ?」

 呆れたまま千恵に顔を戻すと、幼馴染の御姐様は無言のまま席に装備されているヘッドフォンを差し出し、オーディオコントローラーを素早く操作した。
 片耳にヘッドフォンを当て、顎と目線で指し示した座席前のモニターを見ると、論より証拠とばかり、羽田での式の様子が音声と共にハッキリクッキリ映し出されていた。
 しかもご丁寧な事に英語の字幕付きで、だ。

「「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」」

 宏(と愉快な仲間達)が唖然・呆然・愕然としていると、ニコニコ顔の銀髪熟女パーサーがウィンクひとつ寄越すやススッと近寄り、事情説明してくれた。

「宏様御一行の幸せオーラにあやかりたく、本日、当機限定の上映プログラムでございます。皆様、お楽しみ戴けましたでしょうか♪ 因みに、機内での視聴率が既に七十五パーセントに達しておりますわ。うふっ♪」

「ど、道理で俺達がチラチラ見られたり美優樹ちゃんが写真撮られたりする訳だ」

(まぁ、他の面々はひと癖もふた癖もあるから美優樹ちゃん以外に近寄りたく無いってもの、あったのかもしれんなぁ。美優樹ちゃん、大人しくて可愛いし♥)

 親バカならぬ、妻バカ(?)な宏だが、ここである疑念が湧き上がった。

「あの、この画像、どこで入手されました?」

「うふっ♪ 企業秘密、でございます♪」

 満面の笑顔を崩さぬまま、そそくさと立ち去る銀髪策士パーサーに、宏は嫌な予感に囚われる。

(まさか……帰りの機内でも変な映像、用意してねぇだろうな? ったく、この映像、どこから流れた!?)

 帰国時もこのスカンジナビアーナ航空を利用するので油断ならない。

(ま、俺達の式の様子を収めた海賊版DVDやブルーレイが航空関係者に広く出回ってるからなぁ。今から帰国便を変更しても席は取れないだろうし、今更心配しても始まらないか。そん時はそん時だ。何とかなるだろ)

 世の中、どうにもならない事もある。
 とまれ、この映像を見た乗客達が大挙してカメラ片手に記念写真をねだって来た理由が明らかになった瞬間だった。

     ※     ※     ※

「ま、みんなそれぞれ楽しく過ごして貰えれば俺も嬉しいし、到着までは平穏に過ぎるだろう♪」

 結婚式の映像流出騒動を経ただけに、もう何が起きても驚かない――と思いきや。

「晶姉、今度はフライトアテンダントさんに接客指導しないで! 夏穂先生、酔った勢いでセーラー服脱がないでっ! わ、若姉~~~っ! そのレバー引いて回しちゃ、らめぇ~~~~っ!!」

 妻達のバイタリティーを綺麗サッパリ忘れ、翻弄され振り回され続ける宏。
 夫(ツアーコンダクター?)としての心労は、酔いが回ったり満腹後の眠気に襲われたりした妻達が寝付くまで延々と続くのだった。
 そして。

(や、やっと静かになった! 到着まで、あと五時間半……)

 妻達ひとりひとりに毛布を掛け終えた宏は、這々の体でシートに身を沈めたのだった――。


     ☆     ☆     ☆


 そして時間は今に戻る。

「……ん?」

 宏は下半身から湧き上がる気持ち好さにふと、目が覚めた。

(ん~、また誰かベッドに潜り込んで来たな? 仕方無いなぁ♥)

 イチモツを握る指の冷たさと亀頭を這う熱く滑(ぬめ)った舌先の動きは、目を瞑った寝惚け半分でも判る。

(ん~、まったく、堪え性の無い奥さんだなぁ。朝っぱらから夫を襲うなんて、なんて可愛いヤツ♥)

 愛情たっぷりなイチャラブセックスは勿論、この様な部分的スキンシップも大好きなので微笑ましく思う宏。
 しかし深酒と寝不足の意識だけが強く残り、しかも頭の芯が重く感じられるので完全に覚醒するには至らない。
 何せ周囲は静かで薄暗く、フルフラットにした座席が自室のベッドを思わせる寝心地だった事もあり、宏は夢と現実が混濁した状態にあった。
 その為、宏は自室にいるものとすっかり思い込んでしまった。

(ん~、今朝は随分とゆったりとしたフェラだな。いつもはもっと激しく吸い付いて来るのに)

 屋敷では起床時間になると誰かしらやって来ては朝勃ちのイチモツをツンツン、スリスリ、ニギニギ、ハグハグ、チュッチュペロペロ最後にゴックンしてから起こすので、今は旅行中、しかも機内だと言う意識が完全に失せていた。
 よもや移動中の機内でエッチを仕掛ける妻などいない、と言う先入観も思い込みに輪を掛ける結果となった。
 宏は自室同様、仰向けのまま、求められるままに脚を拡げてゆく。

(ん~、朝勃ちチンコは相変わらず痛い程にビンビンだ。ま、ここだけは完全に別人格だもんな)

 半分寝ていても完全フル勃起している自覚と感覚はあるし、胸元の毛布が口淫の上下動に合わせて動くので相手も毛布の下にいるのだと判る。

(ん~、傍から見れば股間がモッコリ膨らんでるように見えるんだろうなぁ……う゛っ♥)

 尖らせた舌先で敏感な鈴口をほじられ、性感が一気に目覚める。
 張り詰めた勃起肉をビクンと打ち振るわせた事で、相手もこちらが目を醒ましたと思ったらしい。
 ストロークのペースが速くなり、淫靡な粘着音も耳に届くようになった。

 ――チュッパチュッパ、クチュチュ、ジュルルルッ、ズズズズ……――

 ガマン汁が大量に溢れているのだろう、鈴口から直接啜る唇の感触と竿の隅々にまで這い回る熱い舌先に射精感が少しずつ高まって来るが、もう少し快楽を味わっていたい気持ちを優先させ、宏は放精欲を紛らわせる。

(ん~、ににんがし、にさんがろく……。うぁあ~、咥えられたまま舌先でカリ首や亀頭裏を舐め回されるのって、何度されても最高~♪)

 同棲開始以来、朝勃ちフェラが定番となって久しいので、この時もされるがままでいた。
 宏は気が乗ると(発情すると)、往々にしてシックスナインでお礼した後、騎乗位に持ち込む時があるのだ。

(ん~、今朝も気持ち好く俺を起こしてくれてるんだなぁ。でもゴメン。まだ猛烈に眠いから今日はもう少し寝かせて)

 献身的なフェラを受けている自覚はあるものの、ともすると睡眠欲が性欲に取って代わりそうになってしまう。
 それでも直接刺激を受けている身体(イチモツ)の方が情欲に対し貪欲だった。

(んはぁ……もちっと強く舌を押し当ててくれないかなぁ。あ、そこ、裏筋のトコ、硬く尖らせた舌先でペロペロして)

 身体が無意識に動き、勃起肉を震わせ更なる寵愛を求めるも、気を緩めた途端、睡魔に取り憑かれてしまう。

(ん~、眠い。頭が重い……もっと寝る)

 淫魔と睡魔の狭間で翻弄され、意識が行ったり来たりする宏。
 毛布が掛かる下半身の丸い膨らみが上下する度に自分の呼吸が次第に荒く、早くなってゆく事にも気付けない。

(んあぁ……美味そうに亀頭を舐め回してる。竿の根本扱いて亀頭裏舐められたら、すぐイっちゃうよ)

 当初は睡魔優勢だった戦いが、徐々に淫魔が盛り返して来た。
 より強い刺激を求めて脳ミソがピンク色に染まり、意識するのもペニスからの性電気と射精だけに絞られる。
 竿に力と熱が籠もり、亀頭が膨らみカリ首がより開くのも判った。

 ――ジュルジュルジュルッ! ペロペロペロペロッ! ハグハグハグハグッ!――

 すると夫の反応を読み取ったか、咥える唇と舐め回す舌の圧力が増し、口淫スピードも倍増した。

(んふ……、チンポの僅かな反応だけで以心伝心するなんて、流石、エッチ好きな奥さんだけはあるな♥)

 未だに誰がフェラしてくれているのかは判らないが、愛情がたっぷり籠められている事は好く判る。
 目を瞑ったまま、宏は最後の瞬間を迎えるべく腰を僅かに押し出した。
 すると唇の上下動も竿の根本から亀頭先端までのフルストロークとなった。
 咥えたまま平らにした舌で裏筋をベロンと舐め上げ、尖らせた舌先で亀頭裏の筋が集まる部分を高速で舐め扱く。
 どうやら、今朝はこのまま口に射精(だ)して欲しいらしい。

(んふふ……、膣内(なか)に欲しい時はこの時点で跨って来るもんね。んあぁあ~、そろそろイクよ)

 宏は上下動のタイミングに合わせて腰を小刻みに振り始めた。
 射精が近いと教える合図だ。

――んぐ、んぐ、んぐ、んぐ、んぐっ、ズボズボズボズボッ、ジュルルルルルるっ!――

 これを境に、喉奥を突く時に妻の鼻から漏れる何とも悩ましい声が上がり、亀頭を吸い上げる圧力が増し、そしてガマン汁と涎を啜る淫靡な音が、より鮮明に聞こえて来た。
 射精了解、いつでも口に射精(だ)して♥ と、奥さんからの無言の返答だ。
 宏はすっかりと荒くなった鼻息のまま、込み上げる射精感に身を震わせる。

(も、もうすぐ……イク!)

 下半身にわだかまっていた性電気が大きなひとつの塊となってペニス全体を痺れさせ、睾丸が持ち上がる。
 そして咥えられたまま、温かく滑(ぬめ)った舌先が亀頭裏にある射精スイッチを強く舐めた上げた瞬間。

(い、イクッ!)

 高圧消火銃の如く物凄い勢いで精液が尿道を駆け昇り、亀頭に達するとその刺激ですら射精の後押しとなって宏は精を放つ。

 ――ドビュ~~~~ッ! ドビュビュビュビュビュッ! ビュ~~~~ッ! ドビュンドビュンッ……! ――

 息を止めて全神経をペニスに集中させ、ダムが決壊したかのような大量射精に酔いしれる宏。

(あぁぁ……吸われてる! 俺の精液全部吸われてるっ!)

 吐精を受け止める熱い唇は射精中も上下に動き、指で竿の根本を何度も扱き上げてもいる。
 出来た嫁である。
 同時に、コクン、コクンと喉の鳴る音も小さく聞こえて来た。
 どうやら今日も美味しく戴いているらしい。
 鼻から漏れるくぐもった声と竿の根本に吹き掛かる荒く熱い鼻息がその証拠だ。

(さて、ボチボチ起きる頃合いかな?)

 亀頭を丁寧に舐め清め、尿道内の精液を全て吸い出すお掃除フェラが終了すると起きる時間なのだ。
 宏は薄暗い海の底から光り煌めく水面に向かって浮上する意識の中、ふと思った。

(それにしても、今朝の一番搾りはいつもより勢い好く、時間も長く掛かったな。まぁ、昨夜は前夜祭でエッチしてなかったから溜まった分、より勢いが増し――って!?)

 射精の余韻に浸りつつ前夜祭と言うキーワードが自然と頭の中に浮かんだ瞬間、宏の脳ミソが急激にフル回転し始めた。

(前夜祭だってっ!? ってコトは、今は――っ!?)

 意識が完全に甦った所で、宏は強力なバネ仕掛けの如く、勢い好く跳ね起きた。
 心拍数が急上昇し、額に嫌な汗まで浮かんで来る。
 この時、身体に掛かっていた毛布が音も無く床に滑り落ちた。

「――って、若姉っ!」

「おはよ~、宏ちゃん~♥ 今の一撃、と~っても濃かったよ~♪」

 右手に竿を握ったままニコリと笑い、満足気にペロリと唇をひと舐め。
 宏の拡げた両脚の間に正座し股間に顔を伏せていたのは、幼馴染であり一家の胃袋を取り仕切る若菜だった。
 妙にピンク掛かった唇が薄暗い機内でも艶めかしく煌めいているのは、決して照明の所為だけでは無い筈だ。
 よくよく見ると、頬と目元が薄っすらと紅潮しているのが見て取れた。

「わ、若姉、なんでっ!? こ、ここは飛行機の中――」

「だって~、宏ちゃんったら寝ててもおっき、させてるんだも~ん♪ だから奥さんとしてお手伝い~♥」

 夫の言葉を最後まで聞かず、どもまでもマイペースな若菜。
 お屋敷のムードメーカたる所以、だろうか。

「お、お手伝いって……」

「ここのシート、足下に乗っても安定してるからお部屋でする時と同じようにしたの~♪ でもジーパン脱がせられなかったから~、チャック開けておちんちんだけ何とか引っ張り出したの~♪ 第一、私が通路に座った状態でおフェラ、出来る訳、無いじゃ~ん♪ 肘掛けは邪魔だし通行の妨げにもなるし何より目立っちゃうし~♪」

 可笑しそうにケラケラ笑う若菜。
 リクライニングさせたシートと迫り上がったレッグレストでフルフラット状態になるので、どうやら狭いながらも屋敷のベッドと同じ状況が作り出せたらしい。
 とは言え、床面との高低差が余り無いので若菜の腰まで届く漆黒のストレートヘアが床にまで流れている。

「若姉、綺麗な髪が汚れちゃうから、早く立って」

 そそくさと、未だに滾るイチモツをパンツに無理矢理押し込み、何度も引っ掛かりつつチャックを上げる宏。
 自分達の結婚式動画が機内で上映されている以上、搭乗客からの注目度はかなり高い。
 機内散歩を装った野次馬に目撃され、ましてや録画されていないかどうかが、現状での最大の焦点だ。

「こんなのバレたら、今度こそ只じゃ済まんだろ。あ、いや、俺よか若姉やみんなの立場が危うくなっちまう」

 懸念し独り言のように口にしたものの。

「大丈夫だよ~。ここを通ったフライトアテンダントの人達み~んな、『ワ~オ♪ ウタマロ♥』って褒めてたよ~♪」

 性の伝道師、若菜からの爆弾発言。

「な゛っ!? なんですと――っ!? 既に手遅れっ?!」

「うん♪ みんなチラチラ、ギラギラ見つつ顔を真っ赤に染めてたよ~。足音が近付く度に毛布の隙間から窺ってたから判るも~ん♪」

「も~ん♪ じゃねぇっ! じゃぁナニか? 若姉の頭の膨らみが俺の巨大勃起に見えてたってコトかっ!?」

 お気楽若菜の言葉のひとつひとつが、宏のナイーブな(?)心をザックザックと、尽くみじん切りにしてゆく。
 流石、一家の台所を預かる調理長だけあって見事な包丁捌きだ。
 などと感心する間も無く。

「ひ~ろ~し~」

 地獄の底から響くような、何ともおどろおどろしい低い声。

「ひっ!」

 一発で判る、隣に住んでいた幼馴染の、通常では有り得ない声だ。
 恐る恐る顔を向けると、そこには大魔神と化した千恵と、ニコ目ながら額に青筋浮かべた八人の妻達が。
 みんな千恵同様、般若顔、鬼神顔、泣き顔(?)になって一歩、また一歩と迫って来る。
 皆、逆立てた髪がゆらゆらと蠢き、しかも立ち昇るオーラは黒紫と、誰がどう見ても尋常では無い。
 眠る前までの、あのにこやかで楽しそうな笑顔はどこへ消えたのだろう。

「こ~んなトコで、ナニ、してるのかしら?」

「あ、あ、あ、あ、あのあのあの……」

 千恵の抑揚の無い言葉が逆に秘めた感情を示しているかのようで、より恐怖心が湧き上がって来た。
 オマケに、寝起きの所為か、或いは深酒の影響か、はたまた射精後の賢者タイムの為か、どもるだけで咄嗟に事情説明(言い訳?)が出来無い。
 今度こそ嫌な汗をドバドバ流し、顔面蒼白となるチキンな夫、宏。

(い、今すぐどっか逃げてぇ!)

 気持ちは完全に逃亡者だが、ヘビに睨まれたカエルの如く微動だに出来ず、逃げても機上なので行き場が無い。
 数秒前の滾った姿が嘘のように、股間のイチモツもすっかり皮を被って縮こまっている。
 そこへ。

「へへ~ん♪ 宏ちゃんの濃厚特濃一番搾りミルク、獲ったど~♪ 羨ましいだろ~♪」

 脳天気娘が千恵達の燃え盛る怒りの炎に油を注ぐ(ダイナマイトを投げる!)発言をかましたから堪らない。
 正座したまま片腕を挙げるガッツポーズを決め、自慢気に口を開けて飲精をひけらかしてまでいる。
 夫の立場や周囲の状況などにお構い無く、感情や直感で行動するのは相変わらずだ。

「――って、若姉! ナニ、煽ってんの! 刺激しちゃダメッ!」

 慌てて制するも既に時遅し。
 そんな、まるで共犯者のような言い方が拙かったらしく、般若鬼神連合軍の鋭い視線が一斉に突き刺さった。

「ヒロ。ちょ~っと、そこまで顔(ツラ)、貸しな」

 胸の前で腕を組み、顎でトイレを示しつつ睨みを利かせる、筆頭妻の晶。

「宏さん? 人としてそこまで落ちますか? 何なら、飛行機(ここ)から更に下へ落ちてみます?」

 相変わらずのニコ目ながらも、搭乗時に通ったドアを目線で示す、お屋敷最年長妻の多恵子。

「宏……。隣にオレがいるのに堂々と浮気するとは偉くなったモンだなぁ? あぁ~んっ? 一度、昇天してみるかぁ?」

 見目麗しい姿とは裏腹にドスを利かせ、握り拳の立てた親指を下に向けて凄む、金髪碧眼ハーフ美女のほのか。

「宏。アンタ、若菜(バカ)の手綱を締められないなら、あたいが宏に首輪着けてやろうか? 今すぐ!」

 瞳を眇め、妹をこき下ろし、さっきよりも棒読みになっているのが余計に恐ろしい、若菜の双子の姉、千恵。
 四人共、こちらを見つめる瞳に剣呑な光りを宿し、今にも本当に実行しそうな雰囲気だ。
 更に。

「……ヒロクン、無節操過ぎ。ボクは妻として恥ずかしい。お願いだから正気に戻って」

 祈るように両手を胸の前で合わせ、諫めるような、否、懇願するような瞳で訴える、晶の双子の妹、優。

「宏君、そんなに溜まってるなら私に言ってくれればトイレで抜いて上げるのに」

 おそらくは援護してくれる意味合いだろうが、手筒を上下に動かしピントのずれた発言をかます、真奈美。

「宏さん。歳下の美優樹が言うべきでは無いのかもしれませんが、もう少し常識と良識を持って戴けたら……」

 片手を胸に当て、完全に憐れむ瞳で見つめる、お屋敷最年少妻の美優樹。
 三人共、呆れ顔で溜息を吐(つ)き、やれやれと首を振っている。
 そして。

「グッスン、先を越されたぁ。若菜ちゃんのいじわる~。せめて声を掛けてくれれば一緒にしたのにぃ」

 悔し涙を流し、指を咥え物欲しそうな瞳で股間を凝視して来る、恩師の夏穂。

「ひ、宏先輩のスケベ! 衆人環視の中で、エ、エ、エ、エ、エッチするなんて信じらんないっ! でも、こ、これが、レディコミに載ってた露出プレイ、ってヤツなのね。は、初めて見た……」

 一瞬、涎を啜り、瞳に淫靡な光を宿した、後輩の飛鳥。
 この二人だけは味方になってくれそうだ。
 片や、主犯たる若菜と言えば。

「えへへ~♪ 宏ちゃん、獲ったど~♥」

 いつの間に両脚の間から這い上がり、そのままマウントポジションで抱き付いて来た。
 喉をゴロゴロ鳴らし、切れ長の瞳を細めつつ胸元で頬擦りする様は屋敷で面倒を見ている仔猫、そのものだ。

「アンタも大概にせいっ! いつまでじゃれとるかっ! いい加減降りろっ、この万年発情娘っ!」

 ――すぱ――んっ!――

 自分が履いていたアメニティグッズのスリッパで妹の頭をしばく千恵。
 しかし、如何せん手にした武器は柔らかで上質な布製スリッパ。
 ダメージを与えられないどころか、逆に若菜の反骨心(対抗心?)を煽る結果となってしまった。

「若姉、そんなきつく抱かれたら苦しい――って、あかんべえして挑発しちゃダメェ!」

 みんなに見せ付けるようコアラみたくヒシッ! としがみ付き、騎乗位の如く腰まで前後に振り始める若菜。
 当然、晶達も一斉に目を剥いて抗議の声を上げ、寝ている間に自分の居場所を取られたほのかは若菜を引き剥がそうと躍起になっている。

「み、みんな落ち着いて! 俺は逃げも隠れもしないから! せめて着くまで大人しく……」

 夫の魂の叫びも虚しく、それが亭主争奪戦のゴングとなってしまった――。


     ☆     ☆     ☆


 数時間後、『UTAMARO in Flight』と題された動画がU-チューブにアップされ、新たなる伝説となっていたなど知る由もない宏だった。


                                            (つづく)

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