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     ~ラブラブハーレムの世界へようこそ♪~


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バルティータ(1) バルティータ(1) 美姉妹といっしょ♪~新婚編
  
 カレンダーの絵柄が鮮やかな紅葉一色に変わって少し経った頃。

「それでは千葉倉庫こと千葉配送センターの解散呑み会を始めま~す!」

 ――パチパチパチ、ヤンヤヤンヤ、ヒュ~ヒュ~!――。

 宏と職場仲間が打ち鳴らす拍手やら喝采やら指笛やらが居酒屋に大きく響く。
 一同は職場の最寄り駅傍に建つ居酒屋の座敷を貸し切り、夕方の早い時間から宴会に興じていた。

「職場が無くなり、みんなで集まる最後だからこそ盛大に行こう!」

「「「お――――――っ!!」」」

 台詞の内容だけ聞くと、どこにも盛り上がる要素はこれひとつも無いが、だからこそ騒がなければやっていられない――そんな想いが全員に共通する気持ちなのだ。
 それは宏のバイト先である大手家電ショップが同業他社にM&Aで吸収され、勤めていた倉庫が今日を最後に閉鎖される(正確には相手先に統合され消滅する)事になったからだ。

 ――あははははっ! うふふ♪ きゃははははっ! 店員さ~ん、中生四つお代わり!――。

 居酒屋には週末の金曜日とあって早仕舞いのサラリーマンや学生達でほぼ満員で、そこかしこから華やかな笑い声や注文する声が絶えず上がっている。
 宏達十人も居酒屋の華やかな雰囲気に溶け込もうと、自然とテンションが高まっていた。

「皆さんの洋々たる前途を祝して乾杯~!!」

「「「乾杯~!!」」」

 所長の音頭に合わせて宏も胡座を掻いたまま声を張り上げ、ビアジョッキを高々と掲げる。

 ――カチンッ! カキンッ! ガチャガチャンッ!!――。

 泡が飛び散る程にビールジョッキが何度も打ち合わされ、キンキンに冷やされたビールがゴクゴクと喉を通る音も人の数だけ響いてゆく。

「んく、んく、んく……プッハ~!」

 宏が中ジョッキの半分迄一気に呑み干すと、右隣に座る千歳が改めてジョッキをそっと差し出し、再び乾杯をねだって来た。

「宏さん、長い間お疲れ様でした。これで全てが終わり、この街ともお別れする訳ですね」

「うん、そうなるね。倉庫が移転し、ここの駅や今迄仕事帰りにみんなで何度も立ち寄ったこの店に来るのも今日が最後だと思うと、何だか寂しいよ」

 小さく微笑んだ宏は千歳の掲げるビアジョッキに軽くジョッキを当て、残りを一気に呷る。

「んくっ、んくっ、んくっ……ふぅ! でも、決まった事をいつまでも嘆いていても仕方無いからね。今はこの状況を、みんなでいる時間を愉しむよ。後々、後悔しない為にも」

「そう……ですね。全ては決まってしまった事で、わたし達従業員にはどうする事も出来無い事ですものね。でも、宏さんは逆境にいるのに強いですね。わたしは……そこまで割り切れません。情け無い話ですが」

 下を向く同僚(ひとつ下の二十一歳だ)に、宏はさもありなんとばかり大きく頷く。
 ショートヘアスタイルが似合う千歳は、笑った時のえくぼが可愛らしい女子大生の三年生なのだが、今はその面影が微塵も窺えない。
 どうやら職場消滅が相当堪えているらしい。
 実際、倉庫閉鎖が正式決定された先月下旬以降、弾けるような眩しい笑顔を宏は見ていない。

「まぁ、そうだろうなぁ。誰だって勤め先が突然潰れればショックだし、千歳だって二年半近く通って慣れ親しんだ職場が急に無くなれば平常心じゃいられないよなぁ」

「いえ、そんな事では無く……あ、いえ! それもありますけど、本当は――だからです」

 しかしこの時、宏には視線を俯かせたまま話す千歳の言葉は耳に届かなかった。
 左隣に座る人物に肩を叩かれ強引に振り向かせられたからだ。

「おい宏ぃ! な~に二人してコソコソ話してんらよ! オレろも乾杯しようれっ! ホレホレホレ~!」

 既に出来上がっているとしか思えない赤ら顔をしたバイト仲間の松本が呂律も怪しく、くだを巻きながら執拗に絡んで来た。

「うわっ!? お、お前、もうすっかり出来上がってんじゃん! さっき乾杯したばかり……って、誰だよ、こんなヘベレケになる迄ハイピッチで呑ませたのはっ!? こいつが酒に弱いと知ってての狼藉かっ!?」

 宏は呆気に取られ、思わず同い年の同僚を繁繁と見つめてしまう。
 肩迄伸ばした茶色の髪を首の後ろで無造作に纏め、パッと見は今風の若者だが中身は真面目で人当たりの好い好青年、の筈なのだが……。

「とは言え、コイツを泥酔させても、誰もなんも得する事なんか無いのに――ん?」

 と、ここで胡座を掻いたまま左右に揺れる松本の目の前のテーブルに、空になった中ジョッキが三つ、綺麗に並んでいるのが目に入った。

(ま、まさかコイツ、自分で――)

「酒になんか酔ってね~ろ! 酔っれんのはこの場の空気にら! あーはっはっはっ!」

 今度は前後に大きく揺れ始めた松本を宏は強引に押し退け(背後の壁に寄り掛からせた)、向こう隣に座る人物に尋ねるよう視線を向けると、両手を上に向けてひょいと肩を竦めたバイト仲間の美保(千歳の大学の同級生だ)が小さく首を横に振りつつ曰(のたま)った。

「はい、お察しの通りです。誰かが呑ませたんじゃ無く、松本さん自ら立て続けに中ジョッキを呷った挙げ句がこのザマです。ま、いつも通り放って置いて好いと思いますよ。すぐに寝てしまいますから」

「ったく、アルコールに弱いくせに、なんで先頭切って酒をかっ喰らうかな!? しかも速攻で潰れるの判っててガブ呑みしやがって……訳判らん」

 脱力し苦笑いしていると、松本の気持ちが判るのか、千歳が黒目がちの瞳を潤ませ見つめて来た。

「きっと、松本さんなりに寂しいんだと思いますよ。何たって気心の知れた仲間との最後の宴会ですから、呑まずにはいられなかったんでしょう」

 宏は自分と千歳の中ジョッキを追加オーダーしつつ、どこまでも透き通った千歳の黒目がちな瞳を見つめ返す。

「って事は、千歳も呑まずにはいられない気分……なのか? 既に中ジョッキ一杯空けてるし、いつもよか呑むピッチ、速いぞ」

「そう……ですね。やはり気心の知れた方達と、これで逢えなくなるのかと思うと寂しいです。宏さんは……そうは思わないんですか? 職場の消滅が決まってから、宏さんは寂しそうな表情を周囲に見せてませんが?」

 二杯目のビアジョッキを両手で掴み、何やら責めるような上目遣いをする千歳に、宏は中ジョッキになみなみと注がれた生ビールをひと口呷り、肩を小さく竦める。

「いや、俺だって寂しいさ。社員さん達と松本は三年半、千歳や美保とは二年半、同じ職場にいたんだから。それが突然パタリと会えなくなるんだから寂しさを感じてたさ。でも、人前で寂しさを出さなかったのは、単なる強がりだよ」

「強がり? 宏さんが? ……何だか意外です」

 目を丸くする千歳に、宏は思わず笑ってしまった。

「オイオイ……俺をいったい何だと。俺だって人並みに喜怒哀楽位、持ってるさ。……こんな風に」

 人である証拠を見せ付けるよう、満面の笑顔を一転、怒った顔に続いて泣き顔を作る宏。
 すると目の前の千歳も憂い顔から一転、えくぼが出来る笑顔になった。

「まぁ! それは喜怒哀楽では無くて百面相って言うんです! うふふ♪」

「え? あ、まぁ、そうかもな! あははははっ!」

 宏が千歳と笑い合っていると、傍らから小さなイビキが聞こえて来た。
 二人してイビキの主(ぬし)を見ると、そこには胡座を掻いたまま座敷の壁に背中を預け、首を垂れたまま寝入る松本の姿があった。

「やれやれ。暫くそっとしておいてやるか。千歳の言う通り、松本も心中穏やかじゃ無かったのかも知れんし」

 小さく頷く千歳に対し、気持ち好さそうに船を漕ぐ同僚に宏は一方で違った見方もしていた。

「コイツ、寝てても笑ってやがる。きっとバッグパッカーとしてインドを旅する自分を夢見てんだろうな」

「確か、今月末から旅して回る、って聞きました。ネパールやビルマにも気分次第で足を伸ばすとか。アパート引き払って一年近く旅に出るなんて、会社組織に束縛されないフリーターの強みですね。凄い……って言うより、滅茶苦茶羨ましいです」

 つくづくそう思ったのか千歳の情の籠もったその言葉に、美保も話しに加わって来た。

「ホント、勤め先がどうなろと自由人はどこ行っても自由人なのね。わたしは、これから就活に本腰を入れるからバイトを辞めるタイミングとしては丁度好かったのかもしれない――って思うようにしてるわ。なんたってこの秋で大学三年になって卒論がチラ付き始めたし、就活も今から本気で掛からないとヤバいし」

 セミロングの髪をポニーテールにした美保がジョッキを豪快に呷り、一気にビールを呑み干す。
 どうやら明朗活発な美保でさえ松本の自由気ままな旅が羨ましく映っているらしい。

「わたしは美保みたく就活には本気になれないわ。いくら二年近く就活し何とか内定貰っても、入社前にその会社が潰れたりどこぞの企業に取って代わったりして内定取り消し喰らう事態が日常的に多々起きているだけに、今から就職先を探すなんて時間と費用の無駄だわ。……まぁ、流石に、卒論に向けた下準備はしてるけどね」

 ビアジョッキの底に残ったビールを呑み干し愚痴る千歳に、美保がニヤリと笑う。

「ムフ♪ 実はわたし、卒業に必要な単位、既に修得済みだから、あとは卒論さえ仕上げれば好いのよね~♪」

「え!? う、嘘っ! いつの間に単位取ったのよっ!? そんなん、聞いて無い!」

「内緒♪ 言っても無いから知らなくて当然だし~♪」

 千歳と美保が寝息を立てる松本を横目に、こもごも言う。
 宏はそんな二人を眺めながらジョッキを傾けつつ、おもむろに尋ねた。

「美保は職場最後の宴会なのに意外と現実的でドライなんだな。もっと千歳みたく感傷的になって寂しがると思ったけど?」

「あはは~。元々、就活始める迄のバイトでしたから。そりゃ、職場消滅はショックでしたけど、大学三年になったら辞めるって最初から決めてた事でしたし、タイミング的にもかち合いましたし。その点でドライと見られるんでしょうね」

「そうだったのか。俺はてっきり卒業後もバイト続けるのかと思ってたぞ?」

「あはは~! それはナイナイ!」

 宏が半身となって美保とジョッキを交わしつつ駄弁っていると。

「松本さんの夢の中では、わたし達はどう映っているんでしょうね」

 千歳の微かな――しかし寂しそうな声が耳に届いたような気がした。

「ん? なんだって? 周りが騒がしくて好く聞こえない――って、あ! ど、どうもお疲れ様でした!」

「……千歳」

 この時、千歳がポツリと漏らした言葉と、それに反応した美保が何とも言えない表情を見せた事に、宏は気付けなかった。
 店内の騒々しさに加え、社員ひとりひとりにお酌して回る所長が宏の隣に腰を下ろしたのだ。

「宏君。この度の事で君達アルバイト四人にも多大な迷惑を掛けてしまって誠に申し訳無い。社に成り代わってお詫びするよ」

 正座し、畳に額が着く程に頭を下げる所属長に、宏は慌てて居住まいを正す。

「いえいえ! 俺達はともかく、所長さんを始め社員さん達の方がより大変だと伺いました。だからそんなに頭を下げないで下さい!」

 千葉倉庫の責任者であり、宏達バイト仲間の上司でもある所長は本日付で勇退が決まっているのだ。

(移転先の倉庫には合併先の所長が既にいるから、吸収された側の人間の着く席がどこにも無くて五十代前半だのに勇退、だもんな。他の社員さん達も関東周辺に飛ばされるか自主退社迫られて……M&Aって無情だよなぁ)

 宏がつくづく思っていると、千歳と美保も職場長の登場に居住まいを正し、返礼するよう小さく頭を下げていた。

「宏君、千歳さん、美保さん、そして寝ている松本君も、小さな倉庫だのに今迄好く勤めてくれた。改めて礼を言うよ」

 年端の行かない若造四人に何度も頭(こうべ)を垂れる所長に、宏達三人は慌てて手を左右に振る。

「「「いえいえ! そんな事はありません! どうか頭を上げて下さい!」」」

「いや、君達四人がいてくれたお陰で、我が千葉倉庫が滞り無く終焉を迎えられたのだ。礼を言わずして何を言う」

「「「いえいえいえ……」」」

 宏、千歳、美保と順にビールを注ぎ感謝の意を何度も伝える上司に、恐縮しまくりのバイト仲間三人だった。
 その後、宏は事務の独身お姉さんから、「床上手だから嫁にしろ」「あとひとり奥さん増やしても大差無いでしょ♥」と本気&真剣に迫られるも、何とか撃退(握手とハグで我慢して貰った)に成功するハプニングも起きた。

「うふ♥ 宏君、いつでも連絡頂戴ね♥ 二十四時間三百六十五日待ってるわ♥ はい、コレ。私のプライベートナンバーよん♥」

 しかも、ハグの離れ際に携帯の電話番号とメールアドレス、住所の記されたメモ用紙を強引に渡された挙げ句、耳たぶをねっとりと甘噛みされた(その場にいた全員が目を丸くして見ていた)のには閉口したが。

「やれやれ。色々あった三年半だけど、そろそろ本当の意味でのお開きの時間、なんだな」

 そんなこんなで時間が過ぎ、何杯目かの中ジョッキを呑み干した宏が居酒屋の柱時計に目を向けながら呟くと。

「ホントに……これで皆さんとお別れだと思うと、やはり寂しいです。わたしは……まだ……」

 まるで、か細い千歳の言葉を伝える為のように、居酒屋の喧騒がその一瞬だけ、ピタリと止む。
 しかし次の瞬間には普段の騒々しさが舞い戻っていた。

「そう言って貰えて我々も嬉しいよ。バイト諸君には好く働いて貰ったからな」

 所長がビアジョッキを握り締めたまま深く頭を下げると、五人の社員さん達も大きく頷き、上司に倣う。
 その視線の先にいる宏は再び居住まいを正し、応えるように頭を下げた。

「いえいえ! 俺達こそ三年半、二年半しかお手伝い出来無かったのに、いつも好くして戴いて感謝してました! ありがとうございました!」

「「ありがとうございました」」

 宏に合わせ、千歳と美保も声を揃えて頭を下げる。
 この時ばかりは、誰もが静寂の中にいた気がした――と、その場にいる全員がそう思っていた時。

「このオレ様がいる限り、千葉倉庫は永遠に不滅じゃーっ!!」

 突然、身体を起こした松本がそう叫ぶと、何事も無かったかのように再びパタリと横になった。

「……………………プッ!」

 寝言が場の静まったシリアスな空気を爆笑の渦に変え、以降、湿った雰囲気になる事は無かった――。


                                            (つづく)


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